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【完結】オオカミはフードを被る  作者: Nadi
オオカミはフードを被る

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治療

 会議が終わり、フェリクスはキエリの様子をみにすぐにキエリがいる天幕に向かった。


 「キエリさん、入るよ」


しかし、キエリからの返事がなく慌てたフェリクスが天幕の入り口を開けた。


 「よかった‥‥」


キエリは、クッションの上に横向きに倒れこんで寝ていた。


起こすのも申し訳ないと思ったが、不安になっていた彼女のことを考えると、今の状況を伝えてあげた方が良いと考えてキエリを起こすことにした。


 「キエリさん、すまないが少し起きてくれ」


キエリの肩をそっとゆする。


 「ん‥‥」


キエリは目を覚まし、ゆっくりとからだを起こす。


キエリが起きた時にずっと被っていたフードがずり落ちて、キエリの顔が完全に露になった。


 「すみません。つい寝てしまって‥‥どうしました?」

 「あっ、いえ、きれいだなって‥‥って、違うんだ! 俺は何を言ってるんだ。忘れてくれ」


キエリは、何のことかと首を傾げたが、いつもより視界が開けていることに気付く。


 (あっ! フードが取れてるんだ。でも、もう隠す必要もなくなったから、もういいかも‥‥)


 「あの、それで、なんでしたか?」

 「あ、あぁ、これからのことなんだが、ルナとソールがキエリさんにいろいろと質問しにくる手筈になっている。その場に俺はいられないが、あの二人だから大丈夫だ」

 「そ、うですか」


キエリは、何か考え込んでゆっくり立ち上がった。


 「それまで、時間はありますよね。怪我人の治療をさせてください。わたしの知ってる人たちですから‥‥」

 「むしろ助かるが、からだは大丈夫か?」

 「少し眠ったら、回復しました」


キエリとフェリクスは二人で天幕から出て、怪我人の運ばれている天幕に向かった。



 キエリとフェリクスが二人並んで歩いていると、周りの騎士団員たちの視線が先ほどより直接的に向いていた。


フェリクスが見てくる団員たちをキッとにらみつけると、蜘蛛の子を散らすように彼らは作業に戻った。


 (しまった。キエリさんにフードを被ってもらうべきだった。どうして、こうも‥‥)


フェリクスが顔をむっとして考え込んでいると、不思議そうにキエリがフェリクスの顔を見上げる。


 「あの、どうかしました?」


フェリクスは、彼女の透き通った水色の瞳がこちらに向けられるのがまぶしく感じて、周りに視線を移した。


 「いや、あいつらの視線が気にならないか?」

 「あぁ、確かに気にはなりますが、仕方がないですよ、わたしを珍しく感じるのでしょう」

 (それだけではないのだが‥‥)

 「あとで、きつく言っておくよ」

 「別にいいいですよ。そのうち自然と落ち着きますから」

 「そうか‥‥」


 キエリは、騎士団に来てからずっと、顔色が優れない。


それにフェリクスは、村の人からキエリはよく笑う人だと聞いていたので、ここにきてから笑うことがほとんどないことが心配になっていた。


 怪我人の天幕に到着し、重傷者がいる方の天幕にキエリたちは入った。


キエリは怪我の酷さを見て顔が歪んだ。


重症者は男性三人で、横腹に穴が開いているのか胴を包帯で巻かれている人が二人、肩がえぐられている人が一人。


三人ともキエリの見知った顔だった。


救護部隊の人たちが、重傷者の人たちの世話を丁寧にしている。


 フェリクスが事情を説明すると、救護部隊の人たちはキエリの治療を快諾し、さらに見学を申し出た。


 天幕の中は血の匂いと消毒の匂いが充満する。その匂いがキエリの鼻を刺激する。


 「う‥‥」

 「キエリさん、無理はしないでください」

 「大丈夫です‥‥わたしが治さないと、いけないんです」


横になっている重症者の一人の傍にキエリがに座る。


微かに意識があるようでキエリを見つけると、手を伸ばした。


 「お‥‥ぉ、キエリか」


キエリは、その手を両手で握りしめる。


 「すぐに楽になりますから、大丈夫ですよ‥‥本当にごめんなさい」

 「あ‥‥ぁ」


男性はそのまま意識を手放した。


キエリは、患部の近くに手をかざして、集中する。


 (かなりこの魔法を使ったから、コツがつかめてきた。無駄に魔力を使わないで傷の部分だけに魔力を集中させて‥‥)

 (絶対にみんなを治さないと、あの子のためにも!)


キエリが細く集中して魔力を注ぐ。


以前よりも魔力が削られる感覚が遅い。


 「ふぅー‥‥」


処置が終わり、緊張が途切れたキエリが息をゆっくり吐いた。


包帯の巻かれていた個所にそっと触れると、しっかりと傷がふさがっている。


 「やった!」


キエリの表情が明るくなった。


 見ていた救護班の人が包帯を外すときれいに傷がなくなっている。


フェリクスがキエリの隣にかがみ、まじまじと患者の傷のあったところを見る。


そして、キエリに、にっこりと笑いかける。


 「キエリさん、あんなに深い傷を治してしまうなんて、あなたは本当にすごい人だ!」


救護部隊の人たちから拍手がおくられた。


キエリは、フェリクスや救護部隊の人たち褒められて、なんだか照れてしまって顔が赤くなって、俯いた。


 「つ、次の方を治します」


キエリは、慌てた様子で次の怪我人の治療にあたった。


 キエリは、魔法によって全ての怪我人を完治させることに成功した。

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