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【完結】オオカミはフードを被る  作者: Nadi
オオカミはフードを脱ぎ捨てた

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出会いたくない

 砦の中は、キエリたちと賊とで戦闘が始まっていた。


 「うわあ!! 魔獣が何でこんなところに!?」

 「くそっ、近づけば餌食になるぞ! 弓だ、弓で攻撃しろ!」

 「だが、弓で攻撃したら売りもんにもあたっちまうぞ、頭に怒られちまう!」

 「バカ! このままだと俺たちの命があぶねぇよ!」


 賊たちは、逃げまどいながらキエリに太刀打ちできる手段を探すが見つからず、結局弓矢でキエリたち狙ってきた。


キエリは、風の魔法を周囲に放ち、矢を落とす。


 (これも、ゼノに教えてもらった魔法‥‥ここにたどり着いてから、ゼノからもらった知識が役に立ってる‥‥でも、ゼノみたいに魔力の調整がうまくいかないから、はやくしないと)


 後ろでは、アンナが必死に炎の魔法をうって、賊の侵攻を食い止めている。


炎の魔法はキエリの風の魔法にのって威力が倍増する。



 賊たちをなんとか払いのけながら、裏口へと続く砦の建物と砦の裏門の間の広場に出ることができた。


砦の上の階から矢で狙われれば、狙い撃ちされかねないので、闇夜に紛れて素早くかける。


 「さぁ! もう少しです。頑張って!」


キエリが女性たちを励ますと、彼女たちはもうすでに心身ともにぼろぼろだったが、キエリに希望を見出してくれているからなんとか勇気を振り絞って走ってくれている。


目線の先に、裏門にある裏口が見えた。


 (あそこだ!)


キエリも、ずっと気をはっていて、魔力の消耗も激しい。息を荒らげながら裏口に駆け込もうとした。


しかし、裏口の扉が開いたかと思えば、そこから賊たちがあふれるように飛び出してきた。


賊たちは、キエリたちを囲って、松明であたりを明るくし、武器を構える。


 (くっ、先回りされてた!)


なぜか先ほどまでの逃げまどっていた賊たちと違って、彼らは余裕の表情を見せている。


賊たちの集団の中から、ある人物がキエリたちの前に出た。


キエリは、その人物を見て、からだが硬直した。


 「よくもここまでやってくれたなぁ‥‥腐れ魔獣が‥‥」

 「!!‥‥グロスさん?」


その人物は、かつて国の騎士団に見習いとして所属していたグロスであった。


その後、彼は目に余る行動をしたため、除隊処分をうけた。


それから、キエリも彼の行方を知らなかった。


グロスは、当たり前のように賊たちに指示を出す。


 「おいっ、てめぇら! あの魔法を使う女を集中して狙え!」


賊たちは弓矢を構えて一斉にアンナを狙った。


 (アンナさん!)


 「っつ!」


アンナが炎の魔法放つと同時に、キエリが風の魔法でアンナたちを守る。


風に乗った炎の勢いは強く。賊たちに火の粉が降りかかる。


しかし、グロスは攻撃の手を緩めない。


何度も弓矢をうつうちに、先にアンナの魔力が切れた。


キエリは、ひとりで全員を守らねばならなくなり、より魔力を消費してしまう。


 (消耗させることが狙いなの!?)


狙いに気付くも、攻撃の手は緩まらずにキエリたちは動けずにいた。


ついには、キエリが目に見えるほど消耗し、息を荒らげる。


グロスがキエリの息が上がってきているのを確認すると、弓矢をうつのをやめさせた。


 「これでしまいだ」


グロスが自身が持っていた弓を弾き絞り、キエリに向かって矢を放った。


キエリは、何とかそれを爪ではじいたが、その矢には聖水が括りつけられていた。


 「しまった!」


キエリがそれに気づくのが遅く、キエリは聖水をかぶってしまった。


 「ううううぅ‥‥」


キエリは、力が抜けてしまい、人型へと変わってしまった。


 「キエリさん!」


アンナがキエリに駆け寄って支えてくれたが、キエリはからだが思うように動かない。


 (そんなっ、こんなところで!)

 「おめぇら! 商品どもを押さえな!」


賊たちは泣き叫ぶ女性たちを捕まえ、アンナも腕を後ろにされて捕まえられた。


キエリは、地面に倒れてしまった。


 グロスがキエリの顔をあの時の様に髪を掴んで上げさせる。


 「これはこれは、お姫様じゃないですか? まさか、あんたがこんなことしてるとはな、おかげで何人手下が死んだことか」

 「グ‥‥ロスさん、どうしてあなたが?」

 「はっ! オレのこと覚えてたのか、オレもあんたのこと忘れてなかったぜ。あんたに関わってから、俺の人生ずっと下り坂だ‥‥だが、ここにきてやっとツキがまわってきたな」


グロスがにやっと歪んだ笑みを見せる。


昔見たグロスとは同じとは言えないくらい、邪悪さが増していた。


 「あんたは上玉だし、魔獣の女なんて、高く売れるだろうな‥‥その前に、女として使えるか俺が確かめてやるよ」


グロスは、いやらしい笑みを浮かべながら舌なめずりをする。


キエリのワンピースの裾から、手を這わせ太ももをまさぐりだした。


 「っ!!」


吐き気がこみ上げてくるほどの嫌悪感と悪寒がキエリを襲った。


なんとか、からだをよじらせてグロスの手から逃れようとするが、グロスに乱暴に足を掴まれて引きずられた。


 (いやだ! いやだ、いやだ!! フェリクス‥‥‥!)


あの頃から泣きも笑いもできないキエリは、ぐっと目頭が熱くなるが表面に現れることはない。


 「頭! 大変です! 敵襲です!!」

 「なんだとっ!?」


賊の一人の報告でグロスの非道な行為は中断された。


キエリたちが脱出しようとしていた裏門の裏口が再び開いた。


そこから武装した集団が雪崩のように飛び出してきた。


 「嘘だろ! なんでウィルトスがっ!!」


グロスが悲痛な叫びをあげる。


ウィルトスと呼ばれた武装集団は規律正しく行動し、賊を素早く倒していく。


 「くっそなんなんだよ! そうだ、女どもを人質に‥‥っ!」


キエリを人質にしようと振り返った途端、グロスはそのまま地面に倒れた。


倒れた頭の後ろには矢がぐっさりと刺さっていた。


キエリの後ろからは、次々と賊の断末魔が聞こえてきた。


キエリがなんとか頭を後ろに向けると、女性たちを捕まえていた賊たちはみな矢で、正確に、頭に一撃で射抜かれているのが見えた。


キエリが顔を上げると、裏門の上に数人射手がいるのが見えた。


ウィルトスの隊員は、捕まっていた女性たちを保護している。


解放されたアンナがキエリに駆け寄った。


 「キエリさん、よかったですね助かったんですよ! キエリさんのお仲間ですか?」

 「いいえ‥‥」


地べたに這いつくばるくらいしかできなかった状態からやっと少し回復したキエリは、からだを起こし、座り込む。


 座り込んでいるキエリの前に一人の人間が立ち止まった。


 「キエリ‥‥さん?」


聞き覚えのある声だった。


キエリがゆっくり顔を上げると、そこには心底驚いた表情をしたルナがいた。

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