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【完結】オオカミはフードを被る  作者: Nadi
オオカミはフードを被る

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魔獣の王

 騎士団員たちはほとんどテントに戻って行った。


平地にはドラゴンとキエリ、フェリクス、ルナ、ソールが残った。


 ドラゴンとキエリが隣同士に座ってごく普通に会話をしている。


ドラゴンがキエリの顔を覗き込む。


 『アナタ ドウシテココニ イル? モドラナイ?』

 『あっちの世界‥‥懐かしいとは感じるけど、帰りたいとは思わないの。わたしが生きる世界はここなの』

 『デモ ニンゲンノセカイハ イキルノ タイヘン クウキ クルシイ』

 『そう、だね‥‥わたしはもう慣れたけど、あなたは向こうに戻った方がいいよ。わたしが住んでいた森のゼノの罠‥‥移動魔法からむこうの世界に帰れるよ』

 『ホント?』


 フェリクスたちはキエリがドラゴンと会話しているのをわからないながらも少し離れたところでそれを見守っていた。


 「すげぇな、魔獣ってこんな話せるんだ」

 「私たちは魔獣がでたら、戦うことしかしてこなかったならな‥‥」


フェリクスが寂しそうにキエリを見てぽつりとつぶやく。


 「キエリさん、今まで心細かっただろうな‥‥仲間がいなくて」


ソールもつられて、眉が八の字になる。


 「そうだよな、仲間がいなくてひとりぼっちで、人間と仲良くなっても、秘密を抱えたまんまで‥‥あぁ、オレ、キエリさんの前でいろいろ言っちまった‥‥また謝らないと」


ルナがはぁーっとため息をつく。


 「ソール、謝ることがどれだけあるんだ。いや、私もか‥‥」

 「ひとりぼっちか‥‥だが、キエリさんの正体をゼノ殿は知っているんだろう」

 「あー、そっか、そういえば、ゼノ殿が迎えに来てくれるかもって、言ってたな‥‥」


三人がキエリを見つめる。


ソールがぽつりと残念そうに呟く。


 「キエリさん、やっぱり帰りたいよな。こんなこと言うの変かもしれないけど、もう少しくらい一緒にいれたらなぁって」


ソールはいつも正直すぎるほどだ。


だが、今回はルナもフェリクスも同じようなことを考えていた。


 「そう、だな‥‥私たちは、騎士団はキエリさんのことを傷つけすぎた。さすがに、帰るだろう‥‥」

 「俺たちがとやかく言えることじゃない、キエリさんが決めることだ」

 「そんなこと言って! フェリクスが一番寂しがるだろ!」


ソールの追及にフェリクスがむすっとするが、否定はできなかった。


 フェリクスがキエリを見つめる視線は、すでに特別なものであると、フェリクス自身も自覚せざるを得なくなっていた。



 『キエリ アナタハ トクベツダト ワタシオモウ』

 『特別? どういうこと?』


キエリとドラゴンは、枝葉を伸ばすように様々な話に会話を弾ませていた。


その途中で、ドラゴンはキエリに不思議なことを話しだした。


 『アナタハ マリョク キレイ ソレニ ヤサシイ ジョウオウナレル ウツワ』

 『オウ フッカツ シタラ アナタ エラバレルカモ』

 『ちょっと待って! 話が見えない! どういうこと? 女王って、王って?』

 『オウ フッカツモウスグ ダカラ フアンテイ アナポコダラケ』

 『‥‥その、王が復活しそうだから、あっちの世界が不安定になって、人間の世界とをつなぐあの穴がたくさんできて、そのせいでみんなが人間の世界に迷い込んでしまっているというの!?』

 『タブンネ』

 『王って、なんなの? 復活したらどうなってしまうの? わたし、幼い頃にこっちの世界に来たから向こうの世界の全てがわかるわけではないの‥‥』

 『オウ ワタシタチヲ スベル サカラエナイ』

 『デモ オウ カンガエ ワタシ ワカラナイ』

 『王に逆らえない‥‥?』

 『アナタハ トクベツ ジョウオウ ナレル トオモウ タブン』

 『たぶんなんだ‥‥その女王って、王と何か関係があるの?』

 『ジョウオウ イッショニ ワタシタチヲ スベル』

 『ジョウオウ オウノ ツガイ』

 「えぇ!?」


思いっきり大声で驚いてしまって、フェリクスたちにぎょっとして見られた。


どうした、キエリさん?と聞かれたが、大丈夫だといって、ドラゴンとの話に戻った。


 『わたしがその女王になるっていうの?』


キエリは顔をしかめる。


 『カノウセイ ワタシ キエリ ナッテホシイ』


キエリは、手を横に大きく振る。


 『むっ無理だよ! やだやだ! 王もわからないのに、そんなのなれない!』

 『ザンネン』


ドラゴンは、可能性として言っただけのようで、少し残念そうにしたが、キエリの拒否を気にしていないようだ。


 『ありがとう、あなたのおかげであっちの世界のことも知れたし、すごく大事なことがわかったよ』

 『ドウイタシマシテ』

 『森への行き方わかる?』

 『ダイジョウブ』


キエリがドラゴンから離れると、ドラゴンはその翼を広げた。


 『元気でね!』

 『キエリ アリガトウ!』


ドラゴンは翼を羽ばたかせ、空高く飛び去って行った。キエリはその影が遠くなって見えなくなるまで、キエリは手を振った。


 フェリクスたちはいいえぬ寂しさがこみ上げる。


マギやインテルが拘束してまでキエリを連れて行こうとは、もうしないだろう。


そうでなければ、キエリとドラゴンをおいてその場を離れたりしなかった。


彼らも人間だ。


キエリは、確かに貴重な存在だが、命を助けてもらったキエリに無理に協力してもらうのは、はばかられると考えたのだろう。


キエリは、村に帰ろうと思えば、帰られる状態ではある。


しかし、キエリはフェリクスたちと一緒にテントに戻ってきた。


テントで団員たちに荷造りやこれからの進路について話していたマギがキエリを見つけると、目を見開いた。


 「娘さん、あんた戻ってきたのか?」


キエリは、少し苦笑する。


 「はい、村にはもちろん戻りたいですけど‥‥人間も魔獣も傷つかないのが一番ですから、その助けになるのなら、わたし、王都に行ってお手伝いします」


 (王都で国の魔法使いと話せれば、ドラゴンが言っていたこと、もしかしたらちゃんとわかるかもしれない‥‥王の復活‥‥)


 「そうか‥‥ありがとうな、協力してくれる選択をとってくれたことも、うちの団員を助けてくれたことも」


そういって、マギは頭を下げた。


キエリは、この数日で頭を何度も下げられた気がした。


そして、頭を上げさせることに苦労するのであった。



 キエリは、ドラゴンの一件以降、だいぶ心が軽くなった。


ほんの少しだが、団員たちのキエリを見る目が変わったからだ。


こちらが話しかけたら、一瞬気まずそうにはするものの、その態度に拒否は見られず、人によっては向こうから話しかけてくれる人もいた。


キエリは、騎士団の人たちと距離が縮まったことを素直に喜べていた。

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