王都
「う‥‥‥ここは?」
キエリたちが瞼を開くと、そこはキエリの見知らぬ場所だった。
あたりを見回すと騎士団のみんなやゼノ、馬車も全てがこの場所に移動していた。
ここはどこか大きな建物の中にある広場のようで、地面は石畳で、中央には噴水と彫像があり周辺には何事かとこちらをうかがう人たちがいる。
その服装は統一されており、その装いはまるで、どこかに仕えている使用人のようだ。
フェリクスがゆっくりと本当に現実かとさぐるようにまわりを見る。
「ここは、城か?」
ゼノがステップを踏みながら、フェリクスの前に出る。
「そ~よん、馬車で移動するのは面倒だから、移動魔法で騎士団ご一行をまるごと移動させたってワケ」
「そんなことが可能なのか?」
「現にできてるでしょ? あ、でも、そこらへんの魔法使いができるなんて思わないでね、アタクシが規格外なのよ」
フェリクスたちは、ゼノが優秀な魔法使いというのが明白であり、この人物を敵には回せないと思った。
マギもあっけにとられていたが、すぐに騎士団員に帰還処理をするように指示を出す。
ルナやソール、フェリクスも突然の帰還に驚いていたが、てきぱきと作業を始めた。
キエリは、どうしていいかわからず騎士団員の片づけを手伝おうとしたが、フェリクスに止められた。
フェリクスは、周りにいた使用人を呼び、キエリとゼノを客人として部屋に案内するように指示した。
初め困惑していた使用人たちだったが、フェリクスに指示を出されると、素直に従った。
それを見ると本当にフェリクスさんは王子なのかと、しみじみキエリは感じたのであった。
キエリとゼノが案内されたのは、豪華な広い部屋だった。
じゅうたんが敷かれ、きれいな調度品が置かれ、奥の部屋には、キエリが三人分寝れそうな寝台があった。
疲れを癒すために、湯浴みと食事も用意された。
ゼノは終始リラックスしているようで、遠慮なしにおもてなしを受けていたが、キエリは慣れないことばかりで少し緊張してしまっていた。
一通りのおもてなしが終わり、キエリは部屋で休むことにした。
キエリは、部屋の窓から外を眺める。
城は少し高い土地に建てられたためか、窓から城下の街が一望できる。
「本当に王都に来たんだ。村とは全く違う‥‥‥建物も人も空気も‥‥‥これが人間の世界」
「キエリ、アタクシはちょっと出かけてくるわん」
「へ? どこに?」
「久しぶりのお城だもの、旧友に顔でも出しに行こうかなって」
「ゼノにお友達いたんだ?」
「あん! 失礼しちゃう! い、いるわよ‥‥‥」
ゼノが頬を膨らませて子供のように少し不貞腐れた。
「ふふ、冗談、いってらっしゃい」
「キエリ、ちょっと見ないうちにお茶目になっちゃって、じゃ、行ってくるわ」
ゼノは、そういって軽やかな足取りで部屋をでていった。
(ゼノ、やっぱりいつにも増しておかしい、わざと明るく振舞っているような‥‥‥)
「やっぱり、隠し事してるんだろうな‥‥‥でも、わたしのために?」
いくら考えてもキエリにはゼノの隠す秘密などわかるはずもなかった。
「フェリクスさん、お話があるって言ってたけど、いつ会えるかな?」
キエリは、ぼーっと外を眺めて呟いた。
すると、コンコンコン、とドアを叩く音が聞こえた。
キエリがはーい、と言って扉を開けると、そこにはフェリクス、ルナ、ソールの三人がいた。
キエリにはもうしっぽはないが表情から嬉しそうにしているのが見て取れる。
「みなさん! もう、片づけはいいんですか?」
フェリクスもキエリを見て、穏やかな表情になる。
「ああ、騎士団も数日休みになったし、父上と母上にも挨拶を済ませたから」
「よかったら、まだ日は昇っているし、街にでないか? キエリさんもここだけでは退屈だろう?」
「行きます! えへへ、楽しみにしてたんです」と言ってキエリは、微笑んだ。
こうしてみると、キエリも普通の女の子に見える。
魔獣であり、自分の何倍も大きいドラゴンに挑むような子には見えないのが不思議だとフェリクスは思った。
「うし! それじゃあ行きましょう! たはー、腹減った!」
ソールが子供の様にはしゃぐ。
それをまったく子供かと言ってルナがため息をつく。
いろいろ経験したキエリだったが、やはりこの三人といると心が安らいでいた。




