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【完結】オオカミはフードを被る  作者: Nadi
オオカミはフードを脱ぎ捨てた

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拘束

 キエリはひとしきり泣いた後、アンナからそっと離れた。


アンナの服がぐっしょりとキエリの涙で濡れている。


キエリは、申し訳なくて、手をもじもじとさせて俯く。


 「ごめんなさい。服をそんなに濡らしちゃって‥‥」

 「そんな、いいですよ! むしろキエリさんに少しでも心を許してもらえたと思ったら、あたしとっても嬉しいです!」


アンナは、満面の笑みを見せる。


キエリは、顔を上げ、涙を拭うとほんの少しだけ口元が緩んだ。


 「あ! あ! キエリさん今笑いました!? ね、笑いましたよね! ふふっ」


アンナが興奮気味にキエリに詰め寄り、嬉しそうに笑った。


 「え? 笑う?」


一方キエリは、自分が笑ったことが信じられなくて、ほっぺをむにむにとつまむ。


 「あぁ! 今のしぐさ、とてつもなく可愛いです! うん! やっぱり人の姿も素敵!」


アンナはテンションが高くなり、キエリのほっぺを両手でむにむにしだした。


キエリは、さすがにたじろいで、アンナの行動にひいてしまう。


キエリがひいてしまったのに気づいて、アンナがパッと手を離した。


 「って、あぁ、ごめんなさい! あたしったらついついやってしまいました」

 「いえ、大丈夫‥‥」


キエリにまた懐かしさがよぎった。


 アンナが自分のほっぺを軽く叩いて気を取り直す。


 「キエリさんは、会いたいですか? お友達に‥‥」


キエリの表情に雲がかかる。


 フェリクスに会う勇気が出ない。フェリクスに会ったときに、おそらく溢れ出てくるであろう感情が自分で止められなくなるという予想が容易につく。


それが、キエリには怖かった。


 「直接は、もう会えない‥‥」


アンナは責めるでもなく、ただ優しくキエリを見つめている。


 「わかりました。じゃあ‥‥もう、行きましょうか」


キエリは、こくりと頷く。



 キエリとアンナがそっと通りを見る。


魔獣の死骸が散乱しており、ウィルトスの隊員がちらほら見える。


 「キエリさん、あたしが囮になってウィルトスの人たちをひきつけます。その間に逃げてください。人間のあたしなら捕まっても大丈夫ですから」

 「後で、さっき分かれたところで落ち合いましょうね!」

 「でもっ‥‥」


キエリは、アンナの無謀な作戦を聞いて止めようとするよりも早く、通りに飛び出していった。


ウィルトスの隊員に停止命令を受けていたが、無視して走り抜けている。


 (アンナ! また勝手に‥‥)


しばらくすると、少し離れたところに黒煙が上がった。


 通りには隊員がいなくなった。


 「‥‥っ‥‥」


キエリは、街の外に向かって走り出した。 まだ隊員がいるかもしれないと思い、目立つオオカミ型より人型のままで門に向かった。


 「はぁ、もうすこしっ」


門が見えてきたところで、後ろから馬の蹄が地面を力強く蹴飛ばす音がこちらに向かってきた。


 「キエリさんっ逃げて!」


先ほど囮になると飛び出していったアンナの声が数体の馬の足音に紛れて聞こえた。


キエリがアンナの声に反応して振り向いた。


 「!!!」


何人ものウィルトスの隊員がキエリから少し遠い、後方に迫っている。


アンナは、ウィルトスの隊員たちの先頭を走る人物に見事に捕まっていた。


その人物が合図を送るとその集団は止まった。


その人物はまるで荷物の様に片手でアンナを抱えている。


 「キエリさんごめんなさい! まさかこんな人だったなんて! お願い、逃げてください!」

 「黙れ」

 「ひっ!」


アンナを抱えている人物はぞっとするような冷たい声でアンナを黙らせた。


馬から降り、キエリを暗い瞳で見つめる。


 「‥‥フェリクス」

 「久しぶりだな、キエリ‥‥」


 キエリの記憶にある、懐かしい頃のフェリクスのキエリを見つめる瞳は常に優しく、温かいものだった。


しかし、今のフェリクスの瞳は暗く、冷たく、相手を怯えさせる。


 キエリの心臓が破裂してしまうくらいばくばくと鼓動し、額から冷や汗がつたう。


キエリがフェリクスを見て動けないでいると、フェリクスがゆっくりと口を開く。


 「キエリ、俺の元に戻れ」

 「!‥‥で、きない」


キエリの口が乾いて、うまく言葉がでなくなる。


 「戻らなければこの人間の首をへし折る」


フェリクスは、なんとも恐ろしいことを淡々と言った。


フェリクスの大きな手がアンナの細い首に手をかかる。


力が加えられているのか、アンナの目から涙が流れた。


 「やめて!! わかった。わかったから‥‥その人は関係ないから、離してあげて」


キエリはゆっくりフェリクスに近づいた。


もう触れられるくらいの距離まで来ると、フェリクスはキエリの頬に手を伸ばす。


キエリの肩がびくついたが、それを無視してフェリクスはキエリの頬に触れて撫でる。


 「おかえり、キエリ」

 「‥‥もう、その人は離してあげて」


フェリクスは、アンナを解放した。


アンナは、恐怖から膝をおり地面に縛られた両手をついた。


 「アンナ! っつ!」


キエリがアンナに駆け寄ろうとした瞬間にフェリクスに軽々と持ち上げられて、それは阻止された。


そのまま馬に乗せられて、フェリクスもまたその馬に乗り、キエリを前に抱え込む。


 「砦に戻るぞ」


フェリクスに付いていたアクイラが不安そうな面持ちで、恐る恐るフェリクスに話しかける。


 「殿下、その‥‥魔獣ですよね?」

 「そうだ。彼女は役に立つ、このまま連れて帰る。そこのやつも捕まえておけ」

 「御意‥‥」


キエリがフェリクスの言葉に驚いてフェリクスの服をぐっと掴む。


 「その人は関係ないって言ってるじゃない! 自由にしてあげてよ!」

 「お前が決めることじゃない」


アクイラがアンナを馬に乗せた。


アンナは、これまた荷物の様に抱え込まれて乗せられた。


 「行くぞ!」


 キエリとアンナはフェリクスたちに砦に連れていかれた。

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