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勇者がいないファンタジー世界で俺は……  作者: アルねこ
第3章 勇者冠水編
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第八十六話 フラグブレイカー?

「ノヴィはプライドを捨てたこと……あるの?」


 脱出している最中ずっと緊張していたのか、無言だったネリーが突然話しかけてきた。


「急にどうしたのさ?」

「あれ程強い魔術は初めて見たわ。それなのにプライドを捨ててまで、命を取れと言われたから……」

「プライドかどうかは判らないけど、それにかなり近いものは捨てたことがあるよ」


「どのような時に捨てたの?」

「昔、十年程前だけど、生誕から出てきたマント一枚の男の噂、聞いたことない?」

「噂には聞いたことがあるわ。見たこともないアイテムを作ったり、色々な情報が交錯していたみたいだけど」

「あれね俺のこと」

「……冗談……じゃないのね」


「本当の話だよ」


 ネリーに話してあげる。銀貨二枚にすら苦労していたこと。街に入ってから、酒場の樽を漁ったこと、酒場の残飯に落胆して、酒場の夫妻に助けられたこと。


「結局さ悪いことする理由て、何か苦しみを知ってるから、それから逃れる為に悪いことしたり、悪いことを考えたりするんだよ。お腹が減ったとき、ネリーもそうだったんじゃない? そうじゃなかったらネリーは相当凄いと思うけど」


「うん……」


「ネリーは大丈夫だよ。ネリーは馬鹿じゃないし、きっと次はもっと上手くできる」

「ノヴィは冒険者にならないの?」

「ならないよ。それに怖いし」

「怖いって……、それだけ強いのに?」

「強い強いというけど、俺の根はマント一枚の頃と同じだからね。身を守る為なら頑張るけど、基本お断り」


「今回ダンジョンに潜った理由は?」

「本当に伯爵様に恩を返す為だよ。銀貨二枚に救われたと本当にそう思っている。あと生誕じゃ多分死なないからという点が大きいかな。いざとなったら魔族が助けてくれるかなぁと思ったし」


「ノ、ノヴィあのね……」

「うん?」

「わた、わた、私と冒険者になりませんか!」


 ……。これてあれかな、クラウディアが言っていたアレに近いのかな。でも純粋に気に入られているだけのような気もする。


「誘いは嬉しいけど、辞めておくよ。怖いし。それに用事もあるから」

「用事?」

「うん。俺、『大都市メルディカバリ』に行く用事があるんだ」

「私も一緒に行って良い?」

「止めておいた方がいい(真剣な表情」

「そう……」


 あっぶねぇ。これはフラグが立つところだった。ネリーは可愛いお嬢さんだけど、俺これ以上フラグ立てると壊れるからな……物理的に。いやこの場合、精神的にだろうか。


「ノヴィも私はお淑やかにしたほうががいいと思う?」

「別にどっちでもいいんじゃね。可愛いから冒険者でも十分モテるでしょ」

「そんな、全然モテたことなんてないよ。男の人になんて告白されたこと殆ど無いし」

「ネリーがお淑やかになりたいと思うなら、変わればいいと思うよ」

「そう……ね」


「でもさ」

「?」

「貴族の娘なのに冒険者になったということは、何かやりたいことか憧れるものがあったんじゃない?」

「……うん」

「別にすぐ変わる必要も無いと思うよ俺は。迷っているなら試しに少しの間、冒険者辞めてみるのもいいんじゃないかな」

「え?」

「ネリーの家はお金持ちだから、しばらくお家でダラダラしてみるのもいんじゃない? 俺も嫌なことがあったとき、しばらく部屋に閉じ籠もっていたからさ。冒険者だって生涯続けるのは難しいかもしれないからね。予行演習とでも思えばいいよ」


「皆に臆病者とか言われないかな……」

「好きなように言わせておけばいいよ。それに伯爵様はそんなこと言わないと思うよ。真っ先に仲間を逃がしてくれたこと、褒めてくれるんじゃないかな」

「私ファルファシオンに帰ったら、父様に謝る」

「それよりもまずお礼言ってあげなよ、多分喜んでくれると思うよ」


 そんな話をしているとダンジョンの外に脱出。二人で久々の日の光に喜びを分かち合う。


「あれ? ノヴィさん……、本当に一日で帰ってきたのですね」

「ネリーが帰る時結構頑張ってたし、君何帰る準備しているのさ」

「アハハハハハ、すみません。本当に帰ってくるとは、思っていなかったので」


 危うく帰りの馬車に置いて行かれるところであった。


「ノヴィ……あのね」

「まだ何か聞きたいことあるの?」


 馬車での帰り、好きな人はいるかとか、嫁はいるのだとか散々聞かれていたのである。流石にここまで聞かれると、少なからず俺がどう思われているのか確信に近い察しはつく。


「ノヴィは強くて綺麗な娘とお淑やかな娘どっちが好み?」

「お淑やかで優しい子」


 俺は無駄にフラグを建てない男になると決意したのだ。俺の一言に凄くガッカリしている感じは見られるが、ここで中途半端に行っておくと絶対変にこじれる。だからフラグをバキバキに折っておく。


 ……ごめんねネリー。



 急に馬車が止まる。なんだろう。


「ノッ、ノヴィの兄貴!!」

「どうしたの?」


 例の元盗賊の一人である。兄貴スゲェ達の一人である。


「それが……」


 どうやら街中で俺を必至に探している連中が大量に居るらしい。


「なんか以前も似たようなことあったよな、これ……」

「ノヴィの旦那がいるかと、倉庫や商人ギルド手当たり次第にやられている感じですぜ」

「相手そんなに強いの?」

「少なくとも片方はヤバイですぜ。見たこともない魔術を使ってる様子もあるようでして」

「正面切ってまで戦いたくないな。このまま他の街に行こうかな」


「あのノヴィ様……」

「ん?」

「ファルファシオンの屋敷にいらっしゃいませんか? まだお礼も何もしていないものですから」

「でも相手が相手だし困るんじゃない?」

「仮にも伯爵家の屋敷です。ノヴィ様の一人や二人身の安全は保証致します」

「そう? じゃあ申し訳ないけど、少しお願いしようかな」

「はい!」


 すげぇ嬉しそうこのお嬢さん。

今更ですがネリーとネリサ名前被り気味ですね。すみませんでした。名前考えるのが凄い面倒です……。

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