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黒幻のリンクライン  作者: 水無雲夜斗
第一章 ニュービーキラー編
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1-27 姉妹の決闘

 「いいでしょう、その決闘、受けて立ちます」


 双三本爪を構え、リーナが臨戦態勢へと移る。

 一瞬の静寂。それを破って先に動いたのは、エファの方だった。


 「やぁぁぁ!!」


 踏み込みからの縦の振り下ろし。ヒルデブランド流の大剣ならではの破壊力を乗せた一撃。

 しかしそれ故に回避の余地は十分にある。ひらりと右方に体を回し、その回転力を活かしてリーナは右爪でエファを突く。

 それを前に屈むようなにして躱すエファ。そこから振り下ろしていた大剣を下段から斜め左上方へと振り上げる。

 リーナの爪ではエファの大剣を受け止めるのは難しい。流術を使って双腕の爪を使えば受け止め切れないこともないだろうが、それなら回避した方が負担が少ない。さらにリーナの武装は軽い分、体を自由に動かしやすい。防御手段が回避になることは自然なことだろう。

 そして、エファの大剣は回避型の相手に対して非常に相性が悪い。大剣は小回りが利きづらく、それを破壊力で補う戦法が基本だ。防御するのであればそれを打ち破るか、防御に専念するしかないほどの力を与えることによって、自分の隙を埋めることができる。

 対して回避型の使い手は、回避した後に次の一手を放つように訓練している。大剣を振った後にどうしても隙が生まれるエファのヒルデブランド流では、相性が最高に悪い。

 故に、こうなるのは自明の理だったのだろう。

 振り上げられた大剣を、その場で尻もちをつくようにすとんと転んでリーナは避ける。実際に尻もちをついたというわけではなく、左手で体重を支えていた彼女は、右足で地面を擦って足払いを放つ。

 見事にそれがヒットしたエファは、体勢を維持できずに背中から地面に激突した。

 すかさず立ち上がったリーナが、右手の三本爪を喉元へ突き立てようと振り下ろす。地面を転がってかろうじてそれを回避したエファだったが、転がった勢いのまま起き上がったところにリーナの爪が迫っていた。

 リーナはエファの喉元に突き立てようとした三本爪が回避された瞬間、その右手の手のひらを地面に向けることによって爪が地面に刺さることを避けていた。そして地につけた右手を軸に跳びあがり、放物線を描きながら宙を舞ってエファに迫ったのだ。

 驚き、すぐさまエファは上段に大剣を持っていってそれをガードする。その目の前に着地したリーナが、下段から右手の爪を振り上げる。

 まずい、と思ってすぐさま大剣でガードしている爪を弾き飛ばしてエファは背後へと飛ぶが、完全には回避しきれず左腕を爪がかする。


 「くっ―――」

 「これからですわ、お嬢様」


 少し意識が左腕に持っていかれている間に、リーナは既にエファの眼前へと迫っていた。

 そこから始まるのは両腕の爪から放たれる乱れ突き。昨日戦ったライオテイルという魔獣が行った爪の乱舞よりも速いそれを、エファは回避しきれず大剣を盾にして凌ごうとする。

 しかし防御に特化したレンならともかく、かのライオテイルの乱舞すらガードしきれないエファではそれら全てをガードするのは難しく、幾度か爪が防御をすり抜けてエファの体に傷を作っていく。


 「あっ、う……」


 このままではじり貧になってしまうと判断したエファは、イチかバチか大剣を大きく振って爪を弾こうとする。しかしその考えを読んでいたリーナは、これ以上ないタイミングで爪による攻撃を止めた。

 驚く暇すらなく、ガードががら空きになったエファの脇腹に回し蹴りが刺さる。

 鈍い痛みと同時に強制的に肺から空気を吐き出さされ、エファは声すら上げることもできずに宙を舞った。

 十メートルほど斜め上方にまっすぐ飛んで、エファの体が木に叩きつけられる。そのままどさりと地面に落ちた。

 喉に詰まった空気やら血液やらを吐き出すため、激しく咳き込む。そこにゆっくりとリーナが迫っていた。


 「これまで、ですわね」


 エファとリーナの差は圧倒的だった。流石はニュービーキラーの筆頭というべきか。

 一般の学生とはレベルが違う。エファは二つしか歳が違わないと言っていたが、それでも二年の差があるせいか、リーナの力量は逸脱している。

 未だ咳き込むことに必死なエファに向けて、リーナは爪を構える。地面を蹴り、大きく後ろに引いた爪を前に突き出した。

 明らかにエファの負けだった。だが、それだけの話だった。


 「姉妹喧嘩はそこまでだ」


 まだ希望が断たれたわけではない。エファが敗れ、一つの可能性が潰えた。

 ならば新しい可能性が前に出ればいい。そして、それを体現するかのようにそれは二人の間に割って入った。


 「さっきから黙って見ていれば、本当に、キミ達は不器用だな」


 リーナの爪を止めたのは、鈍色の鞘だった。そして、それを持つのはレンだ。

 今まで何を思ってか二人の戦いを見ていただけだった彼が、今度は何を思ったか突然乱入した。

 警戒したリーナが後方へ跳び、爪を構えなおす。

 息を吐いてゆっくりと鞘を下ろしたレンは、エファを庇う形で立つ。


 「レン、あなた―――」

 「キミは十分頑張った。あとはゆっくり休んでいてくれ」


 一歩、二歩と前に出たレンは、改めてリーナと向かい合う。

 そして、彼は宣言する。


 「覚悟は固まった。これ以上の悲劇は俺が許さない、キミ達は必ず俺が守ってみせる」

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