第七十三話 ノヴィの貯金は金貨110枚……
俺が真っ先に来たのは商人ギルド建物である。商人親子にお金を返さないといけない為、真っ直ぐここにやって来た。
「すみませーん」
「シヴさんいます?」
「シヴ……様ですか?」
「そそ、シヴ=リューケンという爺さんの知り合いなんだけど」
「シヴ様は七年前程に亡くなられております」
「…………え?」
「ご存知無かったようですね。シヴ様は七年前に、この街にて眠りにつきました」
「まじか…………」
すごい苦い別れになってしまったな爺さん……。爺さんは俺のこと死んでいるだろうと思ってた。俺は爺さんが死んでいると、少しも考えていなかったからな。あの爺さんは百歳越えても平気で生きてるぐらい元気な様子だったし。
「とにかくお金返さないといけない。すみません。十年ぐらい前に居た、ノヴィて者ですが、当時偉かったシヴさんの他三人ぐらい知りませんか?」
「三人ですか?」
「ええ、実は名前忘れてしまいまして」
爺さんのインパクトが強すぎて、他の三人との接点が頭からスッポ抜けているのである。
「少々お待ち頂けますか」
「お願いします」
受付の女の人が奥へと引っ込む。
「ノヴィ殿はシヴ様とお知り合いだったのですか?」
「そうそう。十年ぐらい前にずっと爺さんに良くしてもらっていたの。今だから言えるけど、当時オセロ作ったのも俺よ」
「驚きの連続ですよ。まさかあの当時、マント一枚だった貴方がオセロの立役者とは」
「まぁマント一枚の俺を知ってる人が聞けば、絶対そう思うよね」
「ほ、ほんとうに! ノっ、ノヴィ殿ではありませんかぁああああああああ!!!!」
やべぇ、すげぇテンション高い人が来たよ。誰だっけコイツ。
「私ですよ私。ジェラルドですよ」
「ごめん、実は爺さん以外の名前すっかり忘れちゃったの」
「当時、酒場まで迎えに行ってたじゃないですか!」
あぁ、あの時一番若かった人ね。思い出したわ。
「ごめん積もる話もあるのだけど、実は道中お金借りちゃってさ。俺が昔預けておいた金貨110枚を貰いに来たんだよ」
「金貨110枚……というと、もしかして預けておいたお金のことですか?」
「そそ、あのお金を少し使いたくて」
「それなら全部ファンレ様に渡しましたが」
「……えっ?」
「だからファンレ様に。万が一ノヴィ様に何かあれば、預けている財産は全てファンレ様に渡して欲しいと、シヴ様に遺言を残されていたと聞いておりますが。ノヴィ様がダンジョンで命を落とされたと聞いて、私共一同も心を痛めたのですよ。特にシヴ様、ファンレ様、エポックス殿は酷く悔やんでおられました」
……。
…………。
…………。
「あああああああああああああああああああああっ!!!!!!!!」
復活以来、一番の絶叫が響き渡る。
しまった。確かにそんなことを言った気がする。俺はバリバリ帰ってくるつもりでいた為、かなり軽いノリで言ってしまった気がする。魔族や妖精族が、俺の復活に数百年から千年は掛かる算段でいた為、あの時のメンバーには俺が死んだと告げていたらしい。
すっかりそのことを忘れていた。
「あ、あああああの時の俺を殴ってやりたい!」
しかもよりによって、ファンレに全部渡しているとは。仮に全部お金を持っていたとしても、持ち金のように真っ黒になっていた。ある意味チェックメイトだよ!!
あの時の後悔と戒める為、床に頭を打ち付ける。
「ノッ、ノヴィ殿落ち着いて下さい!!」
「ご、ごめん。ちょっと気が動転して……」
「とりあえず、一度私にて立替えておきますから」
「まじですみません。本当助かります」
商人に銀貨31枚を返す。別の所に借金しただけであるが。
「あまり気を落とすなよ。まぁ金貨100枚で気を落とすなという方が無理だと思うが」
「ありがとう。十年前も含めて、すごい助かったよ…………」
商人親子が去って行く。
いけない。いきなり大幅に予定が狂ってしまった。本来はここで大金を持ってヒャッホウといく予定だったのに、すでに計画が破綻しているよ。
「それにしても、ノヴィ殿よく生きておられました」
「まぁ結構ガチで死にかけたけどね」
「早速というわけではないのですが、ご提案と相談がありまして」
「いいよ。ぶっちゃけ文無しの上に、仕事も無いから。俺もお金になることなら相談に乗るよ」
「助かります」
まず提案というのが、実は以前約束していた、オセロの初年度代金10%分がギルドの預かりという形で未払い状態になっているとのこと。
「すばらしいっ!! あのときの俺を褒めてやりたい!!」
「実はノヴィ様、まだ話の続きがありまして……」
俺が死んだと聞き、まずファンレが姿を消してしまったとのことである。本来俺の収入となるべくチェス代金、オセロの初年度代金、妖精の欠片についてのお金が丸々残ってしまったとのこと。ファンレも居ないとなった為、エポックスにそれを渡そうとしたところ、エポックスも拒否したとのことである。
結局、いざとなったらエポックスに押し付ける形で、ギルド側が未払いのまま預かる形になっていたらしい。
「よっしゃああああ。よくやったおっちゃん!! あんたは俺に一筋の光を残した!!」
「ですからノヴィ様、まだ話の続きがありまして……」
「何まだあるの?」
「はい、重要なのはここからでして…………」
実は商人ギルドが妖精の欠片を売り出すまでは好調であったが、その後教会側が妖精の欠片の肝となる天然磁石をかき集めてしまったとのこと。そこから教会が天然磁石、妖精の欠片を暴利で売りつけるような行動に出たとのことである。
「それが何の問題に繋がってるの?」
「実は…………」
オセロ、チェスを教会側にパクられ。商人ギルドの大きい収入源を丸ごと取られたらしい。勇者印みたいなかんじで売りだしたとか。
「そんな経緯でして、正直に言いますと。ノヴィ様にお金を全部渡してしまうと、ギルドの財政が危なくなってしまうのですよ……」
「そうなんだ。流石にそれは厳しいな。というか教会がムカツクな」
妖精の欠片についてはファンレではない気もする。作りが簡単であるため、仕組みさえ理解ってしまえばあれほど利権を奪いやすいアイテムは無いと思う。
「オーケー。この相談俺もノリましょう。正直大金が欲しいので、頑張って教会に喧嘩売ります」
「助かりますノヴィ殿。出来れば程々にして頂けると助かります」
教会に喧嘩を売るつもりではいたので一石二鳥。
「格好付けておいて申し訳ないのだけど、痛手にならない範囲で構わないからお金少し貰える? お金が無くて……すみません」
予定は大分変わってしまったが、まずはファルファシオンの教会からチクチク攻めることにしよう。
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