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【完結】オオカミはフードを被る  作者: Nadi
オオカミはフードを脱ぎ捨てた

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新しい出会い

キエリは堂々と歩くぐらい肝が据わっています。

 湯浴み場は二部屋に分かれていて、手前の部屋が脱衣所で、奥の部屋がタイル張りの部屋だ。


奥の部屋は、ひとりずつ仕切りで分かれていて、お湯が出る魔道具が置かれている。


大きい風呂も設置されているが、今は動いていない。


 キエリは、女性専用の湯浴み場にこっそりと入った。


脱衣所には、先客が一人いるようで、きれいにたたまれた衣服があった。


 (どうしよう? 誰かもういる‥‥でも、女の人なんてそんなにいなかったけど、誰だろう? ルナさんっぽくはないな)


外でこの人物が出るのを待ってから入ろうかと、踵を返したところで後ろの浴場の方の扉が開いた。


振り返ると、そこには若い一人の女性が立っていた。


ふんわり長い髪と、ぱっちりした目。


可愛らしい顔立ちで、貴族のお嬢様といった感じだが、からだは筋肉質で腹筋が逞しく割れている。


 女性は、昨日捕まったはずの魔獣が普通にここにいるというのに驚いているのか、大きな目をぱちぱちさせている、と思ったが‥‥


 「やだっ! ちょ、見ないで! ほんと、マジで!」と自分の見事に割れた腹筋を必死に隠しだした。


キエリは、見ないでと言われたので、とっさに女性に背中を向けた。


 「ごっごめんなさい! こんな時間にいるとは思ってなくて、出るのを待とうとしてたんですけど、タイミングが悪かったです」

 「あたしだってそう思ってたし! あぁ、もう見られた‥‥最悪」


キエリは、何か都合の悪いものでも見てしまっていたかと頭の記憶を探るが、全く分からない。


 「あの、わたし何か気分を害するようなことしてしまったのでしょうか? できれば、教えていただきたいのですが」


キエリは背を向けていて女性の表情はわからないが、少し言うことに躊躇しているようだ。


 「‥‥見たでしょ、あたしの筋肉‥‥」

 「え? ええ」

 「それが嫌なの! 可愛くないし!」

 「ええ!?」


女性は着替え終えたようで、キエリの前にでた。


彼女の服は隊員のものだったが、自分で手を加えているのか、ところどころ可愛らしい刺繍が入っていて、スカート風の作りにしてある。


 「あたしだってこんなムキムキになりたくてなったわけじゃないのに、パパとお兄様たちが‥‥って、もうなんでこんなこと話てんだか」


ビシッと女性がキエリに指を差した。


 「とにかくあなたっ! これは他言無用よ、いい?」

 「わっわかりました」


キエリは、女性の勢いにたじろぎながら、こくこくと頷いて承諾した。


 「ってか、あなた昨日フェリクス様に捕まってた魔獣じゃない! なんでこんなとこに!?」


やっとキエリがここにいることのおかしさに気付いたのか一歩下がって、大げさに驚く。


よほど、自分の筋肉が見られたことの方が衝撃だったのだろうか。


 「ウィルトスの捕虜になりました。と言ってもこれからはウィルトスに協力します、よろしくお願いします」

 「なんか、あたしの知ってる捕虜と違う! ってかあたしの知ってる魔獣と違う! あなたほんとに魔獣? すごい普通に話せるんだけど」


彼女はとても素直なようで、彼女の直球な物言いにキエリは苦笑する。


 「魔獣ですよ。オオカミ型の‥‥なりましょうか?」

 「正直見たい‥‥けど、あなたお風呂入りに来たんでしょ? ごめんね、足止めしちゃってさ」


キエリは首を横に振った。


 「いいえ、こちらこそすみませんでした。不快な思いさせてしまって」

 「いいの! あれはあたしが勝手に気にしてることだし、タイミング悪かっただけだし、ってか、あなたはなんも悪くないよ」

 「あ、そうだ!」


女性は、脱衣所に置いてあったタオルと石鹸をキエリに渡した。


 「これ、使っていいよ! 魔獣でも女の子なんだから、使いたいでしょ!」

 「あ、ありがとうございます」

 「それじゃ!」


女性は、さっぱりとした笑顔を見せて脱衣所から出ていった。


 一人になったキエリは、渡されたタオルをぎゅっと持つ。


少し、顔がほころんだ。


 (彼女も珍しい人だな。魔獣だって知ってても全く臆さないなんて、しかも、親切にしてくれた)


 「あ‥‥名前、聞きそびれた。また、あったら聞いてみよう」


 キエリと別れた女性は、廊下をひとり歩き、窓から空を見上げる。


 (あの子、捕虜だったんだ‥‥そりゃそうか、魔獣だもの、フェリクス様とそんなわけないか)


 「‥‥それにしても、めっちゃ可愛かった。あ、名前も聞いてなかった。あとで聞こ」



 キエリは、湯浴みを終え、廊下にでた。


 次するべきことは、アンナに会いに行くことだ。


さすがにひどい目にはあっていないと思うが、アンナのことだ、キエリの心配をしていることだろう。


 (アンナ、いるとしたらどこだろう? フェリクスに聞けばわかるだろうけど、もう起きたかな?)


考え事をしながら歩いていると、ウィルトスの隊員たちが通りすがる。


キエリのことを知らない人たちは避けるようにして足早に去っていくか、奇妙な目で見てくる。


キエリのことは知っているが正体は知らなかった人は、聞くに聞けないのか、キエリが会釈しても目を合わせず、足早に立ち去る。


ただ、騎士団で一緒に過ごしたことのある人たちはキエリに気軽に、ではないが話しかけてくれた。


 話しかけてくれた人にアンナのことを聞いたが、意外なことになっていて、急いでキエリはアンナのもとに向かった。

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