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【完結】オオカミはフードを被る  作者: Nadi
オオカミはフードを被る

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33/99

きっと

 次の日、キエリとゼノは城の研究室に向かっていた。


キエリは、いつも通りにスキップしながら隣で上機嫌で歩くゼノを横目でちらりと見やった。


 (ゼノ、いつも通りだ‥‥昨日、ゼノが酷く取り乱した時はどうしようかと思ったけど)

 (もう、ゼノの秘密について勘ぐるのはやめよう。ゼノは、わたしにとって家族だもの、もう悲しむところなんて見たくない。わたしの大事な人たちが傍にいる。それだけで、わたしは幸せなんだから)



 研究室の扉をゼノが勢いよく開けた。


 「どーもー! やってる?」

 「あ! あなたは!」


研究室の魔法使いたちが一斉にキエリに駆け寄ってきて、質問攻めにしてきた。


 「あなた! 一体どうしてあの魔力構造がわかったの!?」

 「なぁ、ちょっとこの魔獣について意見が聞きたいんだが?」

 「というか、この子可愛い!」

 「なぁ、よかったら魔法についてお茶しながら語り合わない?」


後半、なんだか質問ではなかった気がしたが、キエリは彼らの勢いにおされてたじろいでいる。


ゼノがキエリの前に分け入って魔法使いとキエリを分断させる。


 「ちょっと! アタクシの可愛いキエリに気安く近寄らないで頂戴! キエリが怖がってるじゃない!」


ゼノがしっしというように掌で魔法使いたちを払う。


ゼノがキエリの前に出たことによって、魔法使いの中でもゼノを知っている何人かの魔法使いたちがゼノのことをやっと認識した。


 「あれ? ゼノじゃんおひさ―」

 「んもう! さっきからアタクシはいたし、なんなら昨日ここに来たじゃない」


魔法使いたちは、ぽかんとしたり、うーんと思い出すしぐさをする。


どうやら、研究に夢中になりすぎて、ゼノの存在に気付いていなかったようだ。


 「うそ! ちょっと、なんでこの美貌と華々しさを振りまいてるアタクシのこと見えてないのよ!この研究バカども!」


魔法使いたちはゼノのいいようにぶーぶーと文句をつけだした。


 「なんだとゼノ! あんただって研究バカだろ!」

 「そうだそうだ! 研究のためだっていって俺を実験台にしたこと忘れてねぇんだからな! 見ろよこれ、未だに髪の毛が生えてこないんだぞ!」


ひとりの男性魔法使いが帽子を取ると頭は悲しいほどきれいに髪の毛が生えていない。


 「だまらっしゃい! あの魔法の効果はとっくに切れてんだから、あんたのはもともとよ!」

 「まったく‥‥キエリごめんなさいね、研究するとき以外こいつらほんっとうるさいのよ」


ゼノは、ため息をつきながら魔法使いたちをうざがっているが、キエリは、ゼノがこの空気を楽しんでいるように思えた。


おそらく、彼ら彼女らがゼノが言っていた旧友なのだろう。


 (ゼノ、楽しそうだし、魔法使いの人たちもゼノと親しいみたい)


そう考えていたキエリにまたあの疑問がよぎる。


 (自分の好きな研究もできて、親しい友達もいるゼノが、どうしてお城をでたんだろう‥‥ゼノが出ていったのはいつ? もしかして、わたしと暮らしだした時期と‥‥)


キエリは、また疑問が次から次へと湧いてくるのを首を横に振って考えないようにした。


 (もう、やめよう‥‥)


 キエリは、ゼノの横に一歩出る。


 「キエリです。ゼノと一緒に今まで魔獣の研究を行っていました。みなさんのお役に立てるように努めますので、どうぞよろしくお願い致します」


そう言ってキエリは、ぺこりと頭を深く下げた。


ゼノが付け加えるようにして鼻高々に続ける。


 「んふふ、アタクシと一緒に研究も魔法も学んできたのだから、優秀よ! さすが、アタクシの娘!」


魔法使いたちは、ぽかんとしてキエリを見つめた。


そして、急に絶叫と共に時間が動き出した。


 「えぇぇぇーー!!?」


あまりにも大声だったので、キエリは驚いて肩がびくっとした。


魔法使いの一人が、口をパクパクしながらキエリを指さす。


 「む、む、む、娘!? ゼノ、いつの間に? というか、ゼノを気に入るもの好きな男がいたのか?」

 「失礼しちゃう! アタクシはいつもモテモテだったわよ!」


キエリが苦笑しながら訂正する。


 「ゼノとは血のつながりはありませんよ。育ての親です」


キエリがそういうと、それを聞いた魔法使いたちはよりうーんと首を傾げ、不思議なものを見るようにキエリを見る。


 「それでも、ゼノが子育てするなんて信じられないな‥‥というか、血のつながりがない子供を?ゼノが?」


キエリは言葉に詰まった。


ゼノがキエリと出会った経緯を話すことは、キエリの秘密を話すと同義だからだ。


ゼノは、それをわかっているので、魔法使いたちの疑問を打ち消すように、話題を提供する。


 「そうそう、魔獣について新しいことがたっくさんわかったんだけど、ききたい?」

 「きく!!」

 「ならばっ、説明しよう! きたまえ!」


魔法使いたちは飢えた獣のようにゼノの情報につられた。


ゼノと魔法使いたちは部屋の奥に進んで行き、キエリもそれに続いた。


 (ありがとう、ゼノ)


キエリは、心の中で胸をなでおろした。



 研究室の奥、書類でもう物がこれ以上置くことができなくなっている大きな机をみんなで丸く囲って、ゼノが今までキエリと共に研究し、判明した魔獣についての情報を共有する。


 「多いから、さっさと話すわよ」


 ゼノが説明してくれることで、キエリの秘密に触れないように極力キエリに注目がいかないように配慮してくれている。


 魔獣は別の世界からこちらにくること。魔獣が凶暴なのは人間の世界の空気が魔獣に合わず、魔力暴走により起こること。


キエリの魔法のことは、あらかじめどう説明するか悩んだが、ゼノとキエリで魔獣を鎮静化する匂いを魔獣を捕まえて実験を繰り返すうちに偶然できた、という説明をすることにした。


もうひとつ、魔獣を元の世界に戻す、正確には魔獣が一定の範囲内に入れば、魔獣の世界につながる穴を作りだすことができる魔法を開発したこと。


そして、魔獣の数が増えているのは、魔獣の世界に大きな変化がおとずれている可能性があること。


これらの発見は全て、ゼノとキエリの努力の結果とキエリが魔獣だからこそ集められた情報である。


 聞き終わった魔法使いたちは、しんと静まり返っているが、瞳は新たな発見への期待で輝きを放っている。


 「どう? やっぱりアタクシとキエリは天才じゃない?」


魔法使いの一人がゆっくりと話し出す。


その声には興奮から来る震えが混じっている。


 「あぁ、すごいじゃないか! 俺たちも魔獣が別の世界から仮定までしていたんだが確かめようがなかったんだ」

 「だが、魔獣を送り返す魔法ができるってことは‥‥これは、研究しがいがあるぞ!!」


他の魔法使い達も口々に明るい未来への希望を話し出す。


 「魔獣を鎮静化させる‥‥聖水は魔獣が固い皮膚を持つものだと、効果が薄かったからな‥‥」

 「空気の成分を調べてみるか‥‥なにか魔獣の弱点がわかるかも‥‥」

 「ゼノとキエリ? もっと詳しく君たちの研究を教えてくれ!」

 「は、はい!」


キエリは、目を爛々と輝かせて詰め寄る魔法使いにたじろぐが、すぐに気持ちを切り替えて研究の成果の説明を始めた。


 (‥‥ここで研究を進めれば、研究の成果を国中に伝えられる。魔獣と人が争わないですむ道を見つけられるかもしれない)

 (それに、あのドラゴンが言ってた「王」という存在‥‥についても探らないと、穴が増えてるのも王が復活するからって言っていた‥‥)


 その日、日が暮れるのもわからない研究室で、キエリとゼノ、そして王宮魔法使いたちは魔獣研究に勤しんだ。

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