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勇者がいないファンタジー世界で俺は……  作者: アルねこ
第3章 勇者冠水編
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第七十八話 魔神 vs S級冒険者

 倉庫内にて待ち伏せること数日、遂にお客様がやって来た。


(やっと来たよ。まさか三日も待たせるとは)


 石透過を使い、ずっとこの倉庫にて待ち伏せてしてたのである。ワザとらしく隙を作り、忍び込ませる寸法。


 忍び込んできたのは二人組。ツンツンな髪型の男と妖精の二人組。男は巨大な大剣を持っている。


(男はアレだ。某イベント会場にいるクラウ◯さんのコスプレ野郎だな)


 茶髪っぽい髪がツンツンしており、そのバスターソード何処に売っていたんだと言わんばかりの武器。ただし非常に残念なのが彼の体型。デブである。二言でいうと残念デブ。彼のその体型がクラウ◯さんという存在から、ただのコスプレ野郎に格下げしてしまっている。残念で致命的なチャーム?ポイント。


「鉄の棒しか無いけど……騙されたか?」

「騙されてないよ。ここが磁石を作っている工場だよ」

「だれだ!?」

「俺だよ俺」

「石?」

「あ、ごめん。石解くの忘れていた。解除(リリース)

「クソ、やはり罠だったか」

「罠というのは正解かな。君て教会の人間だよね?」

「ふん、聞かれて正直に答える馬鹿がいるか!」

「たしかに、ごもっとも」


「一気に決めるぞ。プライマリ!」

「『属性付与(エンチャント)炎点火(ブレイズアップ)!!』」


 コスプレ野郎が構えた大剣に、炎が渦巻くように巻き付き始める。あっという間に炎が隙間なく大剣を包見込む。


「初めて見る魔法だ」

「当たり前だ。これは俺とSランク妖精の必殺コンビネーションだからな。泣いても知らないからな!」


 コスプレ野郎が台詞と同時に、こちらへと炎の大剣を振りかざす。


「魔術回路起動、二番プラス、ウォーターボール」


 明らかに相手よりもデカイサイズの水球が勢い良く飛び出す。


「なんだとっ!?」


 コスプレ野郎が大剣で水球を素早く切り裂く。炎と水がぶつかり、瞬間的に水蒸気が巻き起こる。圧倒的な水量と勢いを弱めない炎が拮抗し、水蒸気が辺り一面を霧世界へといざなう。


(少なくとも幻の炎というわけじゃないのね)


 妖精がいた為、幻かと疑っていたが、どうやら本物の炎のようであった。


並列回路(パラレルサーキット)スタート10、三番、テンペストグレネード」


 同時詠唱で動かしたのは風魔法。小さく渦巻く台風を周囲に展開。霧を晴らす効果も考えての魔術であるが、もう一つ大きなポイントがある。


「避けてクラウディア!!」

「──クゥッ」


 何処かで暴風弾の一つが敵に食らい付く。


 小さな暴風は倉庫に撒き散らる、鉄の塊を取り込む。当然作業場であるこの場所には、大小様々な鉄片が散らされている。小型台風の中に鉄鉱石を混ぜて殺傷能力を引き上げた。


 炎が効かない相手に対しての対策のとして考えていた魔法の一つ。本来は土魔法で圧縮した石を混ぜる方法だが、これは並列回路だけでは威力がイマイチ。


 予め自分に有利な戦場を構築し、この場に敵を引き込んだ。


「コスプレ野郎。さっさと降参しろ。一応まだやる気みたいだけど、囲んでいるから詰みだ。まだこの小型竜巻は数段階威力をあげることができぞ。もう諦めて話し合いに応じろ」


「ふんこれ程の怪我どうってことはない。昔ドラゴンと殺り合った時に比べれば、大したことないぜ!」

「一応警告はしたからな。おい妖精!」

「なっ、何よ!!」


 俺の攻撃にビビりながらも、まだ敵対する意思を見せていた。


「よく見ておけ……『浄火(セイクリッドファイア)』」


 俺の手の平から炎が轟轟燃え盛る。


「なんだ手の平なんか出して…………どうしたっプライマリ!?」


 俺と妖精にだけ見える炎の塊。魂を燃やす秘術である。


「お前と俺にだけ見える炎、どういった意味か理解できるか?」

「なっ、なんでそんな魔術がっ!?」

「秘術だよ秘術。俺の秘術よ。言っておくと幻じゃなくて本物だからな」


 プライマリと呼ばれた小さな妖精は真っ青になり、目の前に存在する異常に酷く怯える。


「何をそんなに怯える、プライマリ!?」

「クラウディアあなたは見えないけど、あそこに炎がある。精神体を燃やす炎が」

「……精神体?」

「私達は精神体で肉体を動かしているの、勿論貴方もよクラウディア。あなたには魂といったほうが、わかりやすいかもしれない。魂を燃やされたらどうなるか……肉体だけが残るの……」


 妖精が戦意喪失したのか、大剣に纏っていた炎が徐々に弱くなっていく。


「いいえ肉塊になる。本来、人は死ねばいつかまた、輪廻転生で生を受ける。けどあの炎は違う。文字通り消滅を意味する炎よ。世界の理から消える炎よ」


「そんなのおかしいぜプライマリ。魂を燃やすなんて死神じゃないか!?」


「その妖精が言っていることは本当だよ。それにこの炎はこうして(・・・・)使うんだ」


 俺は渦巻き続ける暴風弾に浄火の炎を混ぜていく。見た目は変わらないが、殺傷能力だけを求める非道的な魔法と化していく。


 その光景を妖精が呆然と見つめていた。勝ち目が無いことを、まずは知らしめないといけない。コイツらの実力が高いため、下手な小細工よりも圧倒的な攻撃力を見せたほうが早いと判断。


「クラウディア降参しましょう。今この竜巻に当たると即死を意味するわ」

「何言ってるんだよ、プライマリ! 俺達はいつだってピンチを残り越えてきただろ!?」


(いかん。こっちのコスプレ野郎は、どうもまだ理解していないな。浄火による脅しはやはり妖精ぐらいか)


 さてどうしようかなと悩む。


(そういえばコイツらSランクて言ってたし、例のヴィヴィアンの伝書鳩、ヴィヴィアンの()だよな? いっそヴィヴィアンを呼んでみるか)


「おいお前ら……、これが何か分かるか?」

「なんだその指輪、その指輪がどうした」


「これ妖精族ヴィヴィアンの髪の毛。今からここにヴィヴィアン呼ぶ」


「はんっ! そんなデマかせ信じるか……な、プライマ……リ?」


 妖精は浄火の脅しの時よりも遥かに震え上がっていた。


「((((((((ガクガクブルブル)))))))))」


 妖精の異常な震え方がコスプレ野郎にも徐々に伝わる。


「ほほほっほほほ本当にヴィ、ヴィ、ヴヴィヴィアンさっ、様の……?」


「本当にヴィヴィアンと接続(リンク)するアイテムだよ。どうする早めに降参したほうがいいよ?」


「「 ごっごっご、ごごごごごめんなさい!! 」」


 全力で二人が土下座していた。


 俺の浄火よりもヴィヴィアンの方が怖いて…………、出鱈目存在(ファンタジー)だなヴィヴィアン。

次話7/22予定

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