215 一条房冬と一条房通の死
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次回更新は09/29(日)
(1558 一条房基(36))
先帝の大喪の礼と新帝の即位の礼、両儀式を終えた父房冬はげっそりと痩せて帰ってきた。体調がすぐれないまま無理をして仕事をしていたらしい。食欲は不振のままで、医員に診察させると腹部にしこりがあるという。どうやら癌のようだった。息子房平への家督相続と婚礼を見届けると、床に臥せったままの日々を過ごすようになっていた。
『父上、おかげんはいかがですか?』
家督を譲ることでの業務の引き継ぎも一段落したこともあり、毎日は無理でもなるべく見舞いに顔を出すようにしていた。
「今日はずいぶん気分がよい」
そういうと机の上に並べていた絵巻の下絵を片付けさせた。体の負担を軽減するために寝室には寝台を据え付け、続きの部屋には机と椅子を配置していた。寝起きするにも介助が必要なほどに衰えていたのだ。
『寒くなって参りましたので、暖かくしてください』
側仕えの者に指図して上に羽織るものを掛けさせた。
「書き物をするのに邪魔だっただけだ。部屋も暖かくしているから心配ない。今日はゆっくりできるのか?」
『お話があると伺って参りました』
「頼んでおきたいことがあったのだ」
そう言って人払いしようとするが、側仕えと絵師たちは下がらせて、母と一門衆には残ってもらった。
「帝を支えて欲しい」
人払いが済み、淹れ直された茶に口をつけてから一言だけ。
『・・・・これまで通りでは不十分でしょうか?』
「お前が距離をおいているのはわかっている。書物や絵画を後の世に引き継ごうとしているのは素晴らしいことだ。帝は金銭でなく、言葉が欲しいのではないかと思われる。お前の為人がわからず不安なのだろう」
『この先、先帝の御世よりも激しい戦乱の時代が来るでしょう。お側にお仕えするのは難しいと考えています。ですが、必ずや帝をお守りすることをお誓いいたします。房平たちにもしっかりと伝えましょう。一条の家は勤王の家であると』
「そう言ってくれると心強い。思い残すことはないのう」
ほっとしたようににっこりと笑った。
『何をおっしゃいます。そのうち曾孫の知らせが届くようになりましょう。父上には曾孫を抱いていただくまで壮健でいていただかなくては』
「・・・長くはないとわかっておる。だが曾孫か、そうだな、もう少し頑張らねばな」
その後も親子の絆を確かめるように昔話やとりとめもない話をする日々を過ごしたが、ある晴れた冬の日に静かに息を引き取った。痛みを見せることのない穏やかな顔であった。享年60歳。
父房冬が亡くなり、葬儀の準備に慌ただしくしていた時に京から急使が着く。叔父房通の死の知らせだった。夏に京で会った時はまだ元気だったのに、流行り病での急なことだったらしい。父房冬が亡くなる知らせが届く前に亡くなったという。京一条家13代当主内基はまだ10歳。家中の者はしっかりしているが、後援が必要になるだろう。こちらが一段落したら、親族で筆頭家老である土居宗珊と飛鳥井雅量に京へ出向いてもらい、京一条家を支えてもらうことにした。
飛鳥井雅量の大叔父は飛鳥井雅親であり、その孫は飛鳥井雅綱。雅綱の娘が転生者朽木元綱の母であった。転生者周辺には情報収集のために忍者衆を配置しているが、朽木元綱(9)は2歳で家督相続後、厳しい状況が続いているようであった。
史実では父房冬は1541年、叔父房通は1556年没。先帝を見送るまでは生きていてもらうつもりでした。
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