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【完結】オオカミはフードを被る  作者: Nadi
オオカミはフードを脱ぎ捨てた

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こうい

 決闘の場所となった広場に当事者のフェリクスとアンナとキエリ、そして見届け人となる貴族たちをはじめ、他は野次馬たちがぞろぞろと集結した。


 フェリクスは、長い訓練用の木製の槍を使うようだ。


戦いの前に念入りにからだをほぐしている。


今は動きやすくするためか軽装なので、フェリクスの引き締まったからだが服越しに見える。


 キエリは、フェリクスをなんだかじっと見てしまって、かっこいいなぁ、なんて思いながらぽーっとしてしまった。


フェリクスがキエリの視線に気づいて、こちらに笑顔で手を振ってくれた。


キエリは、視線からやましい気持ちが伝わってしまったかなと、どきっとしつつ照れながら手を振り返した。


 「フェリクス様が、笑ってる‥‥激ヤバ」


隣で食べ物片手に持った観客気分のプエッラが頬をぽっと赤らめていた。


 ルナもキエリの隣でフェリクスとアンナの戦いを見守りに来ていた。


 「わりと、フェリクスは笑う方だと思うが、戦争が始まってからは、全く笑うことがなかった」

 「アンナは、炎の魔法を使うのか‥‥どちらかが怪我しないというのは、無理なんだろうな‥‥」


 キエリは、フェリクスをまるで敵を見るように睨みつけているアンナが心配になった。


 「アンナは、ああ見えてすごく頑固な子で、納得するまでやると思います‥‥」


 (フェリクス‥‥アンナ‥‥大きな怪我がなければいいのだけど)


 審判を任されたウンブラがフェリクスとアンナを広場の中央に呼ぶ。


 「それでは、今から孤狼の儀を行います。殿下は、その木製の武器のみ使用が許可され、アンナ殿は武器に制限がありません。相手が負けを認めるか、気絶、もしくは戦うことが不可になった場合に勝敗が決まります。両者ともよろしいですな?」

 「あぁ、かまわない」

 「いいですよ」

 「この儀式による結果は覆されることはありません。それでよろしければ、女神と国に誓いを立ててください」

 「フェリクス・エピメディウム・レックスは女神と国にかけて、この儀式の結果がいかなるものでも受け入れると誓う」

 「アンナは女神と国にかけて、この儀式の結果を受け入れると誓います」

 「それでは、私の合図と共に始めます」


フェリクスとアンナはウンブラから離れ、お互いに距離をとる。


 辺りは静まり返り、緊張が空中にぴんと張られる。


フェリクスは、木製の槍をアンナに向け、構える。


アンナの瞳が暗くなり、アンナの周りの温度が高くなっていく。


 「それでは、始め!」


合図と共にフェリクスがアンナに向かって走りこんだ。


 「っつ!!」


アンナは、あまりのフェリクスの速さに驚いて目の前に大きな炎の塊を打ち放った。


 「あれ?」


しかし、目の前にはフェリクスがいない。


アンナの頭上の高い位置に何かが通って、アンナは影のみを認識した。


フェリクスは槍を高跳び棒のように使い、アンナを飛び越えて、背後にまわり、槍で一撃を与えようとしていたところだった。


ぴりっとした気配がアンナの背中に伝わり、アンナが振り返り、魔法で応戦しようとするが、間に合わない。


 「?」


すると突然フェリクスの足元が爆発した。


周囲で見ていた人々がその威力におぉ‥‥と驚愕の声を上げる。


間一髪のところでフェリクスは地面の違和感に気付いて、一歩引いていたおかげで足が吹き飛ばずにすんだ。


なんとか首の皮一枚つながったアンナは、隙をつくるまいと休まずフェリクスに炎を打ち放ってくる。


フェリクスがアンナの攻撃をかわすが、また地面が爆発し、フェリクスは常に動き回って、攻撃をかわし続けなければならなくなった。


 (アンナは、あらかじめ罠をはっていたのか‥‥直撃すれば、足が吹き飛ぶ威力だ‥‥)


 キエリは、固く拳を握り、緊張と不安で汗が額からつたう。


 (アンナ、本当にフェリクスに致命傷を負わせるつもりなんだ‥‥アンナ、フェリクス‥‥)


 「はやくっ、丸焦げになるか、足が吹き飛ぶかしてよ!!」


フェリクスは、回避に徹していて、アンナの攻撃も地面の罠も食らわないでいる。


 (もうっ、なによこいつ、どうして地面に埋めた罠も全部避けてるの? 感覚が化け物なの!? このままじゃ‥‥)


 「そろそろ、だな‥‥」


しばらく攻撃を避けるだけだったフェリクスが一転、アンナに向かって再び走りこんだ。


フェリクスは逃げに徹したおかげで、罠を発動させ切って安全にアンナに攻撃できるようになった。


 「くっ!」


今度は、どこから攻撃が来てもいいように、そして、もしそのまま突撃してきたら丸焦げにできるように、アンナはからだ全体を囲うように炎をまとわせた。


しかし、フェリクスは、前で踏みとどまり、アンナめがけて木の槍を投擲した。


槍は勢いが強く、炎を突き抜けてアンナの胸に直撃した。


 「かはっ」


そのままアンナは倒れて、動かなくなった。


ウンブラが確認のためにアンナに近づく。

 「‥‥アンナ殿の気絶を確認しました。勝者、殿下!」


 「アンナ!」


キエリが急いでアンナに駆け寄り、魔法で治療をする。


フェリクスもキエリの隣に座り、アンナの様子を見る。


しばらくキエリが魔力を注ぐとアンナはゆっくりと目を開けた。


 「あぁ、よかった‥‥」

 「キエリさん、あたし負けてしまったんですね」


アンナは、勝負前とは違って声は穏やかだった。


 「アンナ、どうしてフェリクスと戦おうだなんて思ったの?」


アンナは、ゆっくり起き上がり、フェリクスをちらりと見てから、しゅんとしながらキエリを見つめる。


 「だって‥‥だって、あたしもキエリさんのこと、好きだったから」

 「それは、知っているけど‥‥」

 「違います! 恋愛対象として好きなんです!」

 「えぇ!!」


キエリは、自分でも驚くほど大きな声が出て、固まってしまってしばらく動けなかった。


アンナは、顔を真っ赤にしながらずっと我慢していたのか大粒の涙をぼろぼろと流し出した。


 「わかってます‥‥キエリさんが好きなのはこの人なんでしょう? そこに入る隙はないってわかってます。わかってますけど、自分で気持ちが抑えられなくて、ぐちゃぐちゃになって‥‥どうしても、吐き出さずにはいられなかったんです」

 「アンナ‥‥」


キエリはそっとアンナの涙を拭った。


 (思えば、アンナはずっとわたしばかりを見ていた。捕まって、助け出された時からずっと‥‥でも、応えてはあげられない)


 「アンナ、ありがとう、気持ちは嬉しいよ‥‥でも、ごめんなさい」

 「う‥‥うぅ‥‥キエリさん」


アンナの涙は次から次に溢れてくるので、キエリはそっとアンナを抱きしめて背中をぽんぽんとさすった。


 「ごめん、ごめんね、アンナ‥‥これからも大事なお友達でいて‥‥」

 「う‥‥うぅ‥‥」


 キエリは、アンナがしばらく泣き止むまでじっと抱きしめて待ち続けた。


フェリクスは、複雑そうにアンナの話を聞いていたが、やがて立ち上がり、見ていたウィルトスの隊員たちを解散させ、軍議があるからと、その場をあとにした。

書かずにはいられなかった‥‥

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