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【完結】オオカミはフードを被る  作者: Nadi
オオカミはフードを被る

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恋しい人

R15表現ありです。

 フェリクスが連れてきたのは城の庭園だった。


色とりどりの花が植えられていて、人が通ると、蛍の様に灯りが空中に漂う魔法がかけてある。


もちろん、この灯りは夜の灯りとしてもちろん、侵入者用としても利用されているのだろう。


今は灯りが花々をほのかに照らし、とても幻想的だ。


 「あそこに座れる場所がある」


フェリクスが指さした先は、白いドーム型の屋根が石で作られており、椅子や机が設置されている場所があった。


こじんまりとしていて、晴れた日にそこでお茶でも飲めば、とても気持ちよさそうだ。


 「さ、どうぞ」


フェリクスが椅子を引いてキエリに座るように促し、フェリクスもまた椅子に腰かけた。


キエリは、周りがとても静かで、自分の心臓の音がフェリクスに伝わるのではと心配になった。


フェリクスが真剣な眼差しでキエリを見る。


さすがにキエリもフェリクスの言いたいことがわかってた。


もじっとフェリクスを見つめ返す。


 「キエリさん、もう伝わっているかもしれないが、俺の口からはっきり言わせてくれ」


キエリは、じっと耳を傾け、こくりと頷いて、続きを促す。


 「キエリさん、俺はあなたのことが好きだ」


その言葉を聞いた瞬間、キエリの頭の奥がひどく甘くしびれる感覚がした。


しかしすぐに、不安がこみ上げてきて、つい口からでてしまう。


 「わたしは‥‥‥わたしは、魔獣ですよ? 人間じゃないんですよ?」

 「わかっている」


フェリクスは、安心する落ち着いた声で話してくれる。


 「あなたの国の民を苦しめている魔獣と同じなんですよ」

 「あなたが言ってたじゃないか、魔獣にもいろいろいるんだろう? 人間だってお互いに傷つけることだってある」

 「‥‥‥」

 「キエリさん、変だと思うだろうが、俺が初めてキエリさんと出会った時『あぁ、俺はこの人にずっと会いたかったんだ』って何故か思えたんだよ。懐かしい人に会ったような、不思議な感覚だった‥‥‥」


キエリがハッとする。


キエリもたびたびフェリクスに懐かしさを感じていた。


まるでもとから繋がりがあったのではないかと錯覚するような、強く惹かれる感覚。


 キエリは、フェリクスから感じる感覚を「騎士団」という壁を作ることで、見て見ぬふりをしようとしていたが、今となっては、そんなものはなくなっていた。


 「俺は、それからキエリさんのことを目で追ってしまって、あなたの魅力的なところを見つけるたびに、どんどん惹かれていった」

 「気づいたら、どうしようもなくあなたを好きになってしまった」

 「フェリクスさん‥‥‥」

 「‥‥‥キエリさん、すぐに返事はしなくてもいい、だから‥‥」


キエリは、椅子から立ち、座るフェリクスの頬にキスをした。


 「キエリ‥‥っさん!?」

 「好きです‥‥わたしもフェリクスさんのことが好きです」


 「フェリクスさんの恋人として足らないとこ、ダメなこと、たくさんあると思いますが、それでも、それでも大好きです」


キエリは、うまく言えないが、懸命に伝えようとした。


言うたびに顔が熱く、赤くなったが、それでもやめられなかった。


 「すき‥‥‥です。フェリクスさん‥‥」

 「キエリさん、あなたに触れてもいいか?」

 「はい‥‥」

 「おいで」


フェリクスが自分の膝にキエリを座らせる。


キエリの頬に触れ、引き寄せ、キエリがしたように頬にキスをする。


それだけでは、足らないというように、額、瞼、また頬に、首から鎖骨にかけて軽いキスを落とした。


キエリは、くすぐったくて、少し身をよじる。


フェリクスがまた首筋から顎の下、そして唇に噛みつくようなキスをすると、キエリは自分でも聞いたことがないような甘い声がもれ、背筋がゾクッとする。


フェリクスのキスは止まることがなく、ごつごつした大きな手でキエリの耳の形をなぞり、もう片方の手でキエリの細い腰を囲む。


 「はぁ‥‥キエリ、さん」


フェリクスの熱っぽい視線がキエリを見つめる。


キエリは見つめられるだけで蕩けてしまいそうになる。


 「フェリ‥‥クスさ‥んん!」

フェリクスは、キエリの唇が少し開いたのを逃さず、舌を滑りこませた。


フェリクスの舌が逃げるキエリの舌を捕まえ絡めとる。


キエリは、フェリクスに触れられるたびにからだが火照り、キスされるたびに頭の奥がじんと甘くしびれる。


フェリクスは、やっと止まり、キエリはからだがふらふらしてフェリクスに寄り掛かる。


そんなキエリをフェリクスは包むように抱きしめてキエリの肩に頭をのせた。


 「すまな、い‥‥‥嬉しくて、やりすぎた」


キエリは呼吸が落ちついて、ゆっくりと話し出す。


 「だい、じょうぶです」


フェリクスが深呼吸をして、気持ちを落ち着けてからキエリに心配そうに尋ねる。


 「立てるか? キエリさん?」


 (あぁ、そうだ)


キエリは、考えていたことを少し恥ずかしがりながら言葉に出す。


 「キエリ‥‥って呼んでください」

 「‥‥‥キエリ」

 「ふふ、もう一回」

 「キエリ」


キエリはフェリクスに呼ばれるとうれしそうにフェリクスに抱き着いた。


フェリクスは、何か耐えるようにぎゅっと眉を寄せる。


 「キエリ、そんな可愛らしいことされると、また我慢がきかなくなる」

 「かわっ、ごめんなさい! すぐ離れます!」


キエリは、顔を真っ赤にしてフェリクスの膝から慌てて降りた。


それから気を取り直し、フェリクスに向き直って、ぺこりとお辞儀をした。


 「フェリクスさん、ご迷惑をおかけすると思いますが、これからよろしくお願いします」


フェリクスも立ち上がって、礼儀正しくお辞儀をする。


 「こちらこそ、よろしくお願いします。大変なことも出てくるだろうが、一緒に乗り越えていこう」


お互いに微笑みがこぼれ、また明日に会おうといってキエリとフェリクスは、お互いの部屋に戻った。




 部屋に戻るとゼノが先に戻っており、キエリは、今日のことを楽しそうにゼノに話した。


その話をゼノは優しい顔で聴いていたが、フェリクスと恋仲になったことを言った時だけとても辛そうな顔をした。


 「ゼノ、どうしたの?」

 「んふふ、なんでもないわ、知らないうちに、キエリがどんどん大人になってしまうのが少し寂しいと思ったダケ」と、笑って返した。


キエリは、ゼノの空元気にどうしようもない不安が生まれていた。

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