第六十四話 魔神と女の子の魔術革命-前編-
「早く遊ぶぞノヴィ」
「待てレティ。よく考えてみると、俺はまだ魔法まともに成功してないんだよ。なんかレティのびっくりアイテムで凄い誤魔化されていたけどな」
ブレイクスルーソードを使うことが可能ではあるが、強力な武器を手に入れただけのようなものである。魔術が使えないという点は現在も解決されていない。
「ということで、俺は魔術を研究したいの」
「ノヴィの魔術は特殊なようだから、適当にやっていても、改善しない気がするがのう」
身も蓋もないこと言わないでくれ。
「ノヴィは秘術二つとブレイクスルーソードだけじゃ満足しないのか? その辺りの敵なら問答無用で倒せると思うがのう。最近は冒険者がこのダンジョンに来るようになったが、お主達を除けば最高八階層までだしのう」
「最近て……冒険者来てるの?」
「結構前から来ておるぞ。お陰でこのダンジョンも、循環が良くなったとルーカスが喜んでおるわ」
「ふーん」
「最近は勇者が流行っとるらしく、勇者がどうの叫んでるアホがよく来て面白いぞ」
「え? 勇者来てるの? 不味くない?」
「妾も最初勇者と聞いて警戒しておったが、どうも名ばかりの勇者らしい。冒険者の肩書が勇者だけになったようなものじゃ」
「ああそうなんだ。なんで突然勇者が湧きだしたんだろ」
「うーむ。流石に分からぬのう」
「あれかな。教会辺りがなんかやってそうな気がする」
「思い当たるところがそこぐらいだしのう」
そんな世間話をしながら、研究を黙々と続ける。
「のう、ノヴィ遊ぼうぞ」
「ええー。だって俺マジで魔術使えないし。結構こう見えても困ってるんだよ」
「そうじゃ、妾の秘密の部屋で遊ぼうぞ」
「秘密の部屋?」
「うむ。宝物庫から繋がってる、秘密の部屋じゃ。妾の他には母さまとテレサしか知らぬ」
「ほういいね。行きましょう」
レティに引っ張られるようについていくと、宝物庫とは名ばかりのガラクタ置き場っぽい場所に入る。武器らしきものから、何かの素材、壺等、まさに倉庫である。
「ほれここじゃ。ルーカスとスゥも知らぬからのう。誰にも言うでないぞ」
「オーケー、オーケー。俺はこれでも口は仮縫いぐらいには堅い男よ」
「イマイチ信用ならん男よのう」
レティが何も無い壁に手をかざすと、地下に繋がる階段が現れた。
「何これ!? 隠し通路?」
「妾が今より小さい時に見つけたのじゃ。この奥から魔力の流れを感じ取り、調べていたらこの通路を発見したのじゃ」
「レティすげぇ!」
「もっと褒めていいぞ」
案内された場所は用途が一切不明な物が、アチラコチラに置いてある。
「なにココ?」
「わからぬ。妾も発見したときはすでにこんな感じであった。おそらくであるが、何世代も前の生誕の魔王が使っていた、研究室か私室だとは思うがのう」
「へえ。というか俺入ってもいいの?」
「どうせ今は妾の部屋だしのう。もしかしたら、お主の新しい魔術のヒントが転がってるやもしれぬ」
「ありがとうレティ。秘密の場所教えてくれて」
結局案内された場所には、意味不明なアイテムや見たこともないものがゴロゴロしており、レティが分かる範囲で教えてくれた。
「なんかここのアイテムてオーパーツっぽいな」
「オーパーツ?」
「えっとこっちだと、アーティファクトていうのかな。現在の技術では再現が難しいような遺物のことだね」
「そうだのう。素材さえアレば、妾も同じものが作れるのに」
素材があれば作れるというあたり、この娘さんの天才っぷりがヤバイ。レティの話によると、ブレイクスルーソードもここで作ったらしい。
ふと眼鏡らしきものを見つけた。触らないように覗いてみるが、度は入っていない気がする。
「レティ、この眼鏡何か知ってる?」
「おおそれな。妾も小さい時に使っておったぞ。ほれ覗いてみるといい」
手渡された眼鏡をかけてみる……
「なんじゃこりゃあ!!」
薄っすらであるが、蛍光色のような色や模様が色々な物から見えるのである。
「うわっ!!」
レティの顔や体にも模様が走って見えた。
「ハハハハハそれ面白いじゃろ。魔力図が見える眼鏡なんじゃ」
「魔力図?」
「うむ。名前が解らないから、妾が勝手につけた。母上とテレサにも見せてみたが、綺麗な模様が見える眼鏡ぐらいにしか思っておらん」
「レティにも模様が見えるけど、それも魔力図なの?」
「そうじゃ。魔力が通る場所にはそもそも魔力図が存在しておる。それを見るアイテムじゃのう」
「皆この魔力図というの知ってるの? 少なくとも俺は初めて聞いたけど」
「うむそうじゃのう。知ってるかも知れぬという心当たりはいるが、少なくともテレサや他の魔族は知らぬの。試しに妾が小さい魔法を使うから見ておれよ」
するとレティの薄かった模様が徐々に明るくなり、紫色の蛍光色が光って見える。
「へえ。凄いな。となると薄く光っているのが、今体を走っている魔力ということかな」
「そうじゃのう」
「へー」
「お主あまりジロジロ見るでない。別に気にせぬが、そこまで首元やら足を見られると妾も気恥ずかしいぞ」
「ごめんごめん。でも本当に凄いなこれ。レティはこれ使ってないの?」
「うむ。妾はそれを使わなくても、もう魔力図が見える」
まじかよ。流石チート魔王様だ。俺達とは次元が違うぜ。
「もし良かったら、ここにいる間だけ貸して貰っていい?」
「お主が欲しいなら貰っても良いぞ。他の魔族は価値を知らぬしのう」
「いやいやこんな凄いもの貰えないよ、とりあえず少しの間使わせてもらうね」
「うむ」
眼鏡についてわかったことは、俺がかけると魔力が通り、例の魔力図というのが見えるらしい。手で触れただけでは、ただの伊達メガネと同じようである。
折角なのでその眼鏡を使って色々観察してみる。真っ先に驚いたのが、レティが作ったブレイクスルーソードである。この武器何気にこの魔力図が凄く細かく入っている。この部屋に色々なものが転がっているが、おそらく一番魔力図が入っている。
「レティ。気になったのだけど、このブレイクスルーソードの魔力図はレティが入れたの?」
「おおよく気づいたのう。そうじゃ妾が入れたのじゃ」
「このブレイクスルーソードが一番模様が入っていて驚いたよ。これがアイテムとして一番複雑な構造ということなのかな」
「いや正確には違うのう。妾が知っとる魔力図を真似して、書いてみただけなのじゃ。どれがどういった役割かは妾にも実はあまり理解っておらん」
「そうなんだ」
解らない部分を勘でアレを作ってしまうあたり、やはりチートだよ!
次話は7/19~7/20予定。もしかしたら中編を挟むかもしれません。




