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勇者がいないファンタジー世界で俺は……  作者: アルねこ
第3章 勇者冠水編
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第八十四話 デストロイヤー

7/26 台詞の一部を修正しました。

 十二階層に到着すると、ルーカスに軽く教わった通り魔力を薄く広げるイメージを展開。広がる先で魔力に反発するものがあれば、その場所に魔力を持った何かがいるというレクチャーを受けた。


 さすがにダンジョン全層となると無理があるらしいが、フロア全体を把握する程度であれば、この方法が一番効率が良く確実らしい。魔力を駄々流しにすると魔力感知のトラップを作動させてしまう為、薄く展開するよう注意されていた。


「思ったより難しいなコレ」


 薄く広げると言われても、明確な対象イメージが分からない。まさか小麦粉を引き伸ばすイメージというわけにもいかないため、どうしようかと迷っていた。


「水辺の波紋的な感じでやってみるかな」


 イメージは現代兵器の一つソナーを想像。思っていたよりも違う気がするが、結果として上手くいったようである。


 上層に上がる為の出入口付近でニ体の反応。流石に始めたばかりの魔術であった為、特徴等は一切解らなかったが、このフロアで二対の反応とあれば間違いないとみる。



 出入口付近へ向かうと、今まさに終わりそう的な展開となっていた。


(マズイ!)


「緊急コード四!!」


 咄嗟(とっさ)に緊急コードを発動。魔術回路(マギステルサーキット)の起動に関して、どうしても俺が満足していなかった。攻撃面はともかく防御面に関してはイマイチなのである。他の魔族共は元々反射神経等に長けていた為、回避しながらという行動でカバーできていたが、俺には無理。


 予期していない出来事、咄嗟の防御に関して、あの魔術の発動の遅さは致命的だと感じていた。常にオートバリア的なものが作れれば理想的であったが、生憎と都合良くそのようなアイディアが生まれなかった。


 代用案として採用されたのが、この『緊急回路エマージェンシー・サーキット』。限定的な防御面でしか使い物にならないが、いざという時に用意して良かったと改めて思う。


 魔術の発動先はサイクロプスと女冒険者の間。ギリギリ攻撃を吸収できたようで助かった。


「おい! こっちに走れ!」


 突然の出来事に呆けていた彼女であったが、俺の声に気付くと直ぐに走りだした。大分疲弊しているのか走る姿に気迫が無く、走る力が乏しい。


魔術回路(マギステルサーキット)起動、四番プラス、アースウォール」


 追手を塞ぐように、念のため壁を一枚追加する。


「よく頑張ったな。一度退避しよう」


(なんで十二階層にサイクロプスがいるんだよ……)


 本来十二階層に居るはずのないサイクロプスに疑惑を抱きながら、一旦十三階層へと降りる。




「ところでファルファシオン伯爵の娘さんで合ってるかな? 名前は聞き忘れた」

「……そうです。ネリー=ファルファシオンと申します。先程は危ないところをありがとうございました」


 彼女の姿をみてふと思い出した。俺がダンジョンを脱出する際に見かけた、勇者パーティーの一人だ。ツンデレ剣士で勝手に名付けた娘である。


 となるとあのパーティーが瓦解したのか。どうせならあのパッツンパッツンな僧侶っぽいお姉さんだったら良かったのに……。そうしたら俺のテンション全開(マックス)だったんだけどな。出鱈目設定(ファンタジー)のくせに、肝心な所で俺の希望通りにはならないものだ。


 俺があれこれ好き勝手に考えていると、彼女が嗚咽を漏らしながら泣きだしてしまった。


「ごめんごめん。良かったらこれ食べて。お腹空いてるでしょ。空腹て限界になると、色々悪いことばかり考えるからね。まずはお腹と心を元気にしよう」



「一応改めて、ネリーさんを助けに来たノヴィです。素性は通りすがりの魔神です」

「まじん? 冒険者や勇者様ではないの?」

「用事があって冒険者ギルドにお邪魔した時、君のお父さんに娘を助けて欲しいとお願いされたんだよ。SやAランク冒険者を向かわせるのが難しいみたいだったから、俺が出張(でば)ってきたの。おーけー?」


「ノヴィさんは宮廷魔術師なの?」

「全然。というか宮廷魔術師てなんだよ。初めて聞いたよ」

「アレほどの魔術となると、宮廷魔術師ぐらいしか想像がつかないものだから……」

「そうなんだ、でも俺は違うよ。さっきも言った通り、役職的には『魔神』かな」


「はあ……、それはそうと他の方々は何処に?」

「俺一人だけど?」

「え?」

「だから俺一人。他がいると遅くなりそうだったから、俺一人で来たの」

「冗談よね?」

「マジで一人で来たよ。帰りは俺と一緒だから二人だね。やったねネリーちゃん」


「ううう……、どうやって二人であのサイクロプスを倒したら」

「そうそう、それ聞きたかったんだよ。なんであんな所にいるのサイクロプス?」


 ネリーの話によると以前から生誕にサイクロプスが出現するという噂はあったらしい。ただ情報通りであっても、ネリー達のパーティーにはサイクロプスを倒す算段があったとか。


 しかしトラブルが発生した。通常のサイクロプスとは違い、明らかに亜種タイプであったとのことである。


「そのサイクロプスて本当に後ろにも目があったの?」

「ええ、間違いないわ。明らかに突然変異した亜種タイプと思い、直ぐに逃げようとしたのだけど……」

「そこでトラブったと」

「はい……」


 俺はこれに心あたりがあった。そもそもコイツはサイクロプスではない。


『デストロイヤー』だ!!


『デストロイヤー』とは何か? 俺とレティが考えてしまったオリジナルモンスター様である。


 俺がサイクロプスの弱点を散々利用してしまったことから、物凄く阿呆なイメージが刷り込まれてしまっていた。そんな理由からコイツをなんとか強くしてあげたいと、創りだしてしまったモンスターである。最大の特徴は後ろにも展開されている第二の目(セカンドアイ)


 そもそも目が一つだと可哀相だから、二つ付けてあげようよと阿呆な事を言い出してしまったのがキッカケ。他はサイクロプスの性能のままで十分だから、といった流れでアイディアを提出した記憶がある。


 少なくとも俺が生誕を出る前は、この『デストロイヤー』はまだ存在していなかったはずだ。


 ルーカスが言っていた、レティとテレサが頑張った結果がこれか!


 しかしまだ納得できない。何故デストロイヤーが十二階層に居る。コイツは明らかにサイクロプスより格上。こんなところに配置するのがおかしいバランス。


 もしかして……、もしかして……。


(レティのやつ……、手抜き作業か計算ミスでもしたのか!?)


 なんか有り得そうな理由だな……。少々このパーティーが不憫だ。特にこの娘さん。防具や服はボロボロで、冒険者とはいえ、女の子としてはあまりに汚らしい姿である。


 試しにアレをテストしておこう。なんだかんだで実戦テストがまだなのである。いざという時に使い物にならないのでは流石に困る為、慣らしておいたほうがいいだろう。ということで実戦テスト。別に戦うわけじゃないけど。


直列回路(シリアルサーキット)起動、一番二番接続、マイナス、ホットウォーター」


 並列回路と違い、無駄に詠唱数を増やすことはできないが、一番可能性がある直列回路。回路と回路を繋ぐ、出力を一色にする混合回路。例のガスバーナーやブレイクスルーソードの延長線上の上で開発した回路。


 一番俺と相性が良さそうな魔術回路であるが、ちょこちょこ不発していた。実践で不発となると流石に使いものにならないため、こうしたちょっと機会で練習を重ねるほうが都合が良いと思い試したのである。


 次に荷物の中に入っているお鍋を取り出す。これは決して装備品ではない。いざという時の調理道具なのである。


 鍋にお湯を突っ込み、温度を確認。結構手頃のな温度と確認し、ポカーンとしているネリーさんに渡す。


「どうぞ」

「これを……どうすれば?」

「顔や髪洗ったらどう? 体とか拭きたいなら俺あっち向いてるからさ」

「まさか先程まで死にかけていたのに……」

「いいじゃん別に。周囲は俺が警戒しているから、お湯が冷めない内にどうぞ」

「ありがとう。お言葉に甘えて使わせて頂くわ」


 さて、あのデストロイヤーどうしようか。


 浄火(セイクリッドファイア)で燃やすことが出来れば一番いいのであるが、実はモンスターに関してはセイクリッドファイアが通用しない。どうやらモンスターには精神体、魂が入ってないらしいのだ。燃やす対象が無いとなると完全に空振り秘術となってしまう。


 十二階層にいる時点で、俺の知らない何か秘密があるのかもしれない。もう少しデストロイヤーの情報を集める必要がありそうだ。

直列回路はもう少しあとで出そうかと思いましたが、ネタ的にどんどん使いそうなので、結局出してしまいました。


次話7/26予定。

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