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勇者がいないファンタジー世界で俺は……  作者: アルねこ
第2章 魔神覚醒編
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第六十話 イメージの力

59話が先行であがっています。ご注意下さい。

「だからの炎を強化するときはこうするんじゃ」

「こう?」

「違う。こうじゃこう」

「こうかな?」

「んー違う違う。こうじゃこう」


 いけない。天才(レティ)の説明は感覚派すぎて俺には駄目だわ。ルーカスに頼もうとしたが、ルーカスは忙しいらしく、結局レティに教えてもらっている。



 ~数時間程前~



「イメージしろ!」


 あれ、おかしい、魔法が出ない。精神世界(アッチ)じゃ余裕で出来ていた魔法が全然撃てない。試しにテレサにも見てもらったが、やはり出ていないらしい。おかしい。


「順に火水土風と試してみたら、どうでしょうか?」


 ルーカスのアドバイスを参考に、火を試してみる。出た。出るには出たが物凄く弱い。マッチ棒の火が消えそうなぐらいの火が出た。


 次に水を試す。指先から雫っぽいのが僅かにピチョンと垂れた。


 次に風。俺の得意とする撹拌作業のあれである。これはいけるだろうと思い、全力で魔力を突っ込むも扇風機程度の涼しい風。


 土に関しては最悪。何も起きなかった。


「ノヴィ、丸っきり駄目じゃのう」

「いやいや、精神世界ではポンポン撃てたのよ? まじで。ねぇテレサ本当だよね!」

「そうね。秘術は発動するからおかしいのよね」


 俺が使ってみたドリルとかを説明しても、丸っきり信じてくれない。テレサがあの覗き穴作った魔法とか言うから、全然凄い魔法に思えないらしい。


「ノヴィ殿の魔法は至って普通かと。初めての魔法で三属性が発動しているだけでも、才能はあるかと思います」


 ルーカスによれば、魔法を始めたばかりの頃は大体こんな程度らしい。最初からポンポン撃っていた、レティがおかしいとかなんとか。イケメン優しいな。イケメンで優しいとかコイツモテモテだろ。




 こうして現在、一番時間に余裕がある先生(レティ)に四属性魔法のレクチャーを受けているのであった。


「ごめんレティ。俺レティのようには上手く行く気がしないから、ちょっと一人で練習してみるよ」

「そ、そうか。そんな落ち込むでないぞ。少なくともお前は秘術が二つも使えとるからの」




 レティと別れた後、一人で魔法の練習をしていた。使えない頃に比べれば、遥かにマシである。ヴィヴィアンの魔力湖という心強い武器もあるから、練習には十分励むことができる。


(しかしなんでこんなショボイ魔法になるのかね)


 一応アイツの言った通り、イメージはしっかり固めてやっているつもりだが、一向に炎が強くなる気配が無い。魔神は最強じゃないのかよ……。ちょっと回想してみるか……。


『───一応僕ら魔神だから。この精神世界じゃほぼ最強存在だよ』

『───一この精神世界じゃほぼ最強存在──』


 ん、もしかして俺こっちじゃ、普通レベルになっちゃうてこと? なんか不味い気がするな。しかも回想して理解した。俺ほぼ最強とは言われているが、もしかしたらイレギュラーがあるのかもと気づいたのである。


 浄火(セイクリッドファイア)という反則技は使えるけど、威嚇効果が一切無いのが不味い。おそらくだが、浄火がアレンジできない可能性も高い。浄火のアレンジは水魔法と風魔法でアレンジしていたからな。


 いずれにせよ、火、水、風だけでもなんとかしないと。土は才能自体なさ気だし、後回しにすることにした。


 こうして俺の炎属性魔法特訓が始まる。大体この手の物語は炎属性の魔法をひたすら使い込むと、熟練度や経験値が上がると考えだした。こうして俺は飯を食ってる最中も、炎魔法を出し続ける。そうすれば、強化されると信じて…………。


 ~五日後~


(ぜっ、全然強くならねぇ……)


 結局あれ以来、寝る時間以外はずっと炎属性(弱火)のまま出しているが、中火にならないでいる。


 例のイメージについても、ある一つの結論に至る。精神世界ではイメージ力が重要と聞いていたが、こっちでは『お前の勝手なイメージを押し付けるな!』の境地に辿り着いた。


「んーどうしようかね。もっと発想を転換させたほうがいいかもしれないな」


 ファンタジー系の基本である、熟練度理論が通用しないとなると、もうただの地球理論で攻めるしかない。


 俺は理科の実験を思い出しながら、ジッと炎を見つめ出した。


 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 ~ノヴィを見守る者達~


「ノヴィが遂に炎を見つめ出したわ。心を病んだみたい」

「無理もないのう。最強最強と思っていたら、しょっぱい炎や水しか出せなかったからのう」

「いえいえ、あれは普通ですから。あそこから何年も修行を重ねてようやく普通に至るのです。最初から魔王様と同じ扱いでは、ノヴィ殿も可哀想かと」

「私は魔法を満足に使えぬ故、才能があるだけでも羨ましいと思うがの」

「ヴルムはその分、武力に長けておるからのう。バランスは取れているほうじゃ」

「アハハッハハハハ。結局大きな魔力が備わっただけで、全然変わっとらっ──グフォ──」

「あんたは黙ってなさい」


 以前の過ちを少々反省し、一同は静かにノヴィを見守っていた。


「お暇でしたら、皆様掃除でも手伝って下さい」


 ストゥニールが後ろで一同をたしなめる。


「頑張ってください、ノヴィ様」


 唯一ストゥニールだけがノヴィにエールを送る。優しいお姉さんであった。

次話は7/19予定。 

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