好きだから
次の日、キエリは、また街におりて昨日見たアクセサリー出店に行った。
(一晩考えたけど、やっぱりあそこのアクセサリーにしよう)
「あれ?」
キエリが一番気に入っていた、フェリクスの瞳の色と同じ、琥珀色の石がついたネックレスがなくなっていた。
(売れちゃったんだ‥‥しょうがないね)
「すみません、これとこれと‥‥あと、これください」
キエリが選んだのは、自分の瞳の色と同じ石のついたネックレスと透き通るような紫色のきれいな石のついたブレスレット、ともう一つ、濃い燃えるような赤色の石のついたブレスレットだ。
購入した後、喜んでくれるかな?どうかな?なんて考えながらうきうきしながら城に戻った。
キエリは、城に戻るやいなや使用人に呼ばれた。
キエリがどうしたんですか?と疑問を投げかける前に、あっという間に連れていかれ、きれいなドレスを着せられ、髪の毛を結われて、身だしなみを整えられた。
キエリの身だしなみ整えている間、女性の使用人たちはなんだか嬉しそうにしている。
(突然なんなんだろう? わたし、これから何するの?)
キエリは、未だに回答を得られず、困惑していた。
身支度を終えさせられたキエリは、使用人に部屋で待つように言われて、一人でぽつんと待たされた。
キエリの不安感が募る。
(どうしたんだろ? 確かに昨日もおもてなしされたけど、なんか使用人の人たちの態度が昨日とはまた違うような‥‥‥)
しばらくすると、ドアがノックされて「キエリ」という、低くて安心する声が聞こえた。
しかし、なぜだか少し元気がないように感じた。
「フェリクスさん、どうぞ」
フェリクスが部屋に入ると、フェリクスはなぜか申し訳なさそうな面持ちでいた。
キエリは、フェリクスにあったらネックレスを渡そうと考えていたが、フェリクスの表情をみるとそちらについて聞く方が先になった。
「フェリクスさん、どうしたんですか?」
「キエリすまない、誰かに言ったわけではないのに、朝になったらいつの間にかキエリと俺の仲が王宮中に伝わってしまっていた。君の心構えができる前に、いきなりこんな状況にするつもりはなかったのだが、すまない‥‥‥」
フェリクスが本当に申し訳なさそうにするのを見て、キエリが大きく首を横に振る。
「フェリクスさんが謝ることじゃないです! どうしてかはわかりませんが、とにかく、いつかわかることですし、それが早まっただけですよ、ね?」
キエリは、優しく微笑んでフェリクスの手を握った。
フェリクスも、キエリの笑顔が見られて表情が柔らかくなる。
フェリクスは、キエリの優しいところや意外と大変な状況でもどっしりと構えている姿勢が好きだなぁ、と思った。
「あ、そうだ!」
キエリは、机の上に置いておいたフェリクスへの贈り物をとってきて、フェリクスに渡す。
「これ、気にいるかわからないですが‥‥‥」
フェリクスが包みを開け、中のネックレスを取り出すと、黙ったまま、じっとネックレスを見る。
「昨日、そのネックレスについた石がわたしの瞳の色に似てるって、言ってくれたので」
キエリは、頬を赤らめて少し手をもじもじさせる。
このネックレスを選んだ理由が今更気恥ずかしく思えてきたからだ。
「‥‥それを見て‥‥その‥…わたしのこと思い出してほしい‥‥かなって」
(言ってしまった!)
フェリクスが顔を赤くするキエリとネックレスを交互に見て、とても嬉しそうに笑った。
「ははっ、どうしよう、すごく嬉しいよ!」
フェリクスは、すぐにキエリのあげたネックレスをつけた。
「ありがとう。絶対大事にするよ」
キエリもその言葉が嬉しくて、心が満たされる感覚がして、花が咲いたような笑顔になった。
「キエリ、俺からもこれを」
フェリクスも包みをポケットから取り出し、キエリに渡した。
キエリが包みを開けると、そこにはキエリが出店で見ていた、フェリクスと同じ瞳の色の石がついたネックレスだった。
「あっ、これわたしが見ていたネックレス」
「俺もキエリと同じこと考えていたんだ。これを見て、俺が隣にいないとき、俺を思い出して」
キエリは、キラキラした瞳でうっとりとフェリクスからの贈り物を見つめる。
出店で並んでいるときのネックレスと同じもののはずなに、その時とは比べ物にならないくらいネックレスの石が輝いて見えた。
「あぁ、とっても嬉しいです。わたし、すごく幸せです。ありがとうございます」
「つけてあげるから、後ろを向いて」
キエリが後ろを向いて、結われた髪を手で横によける。
フェリクスがキエリにネックレスをつけ、キエリのうなじにいたずらのようにキスを落とした。
キエリは、くすぐったくってふふっと笑った。
「キエリ、実は俺の両親があなたに会ってみたい、と言っているのだが、どうだろう?」
キエリは、振り返ってにっこりとほほ笑む。
「フェリクスさんのご両親にわたしも会ってみたいです」
しかし、思い出したように少しだけ不安そうな顔になる。
「でも、わたし、失礼なことしてしまわないでしょうか‥‥‥礼儀も何もまだわからないので」
「大丈夫だ。キエリだったら失礼なことをすることはないだろうし、それに礼儀は気にしなくていい。そのことは父上も母上も理解しているだろうし、それに、母上はもともと平民出身だ。そんなに気負いすることはないよ」
「それと、キエリのことなんだが、魔獣の研究のために村から協力してくれるために城に来た魔法使いだと説明してある。もちろん、キエリの正体も君が魔獣と戦ったことも言っていない。ただ、怪我を治すことができる魔法が使えることは伝えている。俺も一緒に行くから、もし、何かあってもすぐに助けるよ」
「わかりました、うん、がんばります!」




