第四話 交渉-後編-
7/1 改行など若干調整しました。
大半が精神体で構成されている精神世界の住人は、生殖行為では数を増やすことができない。夢魔族も妖精族も精神体の分裂、魂を分かつことにより個体数を増やす。精神体の分裂は徐々に精神体が弱くなる為、無闇に増やすことは出来ない。
夢魔族も妖精族も、新しく生まれる精神体にいつ名付けるのか? 答えは最初に名付けた状態にて、精神体を分裂させる。もし、名付けていない状態の精神体を分裂させた場合、只の自傷行為となる。
以上の性質から夢魔族、妖精族等の住人は名付ける場合、魂に予め名を刻む必要がある。
夢魔族が子を成す場合、雌の個体しか産まれない。夢魔族の特質ではあるが、現時点では非常に由々しき問題である為、テレサは頭を悩ます。夢魔族が他種族の雌である精神体に名付ける場合、名を刻んだ魂を送り込む。ベースとなる元の魂とサキュバスの魂が融合する。条件を満たしている為、子は他種族からサキュバスへと変貌する性質がある。魂を汚染するという性質が強い為、これを成すことは殆ど無い。
他種族の雄へ名付けた場合、直面している現状である。名を刻んだ魂をこの魔神へと送るとする。するとどうなるか。雄となる魔神の魂とテレサの魂は融合できない。子を成す条件が満たせない為、本来であればテレサの魂は返るもしくは消滅する。
雄に魂を送ることはできないのか? 条件変更により、送ることは可能となる。単純に魂を送ることだけを目的とする。
仮にもし自分が敵意のある相手、または無駄に下心ある相手から魂を送られたとしよう。これを受けることは奇特な魂であり、大抵は他の魂の受け入れを拒否する。交じることのできない魂は共存といった形を選択するが、余程好き合った仲でなければ難しい。
人族に置き換えれば、『子供作りの為の生殖行為』か『快楽や愛を求める為の生殖行為』の違いである。
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テレサは先程から頭でアレコレ色々言い訳を考えているが、そもそも女から男へ魂を捧げるなんて行為は
ただの『 求 愛 行 動 』
しかも夢魔族にとって最上級の愛情表現とされていた。
何百年以上と生きてきたテレサではあるが、求愛行動なんてこっ恥ずかしい行為は過去一度も無かった。頭では理解していても、羞恥心がその行為を拒む。現状これしか手段が無いのであるが、兎に角恥ずかしくて行動に移せないのである。
そして相手は交渉を拒否する姿勢の為、もし自分の魂が受け入れて貰えなかったらどうしようとか、どうしたら魂を受け入れて貰えるとか、傍から見れば恋に身を焦がす乙女の姿。自分の姿を客観的にも理解している為、羞恥で悶え続ける。
加えてもう一つの要素がヴィヴィアンである。ヴィヴィアンも先程から虎視眈々と狙い、どういった手段を用いるかは知らないが、恐らく名付ける手段を既に考えていると思われる。テレサはヴィヴィアンに雄を取られないようにと頑張る。
『 三 角 関 係 』『 痴 情 の も つ れ 』
次々と己の状況たる言葉が浮かぶ。
「恋のスパイラル(笑)」
「恋のぉ?」
「スパイラァ~?」
「ルゥ?」
ヴィヴィアンの一言を妖精達が各々復唱する。ヴィヴィアンは無駄に変な名前を付ける趣味がある。しかも妙なセンスの名前ばかり。あの湖に落ちている聖剣にも、ナンタラカンタラて名前を付けていた気がする。
「そう、乙女の恋熱は時に周囲を巻き込むの。どこかの別世界では『ラヴコメ』と呼んでいるらしいわ」
「そんな無駄な情報はどうでもいいの!」
テレサが拒否する。そう、その言葉は受け入れてはいけないとテレサの直感が告げる。
「あらあら、一度も恋したことない生娘が今更意地張って。世間ではあなたみたいなのを『い・き・お・く・れ』て言いますのよ。しかも何百年越し、本当筋金入りもいいところね」
「いき?」
「おく?」
「れぇ?……のババァ(ボソッ」
「どいつ!? 今ボソッと呟いたチビ!」
「アハハハ。テレサがおこったぁ~」
「テレサおこったぁ~?」
「ヒステリー?」
「そんなこと言って私を煽っているようだけれど、ヴィヴィアンだって恋や愛なんてしたことないでしょうが!」
「失礼ですね、私は人を好きになったことありますよ……あと最低100回は殺してやりたい程好きですよ(ニッコリ」
踏んではいけない地雷に片足を乗せてしまうテレサ。
時間、精神力ともに限界が迫っていた。激しく波打つ鼓動がテレサを熱く恋焦がす。テレサは想いを乗せて伝える。
魂たる名を受け入れて欲しいこと。この世界に居て欲しいこと。自分には貴方が必要である。初めての愛であること。どうかどうかこの愛を受け入れて欲しいこと。
心にある限りの想いを伝える。
テレサは不器用で一途な愛の言魂-コトダマ-を贈る。
2章か3章あたりで聖剣についての話は盛り込む予定です。
かな~り独自解釈&妄想が繰り広げられるので、聖剣話が好きな人はすみません。
次回も主人公君は欠席です。




