第五話 汚いものには蓋をしよう
7/1 改行など若干調整しました。
「宝物と言ったら、基本はベッドの下かタンスの中ですね」
「宝物じゃなくて器を探すの」
ベッド下を漁ろうとしていたヴィヴィアンを引きずりながら、次の部屋を確認する。一番最初に入った部屋には器らしきものは存在していたが、試しに魔力を注いでみたところ、中心部にある穴に殆ど流れ落ちていった。回廊にある湯浴み場にも似ていると思ったが、体を入れるには小さい為、おそらく別の用途に使用するものだと判断。
目を離している隙にヴィヴィアンが物珍しい一品を見つける。その度にヴィヴィアンの首根っこに手を伸ばす。
「こら、やめなさい」
「あーん、離して下さい」
基本的に魂の外殻なんていうものは極力触れない方が良い。そもそも器の多くは、見るだけで構造はわかるのだ。器の構造が見えないものは、器の大きさがあまりに大きく中が非常に覗きにくい。基本的に外殻と器は二つで一組。外殻に何かしらの影響があれば、恐らく器にも影響が出ると思われる。現状のリスクを考えるのであれば、外殻に極力触れないようにするべきなのである。
肝心の器が見つからないので困っているのだが。
「言ってるそばから!」
「だって、だって~、こんなの見たことありませんもの」
クネクネしながらヴィヴィアンが駄々をこねる。どうもこの外殻にある構成物は、ヴィヴィアンの好奇心を誘うものばかりらしい。確かにこのような状況でなければ、テレサ自身も手にとって確かめたいと思えるぐらい、気になってはいるのだが……。
後ろからトコトコ雛鳥のように歩く魔神が凝視する。もしかしたら、睨んでいるのかもしれない。
「さっきから睨まれているのよ」
「大丈夫大丈夫。入る前と比べたら随分と安定しているようですから。それに……」
目を閉じて頬を染めるヴィヴィアン。
「あんなに情熱的で甘くて蕩けそうな告白だったんですもの、ちょっとやそっとじゃ追い出されないと思います」
「ぎゃあああ!!」
涙目のテレサがヴィヴィアンに襲い掛かるが、喜劇のように躱し続ける。涙目のテレサの頭をそっと撫でる魔神。ヴィヴィアンが冷やかしを止めると、その姿を慈愛の眼差しで見守る。
「テレサはもう少し自信を持っても良いかと。想いが届いているということは、そちらの方を見ればわかります」
棚から一冊の書物を取り出すヴィヴィアン。
「キッカケはどうであれ、全く伴侶を作らない貴方達にとっては良い傾向だと思います」
「いいアドバイスをありがとう。でも、さり気なく棚から取り出すんじゃありません」
テレサが書物をサッと戻す。
「たまには男を愛してみるのもいいですよ。……そして捨てられて、男同士の愛を憎む種族となるのです」
そこはかとなく漏れるドス黒いオーラを避けるように、テレサは再びサッと距離をとる。触らぬ神になんとやらといった感じで、次々と部屋を確認していく。
そして遂に器らしきものを見つけた。中を覗いてみると本当に僅かではあるが魔力水が貯まり、底にはドス黒いものが沈殿して固まっているのである。
「やっと見つけたわ!」
器らしきものを動かせないか力を入れてみるも、全く動く気配が無かった。器自体の移動を諦め、そして底にあるドス黒いものを救おうとしたところ……
「あのー……、テレサそれはちょっとお止めになったほうが……」
奮闘している様子を伺うヴィヴィアン。
「何よ? 邪魔しないでくれる。もしかしてさっきのことを根に持ってるとか?」
「いえいえ、そうではなくてですね……」
妙に歯切れの悪いの物言いに、訝しげになるテレサ。
「そのですね、夢魔族がその黒い物を燃やすこと、生業とした一族であることは理解しているのですよ? ですが、ちょっとですね……」
「ハッキリ言ったらどうなの?」
「有り体に言ってしまえば、恐らく絵面がまずいのです。テレサがソレを救う姿に隠蔽を入れたほうがいいぐらい危険です」
訝しげな表情を崩さないテレサ。暫くするとヴィヴィアンは諦めを示す。
「分かりました。せめて私が見ていない所で回収して頂ければ……多分被害は抑えられるかと」
~時間経過~
テレサは黒いソレの回収が終わると、嬉々とした様子で魂の回廊に帰って行く。魂の回廊に帰って行く姿をしっかりと確認するヴィヴィアン。
「少々お尋ねしたいのですが……」
首を少し傾げる魔神。
ヴィヴィアンは一冊の書物を手に取り、テレサが居ない間に見たページを再び開く。
「こちらの白い器とこの絵の物は、もしかしたら同じものではないでしょうか?」
2回コクコクと頷く魔神。
「やはり……」
ヴィヴィアンはその書物が別世界では漫画と呼ばれている、書物であることを知っていたのである。中身に書かれているであろう文字は読み取れないが、一度手にしてみたいとの念願が遂に叶う。
そして中には、人物の、とある様子が描かれている。ヴィヴィアンはそのページと、先程まであの美人が奮闘していた白い器を見比べる。
「…………プフッ。プフフフッフフフフフフッ」
ツボに入ってしまい、笑いが彼女の腹を捩る。ヴィヴィアンが何度も見比べるページには、登場人物の『排泄シーン』が描かれていた。
笑い過ぎて涙を流すヴィヴィアン。その頭を撫で続ける魔神の姿がシュールに続いた。
※『救う』は一応誤字ではないのであしからず。当て字と思い下さい。
※付随してですが、黒い物はう◯こではありません。アストラルワールドの住人はう◯こしない生物です。
次回から主人公君視点で再開します。




