待望
あれからまた時がたち、ラクリマとルプスには子供ができた。
ラクリマのお腹の子は日に日に大きくなり、一族の皆がその誕生を待ちわびていた。
愛情あふれるまなざしで、我が子の誕生を待ち遠しく思いながらラクリマがお腹の子を見つめ、ルプスもまた我が子に会える日を夢見てラクリマのお腹を優しく撫でる。
ラクリマは、あれから結局女神の魔力の使い方など分からず、常日頃使う灯りや狩りに使うくらいしかしなかった。
だが、そんなことよりも我が子のことを考えるのでふたりは忙しかった。
『あー、名前‥‥名前はどうしましょう? ねぇ、あなた?』
『いい名前を男の子と女の子とどちらも考えておかないとね』
『ふふっ、お父様ったら初孫だってものすごくはしゃいじゃって、この子にあげるおもちゃを今から作るんだって』
『あぁ、だから朝から木を切りに行ってたのか‥‥』
こんな希望に満ちた話が毎日できる。毎日がたまらなく幸せを感じられた。
待望の日がおとずれた。
元気な女の子が産声をあげ、一族中が歓喜の渦に包まれる。
涙をいっぱいにしてとめどなく流すルプスが生まれたばかりの我が子をラクリマから渡され、震える手で大事に大事に抱きかかえる。
ルプスが指を赤ん坊の手に近づけると力強く握られた。
『あぁ‥‥小さいな‥‥でも、あぁ、生きてる。すごいなぁ』
『ありがとうラクリマ。よく頑張ったね。本当にありがとう』
ラクリマは、出産の疲れのせいで弱弱しくだが微笑んでルプスの言葉に返事をした。
おじいちゃんとなったトラリがにこにこと笑って赤ん坊の顔を覗き込んだ。
『おぉ、なんとまぁかわいい子だ。これは、ラクリマに似て美人になるぞ。それにルプスに似て賢そうだ』と、もうデレデレになっているようだ。
『名前は決めたんだろう? 何にしたんだい?』
トラリがせかすようにルプスに詰め寄る。
『はい、ふたりで決めました』
ルプスは優しくラクリマを見つめ、それから生まれたばかりの我が子を微笑みながら見つめる。
『この子の名前は、キエリです』
子育ては一族皆で協力して行う。
子供の面倒を見るのは順々にまわっていく。
今日はミーティアのいとこであるシャルムがキエリのことを見てくれる日で、愛らしく笑うキエリのおかげでシャルムまでにこにこ笑顔になる。
シャルムは、柔らかい草原の上でキエリの立つ練習の手伝いや姿を変えそうになるのを魔力を渡して時々調整している。
ラクリマは、ミーティアを失ってから笑顔が消えていた彼が心配だったので、彼に笑顔が戻って本当に良かったと心の中で胸をなでおろした。
『あっはっは、キエリは可愛いなぁ。こりゃあ、将来モテるぞ~ハッ! キエリが誰かの番に!? 寂しすぎる! 番になる前に絶対にそいつを俺の前に連れてきなよ! ちゃんと見定めるから!』
ラクリマが苦笑する。
彼が言うと重みのある言葉であるが、せっかく明るく戻ろうとしている彼にわざわざ重く反応する必要はないだろう。
『もう、気が早いよ。まだまだキエリは一歳を過ぎたところだよ。一体何年後の話しをしているの』
『ははっ、それもそうか。でも、モテるというのはあってると思うよ。キエリは可愛い!』
なんという親バカができてしまったのかとラクリマはくすくすと笑った。
(この子の番になるひとか‥‥この子のことを大事にしてくれて、優しくて、ともに苦労を分かち合える。わたしにとってのルプスのようなひとにキエリも出会ってほしいわ‥‥)
(必ず幸せに‥‥もう、ミーティアのような子がでないようにしないと‥‥)




