第八十話 銀貨二枚の恩
遅くなりました。宜しくお願いします。
「少々お待ち頂けますか」
連絡が遅くなってしまったが、アリーシャに連絡を取る為、冒険者ギルドまで足を運んでいた。昔に比べてマシになったかと思っていたが、冒険者から勇者にすり替わり、勇者が偉そうにしていた。
俺にとっては然程重要ではない。重要なのはビキニアーマーな女冒険者がいるかどうか。重要なのはその一点。ビキニアーマーの無い冒険者ギルドなんて、ただの町内会だからな。
一人で勝手にギルドの在り方をウンウン考えていると、ギルド長室に案内された。
「やぁ、久しぶり?」
「ももももも申し訳ありませんでした」
「んん? 十年前のこと?」
「はい…………」
「良いよ良いよ。アリーシャさんに少し聞いたけど、心入れ替えて頑張っているんでしょ?」
アリーシャの話によれば、十年前の出来事以来、心を入れ替えたように頑張っているとの話である。このギルド長が集めていた貴金属の大半は、没収されてしまったとのことだ。
先客がいらっしゃることに気づいた。貫禄ある男性。見るからにちょっと貴族っぽい男だ。
「もしかして相談中だったりする?」
「いいえ、こちらの用事は些か立て込んでおりまして。それにノヴィ様を帰したとなれば、今度こそ私が殺されてしまいます……」
「そうなんだ…………君も結構大変みたいだね。早速で悪いけど、アリーシャさんに繋いで貰えるかな? 連絡が取りたいんだ」
「畏まりました」
瓶に貯まった水を媒体にした連絡装置らしい。一、二分程でアリーシャさんと繋がる。
「ごめんね急に」
(これはこれはノヴィ様、どうなされましたか? まだファルファシオンに)
「いやー実は金周りで少しだけ予定が狂ってさ、今ファルファシオンで金を稼いでいたんだ」
(こちらで用立て致しましょうか?)
「大丈夫大丈夫。結構稼いだし、ついでに教会にも少しはダメージ入れておいたよ」
(ダメージとは……いえ聞くのは止めておきます。また心労の種が増えそうです)
「詳しいことはクラウディアに言伝お願いしたんだけど、もう少しだけファルファシオンでやることができたから、そっちに到着するのはもう少し遅れるかもしれない。ごめんね」
(それは構いません。それよりもクラウディアがそちらに?)
「うん。たまたま会ってね、クラウディアのお陰で色々助かったよ」
(数年程前から連絡が取れていなかったのですが……)
「まあ彼にも事情はあるから、俺に免じて許してあげてね」
まさか教会側で働いていたとは言えないしな。俺個人が彼を気に入ったこともあり、そのへんは誤魔化しておいてやる。
「近日中に妖精の欠片の代わりになる『コンパス』という方位アイテム新しく売りだすから、そっちでも積極的に勧めてくれるかな。詳しくはクラウディアからお願い」
(畏まりました。道中気をつけ下さい)
「うん、ありがとう。何かあればまた連絡するから。じゃあね~」
(はい、失礼致します)
アリーシャとの通信が終わり、水に映り込む彼女の姿が見えなくなる。
「長々電話ごめんね」
「電話? いえいえこのぐらいであれば、お安い御用でございます」
「そちらの貴族様も取込み中のところ、割り込みで申し訳ありませんでした」
「いえいえ私は……はぁ……」
「どうしたのさ?」
結局成り行き上、自己紹介と相談に乗ることになる。
この一緒にいた男性、何を隠そうこの街の領主であるファルファシオン伯爵ご本人様とのこと。
「俺はノーヴィス=レムリアンシードと申します。ノヴィとでも魔神とでも好きな様にお呼びください」
「ノッ、ノヴィ様!」
「まじん?」
「今は勇者なんていうのが流行ってますが、来年あたりから魔神のほうが流行りますから! 最先端っすよ!」
さり気に魔神を宣伝しておく。
どうやら彼等の悩みの種というのが、巷で流行中の勇者関係らしい。伯爵の娘様がどうやら勇者に熱を上げ、冒険者としてここ数年勇者と同行していたらしい。
しかし、問題が発生した。ダンジョンに潜っていた際、モンスタートラブルが発生し、彼女を取り残す形でパーティーが脱出してきたというのだ。
「救援に行かないの?」
「実はそれが……生誕の中層以降でトラブルに巻き込まれたらしく、こちらも手練を送ろうにも判断に迷っている所なのです」
「アチャー、中層以降か。となると十回層よりも下かな」
「恐らく……そうかと……」
「金は幾らでも用意します。無理を承知で言っているのも、理解しております。何卒お力貸し下さい」
ファルファシオン伯爵が、妖精族に対して頭を下げる。
「こんなに頼んでいるのだから、手を貸してあげればいいんじゃない? 仮にも伯爵様の娘さんなんだしさ」
「私も他のギルドに応援を頼んでおりますが、ここ数年の冒険者数低下が響いておりまして。コッチに回せそうな冒険者が良くてBランクなのです……」
「Bランクじゃ駄目なの?」
「ノヴィ様はあまりご存知でないかもしれませんが、冒険者の階級、特に上位には物凄い壁があります。特にS、A、の二つはほぼ別次元と思って頂いて宜しいかと」
「確かにクラウディアは普通に強かったしな。そうなるとクラウディアを、さっさと帰してしまったのが痛いな」
クラウディアには『大都市メルディカバリ』に先行で向かってもらった。『コンパス』売り出しに関する手伝いをお願いしていたのである。
「ノヴィ様お願いが……ございます」
「いいよ、俺が行ってきてあげるよ。他のダンジョンならともかく、生誕なら余裕よ余裕」
生誕パーフェクト攻略ガイドブックもあるしな。問題があるとすれば何階層にいるかだな。気が進まないけどレティかルーカス辺りに相談する方が早そうだ。
「同行者は何人程、用意致しましょうか?」
「ダンジョン内の?」
「はい」
「いらないよ。下手に人数増えると邪魔だし。あっ、でも馬車扱える人は欲しいな」
「かしこまりました。食料水は何日分用意すれば?」
「二日分もあればいいかな。迷子の娘がお腹空かしていると思うから、多少は多めの方がいいかもしれないな。どちらにしろ俺ひ弱だから、あまり荷物持てないし」
「あのノヴィ殿、よろしければ私の方から兵を用意しますが」
「いいって本当に要らないから。それに伯爵様には借りがあるし、借りを返すいい機会と思ったからさ」
「私とノヴィ殿は今日初めて会ったと思われますが……」
「会ったのは初めてだけど、伯爵様のお陰で助かったことがあるのは本当。だから食料、水、馬車を用意してくれるなら別に報酬とかはいいからさ」
「ありがとうございます! なんとお礼を申し上げれば……」
「お礼は帰ってきてからして下さい」
『コンパス』を大量生産している倉庫へと帰る。
「と言うわけなんだ。生誕に行ってくるから、皆気をつけてね。特に教会連中は何してくるから分からないから、最悪この倉庫は放棄していいからね。教会っぽい連中が来たら、身を潜めておいて」
「了解っす、命懸けで守りぬきますよ兄貴!!」
「だ~か~らあ、危なかったら逃げろって言ってるの。あいつらすげぇ危ない武器持ってるから」
「ノヴィ殿おおおおお、以前も貴方は同じようなことを言って、生誕に行ったではないでうすか!」
「大丈夫大丈夫。今度は結構自信あるし。これでまた死にかけたら、俺もキレると思うよ出鱈目設定世界に」
「一応俺が帰ってきてから『コンパス』を売ろう。十分数が確保できた分は、他の街へ流通させていいからね」
「了解しました。ほんと~~~~~に気をつけ下さいね」
「ありがとう。それじゃ行ってくる」
このタイミングで生誕に戻りたくなかったが、伯爵には銀貨二枚の借りがある。ここできちんと礼をしておくべきだろうと思ったのだ。
令嬢探しのクエストが始まる。令嬢の死体を見つけた場合は、やはり持ち帰らないといけないのだろうか。そんなことを考えながら馬車に乗り込む。
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