第七十一話 ノヴィと十年後の世界-前編-
生誕を過去最高記録にて脱出した俺は、街道に出ると早速ファルファシオンを目指す。
以前の脱出と違い、三日分ほどの食料は確保済み。水はぶっちゃけ魔法でなんとかすればいいかなと、適当に荷物袋に詰め込んできた。徹夜で作業したいからと、ストゥニールにお願いしたらあっさりくれたのである。
呑気に歌いながら歩いていると、後方から騒がしい物音が徐々俺のライブステージを侵食し始める。
(なんだっけこの音。あーあれだ、馬車の音だ。なんか凄い久々に聞いた)
そして荷物を牽引する馬車は俺を他所に、あっという間に走り去ってしまった。
(流石にあの時とは違って、止まってくれないな)
妖精の欠片が流行ったせいか、冒険者の質が良くなったか、傭兵の関係かハッキリとは分からないが、自分の作戦がこんなところで影響するとは思わなかった。
(まぁそれだけ、平和で便利な世の中になったてことだよね)
食料は確保しているため、無茶食いをしなければファルファシオンまでは十分に保つ予定である。体の性能も向上している為、三日もあれば行けるだろうと思う。
緑が続くその道の先に馬車が止まっていた。馬車の周りには馬や人らしきものが遠目に見える。
(なんだろう、検問かな? まさか関所てことはないよな。ただでさえ金無いのに)
十年後である。何があってもおかしくないとは思いつつ、その場所に近づいていく。
(なんか思っている以上に荒々しい様子である)
検問と思っていたその人達、多分アレだよアレ。ファンタジーゲームでも中盤辺りの街周辺やダンジョンにふと現れる、モンスター扱い、同等のやつら。
『 盗 賊 が あ ら わ れ た 』
俺のコマンド入力は勿論これ。
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ノヴィは にげだした!
しかし まわりこまれてしまった!
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あれ、おかしいな。以前と違って石のはずなのに……。あ、歌うのに集中し過ぎて、『石透過』を無意識に切らしてたこと忘れていた。
「おい! お前何処行くんだ!?」
「別に取り込み中のところ、邪魔するわけじゃないので」
「あああんんん? 何ふざけたこと言ってやがる、てめぇも有り金と全部置いてけ!」
「いやいや俺マジで金持ってないっすから、銀貨二枚しか持ってないっすよ!」
「おめぇ銀貨二枚も持ってやがるのか! サッサとよこしやがれ」
この人達そんなに金苦しいの? 以前の俺も結構ガチで金に困ってたけど、そんな感じっぽいな。
「銀貨はどうしても必要だから、食料で良かったら分けてあげるけど。どう?」
「てめぇふざけているのか!? 俺は全部置いてけと言ってるんだよ!!」
「いやいや本気だって、君達だって食うのにも困るぐらいお金が無いんだよね?」
「まぁいい、サッサとこいつの身包みはいじまえ!」
なんかあまりいい気分じゃないな。女の人達にならともかく、こんな薄汚れたオッサン達に服を脱がされるのは俺としては非常に不愉快だ。
「おいお前ら、あまり俺を怒らせるなよ。今の俺は以前と違って強いからな」
そういって威嚇用に絶対無敵ソードじゃない、ブレイクスルーソードを構える。見たこと無い武器に盗賊共がビビリだした。へいへいビビってるぜコイツら!!
どちらにしても威力がやばすぎる。あくまで威嚇用だ。俺が下手に相手の武器を無効化しようにも、腕ごとズパッとやりかねないのである。
「なっ、なんだそんなこけおどし!」
「いやいや、これ超ヤバイ武器だからね。ちょっと地面見てよ」
土が焼けるどころではなく、ドロドロになり蒸発する匂いが異臭を放つ。
「ほらほら超ヤバイだろ? 俺あまり剣得意じゃないから、君達の腕とか全部切っちゃいそうなの」
「へっお前、剣が下手て自分で言ってれば世話ないな。おい!やっちまうぞ!」
あ、コイツら俺の剣の腕が下手くそとわかって、急に自信持ちやがった。マジ面倒だな盗賊。
威嚇で終わらせるつもりだったけど、なんとか頑張って無力化してみるか。
「魔術回路起動!! 二番マイナス、ウォーターボール!!」
襲い掛かろうとした盗賊に、人のサイズぐらいの水球が問答無用で直撃する。水球が直撃した瞬間、盗賊がありえない程後方へと吹っ飛ぶ。
「やべっ、やり過ぎたかな」
「おっおい! お前らコイツ魔術師だ、サッサと片付けちまうぞ!」
別の盗賊が俺に気づき、他のの盗賊と一斉に襲い掛かってくる。
「マジ面倒だなこれ」
「並列回路起動!!」
「スタート4、二番マイナス、ウォータースプラッシュ!!」
先程は水を凝縮していた為、予想以上の力を持っていた。今度は力を分散させるイメージの拡散型に。盗賊どもが水圧に敗け、次々と倒れてゆく。
「ハハハハッハハハハ、みよ盗賊ども。これが回転の力、人体スプリンクラーだ」
俺の四方から水を発射させている。体を回転させ、水圧が物凄いスプリンクラー状態へとトランスフォームを成し遂げる。
「アバババババババ」
「ブウブブウブブブ」
盗賊どもを水圧で鎮圧させた後、火球を作り上空へと放つ。
「今は水で手加減したけど、次に襲って来たら、みんな丸焦げにするからね。理解ったら謝って下さい」
「「「「「「 ……すいやせんでした…… 」」」」」」
十年程前は盗賊なんていなかったのにな。
「ところでなんで盗賊なんてやってるの?」
どうやら勇者が現れるようになって以来、男の冒険者や傭兵に居所が無くなってしまったとのこと。勇者のいないパーティーは、クエストを満足に受けることが難しいとか。しかもここにいる彼等は魔力が無く、ダンジョンに潜ることができない為、盗賊に身を落としてしまったらしい。
「あの…………」
どうやら襲われていた馬車の主人らしい。
「大丈夫だった? 結構、俺適当に水撒いてたから」
「いえそれは、危ない所助けて頂きありがとうございました」
「いいよ別に。俺は自分の身を守っただけだし」
「それはそうと、宜しければご相談なのですが……」
ファルファシオンに向う予定の荷馬車のようであり、そこまで護衛をして欲しいとのことである。一応報酬も貰えるとか。
「んー、どうしようかな」
「なんとかお願いします。貴方様のような魔術師の方に護衛頂ければ、これ程心強いことはありません」
「あー、受ける受けないじゃないんだ」
なんか盗賊の人達の事情を聞いちゃうと、なんとかしてあげたいと思ってしまったのである。仮にもあのダンジョンにいたリア充どものせいだと考えると、むしろこちらの応援をしたくなるのだ。
「少し相談なのですが、報酬はいらないので、宜しければお金を貸してもらえませんか? ファルファシオンに到着すれば、お金を返す当てはあるので」
ということで、俺は銀貨を30枚借りることができた。
「盗賊の皆さんに相談ですが、宜しければ今から仕事しませんか?」
「「「「「「 はっ? 」」」」」」
みんなポカーンとしてやがるよ。お前らが仕事無いていうから、仕事作ってやったのに。
今から荷馬車でファルファシオンに向かうから、護衛しろと伝える。報酬は一人銀貨5枚。
「あんた俺達を馬鹿にしてるのか?」
「いやいや、俺は護衛とか面倒だから。次にまた盗賊とかやって来ても面倒だし、もし盗賊が他にいるならそこをサッサと無視して行きたいのよ。やりたくないなら、やらなくてもいいよ。もう行くけど、どうする?」
「「「「「「 おねがいしやす!! 」」」」」」
以上の経緯で、六人の盗賊護衛を連れた、不思議な馬車移動が始まる。
次話7/21予定。




