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勇者がいないファンタジー世界で俺は……  作者: アルねこ
第3章 勇者冠水編
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第七十二話 ノヴィと十年後の世界-後編-

「らくちん、らくちん」

「魔術師様、本当によろしいのですか?」

「盗賊のこと?」

「はい」

「いいの、いいの。いざとなったら戦うし、彼等もそこまで馬鹿で無いと思うよ」


 上手いことファルファシオン行きの馬車に乗れてラッキーだ。折角なので今のうちに食料を……、モソモソしながらエネルギー補給。お腹を満たしていると……。


「ジーーーー」


 なんか後ろに座っている十歳前後の女の子が俺を睨んでいる。


「食べたいの?」


 首をサッと引っ込める。


「すみません娘が……。人見知りなもので」

「ん? 孫じゃないの?」

「その恥ずかしながら、私の娘でして」

「爺さん凄いね。ちょっと憧れるわ。すげぇ」


 男にしか解らない会話をしながら街道を進んで行く。


「ねぇ、爺さん俺と会ったことある?」

「はて……?」

「俺、ノヴィて名前なんだけど聞き覚えないかな?」

「いや、私はございませんな」


(ん~、どっかで見た記憶がある爺さんなんだよな……どこだっけかな)


「ノヴィさんは、どちらからいらしたのですか?」

「俺? 俺は生誕(ダンジョン)から脱出してきたの」

「魔術師ではなく、冒険者様でしたか」

「肩書的にはどっちも不正解だけどね。冒険者ギルドにもまだ登録していないし」


「それはそれは。そういえば昔このあたりで、生誕(ダンジョン)から出てきた男を乗せたことがありまして……」

「あー!、爺さんもしかしてあの時の商人さんか。俺だよ俺、あの時マント一枚だった男。覚えてる?」

「あぁああ、あの時の兄さんか」

「そうそう。言葉遣いとかすっかり商人が板について、全然気付かなかったよ。貫禄も滲み出ているし」

「いやいやお互い様ですな。頼りなかったあの男が、こんな立派な魔術師になってるほうが驚きです」


 やはり十年という歳月は人を変えるに十分な時間のようである。


「へーそうなると、あの後に成功して嫁さん貰えたんだ」

「私みたいなのところに、嫁いでくれる女性が居て助かりました。ノヴィ様、結婚は?」

「ノヴィでいいよ。俺はあれだな嫁運が無い」

「嫁運?」

「俺の嫁一号は俺の知らない所でポンポン子供産むし、嫁二号は俺の財産目的で近づいたの」

「はぁ。お二人も(めと)り羨ましい限りと思いましたが、災難が続いてるようですな」

「そうなのよー。元々結婚の約束をしていた婚約者には逃げられるし、踏んだり蹴ったりなんだよ」


 あの時と同じく、十年に渡る世間話で花を咲かせていた。


「おとーさんのおともだちなの?」

「そそ、俺むか~しこのへんで疲れて休んでいたら、君のお父さんが助けてくれたの。へいへいそこの兄ちゃん、俺の馬車に乗ってけ!と言ったんだ」


「おじさんそんなに強いのに?」

「お、おぢさんか……」

「こら、リサ。ノヴィ殿に失礼だろ」

「いいのいいの。俺おじさんでいいよ。ダンディーなおじさん目指すから。それに昔の俺超弱かったからね。魔法も魔の字も使えなかったよ」


「おじさんは勇者様なの?」

「勇者ねぇ。勇者なりたいけど、勇者のなり方よく知らないのよ」

「勇者は教会に行くとなれるんだよ!」


 やっぱり教会絡みか。基準は分からないが、なんかありそうだ。


「リサはね。大きくなったら勇者様のおめかけさんになるの!」

「お嫁さんじゃないの!? お妾さん?」

「勇者様は貴族と同じぐらい偉いから、およめさんは難しいかもってママに言われたの」

「そうなんだ」


 勇者て肩書だけでモテモテになれるのか。一昔前の冒険者みたいだな。


「へぇー。そうなんだ、初めて知ったよ。リサは物知りだな」


「リサお勉強頑張ってるの」

「偉いね。でもそんなにお勉強頑張るのだったら、お妾じゃなくてお嫁さん目指すといいよ。リサは可愛いから、お嫁さん狙うことマジオススメ」


「そうなの?」

「そうなの、そうなの。勇者なんてあれよ、所詮ただの流行りだから、来年辺りはもう廃れてるかもね」

「うそだー!!」


「本当本当。来年、再来年あたりはきっと魔神ブームが来るから……多分」

「まじん?」

「うん。魔神よ魔神。きっと近い将来魔神ブームが来るから。ブームがなければ創ればイイ(ドヤ顔」

「変なかおー。まじんてどんな人」

「俺みたいな人」

「変なおじさん?」

「うん、まぁいいやそれで」




 道中会話をしていると、ファルファシオンの石門前に到着する。


「アレ? ファルファシオンでかくなってない?」

「ノヴィ殿は久々に来るのですか? ここ数年の間、オセロ、チェスから始まり、妖精の欠片、物凄いアイテムが生まれてた街ですから。それに隠れた工芸品『漆』を求めて、王族の遣いまで来るようになっているのですよ」

「まじかぁ」


 俺の知らない所で、俺が火を付けた作品たちがブーム化しているようである。こりゃ魔神ブームを巻き起こすのもチョロいかもしれない。



「銀貨三枚だ」

「え?」

「早くしてくれ。次がいるんだ」

「ちょっと待って、十年ぐらい前は銀貨二枚だったと思うけど」

「今は昔と違ってこの街も大きくなった。何年か前から銀貨一枚が増えたんだ」

「まっ、マジデスカ……」


 やべぇ、自信満々で到着したら、まさか銀貨三枚に値上がっているとは。商人親子に一枚借りるしか無いな。


「というわけで、スミマセン。追加でもう一枚貸してください!」

「はぁ、本当に昔から変な人ですな。どうぞ」

「ありがとうございますっ!!」


「ノヴィの兄貴、俺達はどうしたら?」

「あー、君達か。どうしようかね」

「護衛はもういいなら、俺達は帰りますけど」

「いやいやだって君達帰ったら、また盗賊になるんでしょ?」

「それは……」


「ちょっと提案だけど、まだ提案出来る内容も少ないけど街の外で待っててくれる? 俺の金が引き出せれば、皆の分の入る銀貨も直ぐ用意できるから」

「まじっすか。ノヴィの兄貴何者なんですか一体……」

「じゃあちょっと行ってくるね」


 盗賊たちに告げ、俺は商人親子と十年ぶりに、ファルファシオンの中へと入っていく。

次話7/21予定。

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