第五十四話 幻の末に
「ウー、フィー、ナーは今日お留守番ね」
「いっしょー」
「にー」
「いきたいー」
俺がヴィヴィアンを誘い、森の中に行こうとした際、いつもの三人組がついて来る素振りを見せる。
「今日は俺とヴィヴィアンのデートだから、二人きりにしてくれ」
「でー」
「とー?」
「合い挽き?」
惜しい。そのあいびきは違う。こっちの逢引が正解だ。
「テレサには内緒ね。戸棚のお菓子食べていいから」
「「「わかったー」」」
森深くの一番大きな大樹まで来る。
「ノヴィ様、デートと嘘を付いてまで、連れ出した理由をお聞きしても?」
「んー、半分嘘だけど半分本当だよ。取り敢えずシッダウン。座りましょう」
ヴィヴィアンの座った隣で、俺も座る。
生誕のヴィヴィアン、この世界に来てからのヴィヴィアンの姿について話す。ヴィヴィアンも役割を演じているのではと思ったのだ。ただ皆と違い享受していない。
彼女は俺と同じく『異世界から呼ばれた者』であるから、違和感に気づいているのではないかと考えたのである。
二つの姿を持つヴィヴィアンは、姿を偽り、隠しているという考えに辿り着いた。
俺はお願いする。俺、レティと共に戦って欲しいと。魔神属性が困った時は、ヴィヴィアンを頼れとは言ってたからな。
「ノヴィ様は私が共に戦うといえば、好きになってくれますか?」
「今の時点でも十分魅力的で好きだよ。ここに来てからずっと近くにいてくれたから、好きにならないほうがおかしいよ」
何故かスラスラと歯の浮くような言葉が自然と浮かぶ。なんだろうこれ。
すると彼女は何かを待つように、自然と目を閉じる。どう見てもあのシチュエーションです。接吻シーンの寸前というやつです。彼女も俺のことを好いてくれている。
高鳴る鼓動が突き進ませる。彼女の唇に自分の想いが吸い込まれていく。
あれ、何か変だ。俺いつの間にこれ程ヴィヴィアンのこと好きになっていたの? 今このタイミングこのシチュエーションを、凄く楽しみにしていたとさえ考えている。
それにもう一つ気づいた、ファンレのことを忘れるぐらいヴィヴィアンのことを好きでいる。
たまたまご近所さんで、毎日お茶してたから気付かなかったけど、俺ヴィヴィアンのことを一番好きになってる?
なんかおかしいぞこれは。生誕で見たヴィヴィアンよりもずっと魅力的で、可愛いと思うけど、これは何かおかしい。俺らしくない。色仕掛けには非常に弱いけど、俺のあの決意は何処に行ったんだ?
「ヴィヴィアン俺に何かした?」
「何のことでしょうか?」
「俺に恋の魔法(笑)みたいな秘術掛けた? 正直いつ頃から掛かっていたのかは、知らないけど」
「あら、気づかれてしまったの。本当は深みにハマればハマるほど、解け難い幻でしたのに意外でした」
「ヴィヴィアンのことは、確かに綺麗、可愛いと思う。俺の中の好きな人を抜き去るぐらい好きになっている。ふと違和感を持った。こんなことして、どーするつもりだったの?」
「特に企てはありません。私は本当にノヴィ様のこと好きなんです。もちろん男女の関係として」
「え? 意味分からんけど、ライクじゃなくてラヴ的な意味で?」
「はい、そうですよ(ニッコリ」
「今の俺二股しているような男だよ」
「好きになってしまったから、しょうが無いと諦めました。昔からそうなんです私」
なんだろう、今のヴィヴィアンには不思議と嘘は感じないんだよな。マジでオレのこと好きなの?
「なんで好きな俺にそんな真似するの?」
「ノヴィ様は破茶滅茶な姿を演じていると言われておりましたが、もし私がこの世界に来る前から、その姿が素だとしたらどうするつもりですか。やはり嫌いになりますか?」
「え?」
「別に私演じてなんておりませんよ。ただノヴィ様がここにずっと居てくだされば、私それだけで十分でした。幻の中で飼うことが私達の愛し方。そうすれば貴方も幸せですし、私も貴方と一緒に暮らせ幸せになれます」
「つまり……俺は猫を被った姿を見てたの……?」
俺もしかして、また思い違いしていたのかもしれない。他種族の雌が雄を好きになる色事について先入観が入っているのだ。
いい例がサキュバスである。俺はテレサのことが好きだけど。テレサが好きになったキッカケは、魂を別けたそれだけのこと。俺と彼女において好きになる要素と価値観が違う。愛の示し方も当然違う。
妖精族の愛し方は好きになった対象に、対象が理想とする姿を魅せる。そんな愛し方。幻の檻に閉じ込めるのである。ヤンデレっぽいなこの人達。
そしてアーサ王について。俺は散々アイツのことを酷い男、酷い王として見ていたが……。
「ヴィヴィアン聞きたいことあるけど、答えてくれる?」
「なんですか?」
「君もしかして、アーサー王にも、俺と同じように愛を迫った? 幻惑っぽ~い魔法掛けて」
「あら、よくお気づきになられましたね」
間違いない。アーサー王は妖精族の異常な愛に気づき逃げたのだ。んで、その後のことはよく知らないが、惑わす妖精を討伐しようかと思ったのじゃないかな……。よくしらんけど!
多分、俺も同じ状況に陥ってるよ!
「どうしますか? ノヴィ様もアーサーのように、私を殺しに来ますか?」
あー、この娘さん殺意の波動がONになっているよ。今の俺にはぶっちゃけ、そんな脅威じゃない気がする。しかし、彼女の中では幻、即ち愛し方に気づかれた瞬間、自らが殺される対象になると思い込んでいるのであろう。
なんかそれはそれで可哀想であると思う。彼女の愛し方は他から認められない、愛されることがない。つまりそーいうことなのかな。
ヴィヴィアンの渦巻く力がウー、フィー、ナーを呼び、続いてテレサを招く。ギャラリーがなんか俺を助けようと心配しているが、心配無いからと取り敢えず現状維持。
俺が近づくように歩いて行くと、マジもんの水攻撃がポンポン飛んでくる。おかげで周囲の木々がどんどん吹き飛ぶわ。
俺はといえば、風バリアーを張ってるだけ。まず網状にした風バリアを二段階にし、水攻撃を分割。細切れになった水を上にサッと吹き飛ばす。まあこんなもの、怒った女が物を投げているぐらいに思えばいい。よゆーよ、よゆー。
ヴィヴィアンがの伸ばす手を無理やり握りしめ、俺の懐に無理やり引き寄せる。
「ヴィヴィアンは自分の幻がバレたら、拒否されると思った? 残念でした。俺そのぐらいよゆーで受け入れるよ。俺って全然モテた事ないから、むしろヴィヴィアンみたいな美人に好きになって貰って、ラッキーとか凄く嬉しく思っているよ」
まだ信じられないのか、拒否する態度と至近攻撃を続ける。
「そう言って、私を陥れるつもりでしょ!」
この女全然聞いてない。ヤンデレこじらせ気味だろ。仮にも好きになる男の声なんだから、ちっとは信じてくれてもいい気はする。もしくはアーサーの時のトラウマかな。
折角だからサキュバス的な告白をアレンジしてみよう。精神世界だから、なんでもできるし余裕。俺の精神体をちょっとだけプレゼントするのである。そこに想いを綴り、贈ってあげればいい。恥ずかしいけど、アレはダイレクトに感情を伝えるだけあり効果覿面。
少しだけ強引に引き寄せると、ヴィヴィアンの唇に流し込む。
彼女は顔を真っ赤にし、口をパクパクさせ始めた。
「でも今後は幻惑とか掛けたりするの止めてね。幻見せられても嫌いにはならないけど、俺そーいう愛され方苦手だからね。おーけー?」
「…………はぃ」
「今の俺優しいから、特別サービスで一個お願い叶えてあげる。今だけチャンスよ」
結局その後、もう一回キスをお願いされ、無事に皆の前に戻る事となる。まさか妖精族の愛を受け入れる者がいないとでも思っていたのだろうか。ヴィヴィアンもなかなかにチョロインだよな。精神世界の住人達て、そもそも男慣れしてないだけじゃね?とか思ったのは内緒。
余談、ごめんごめん。もう一人嫁できたわーとか言いながら、テレサの前に向かったら思いっきりぶん殴られた。なんかその後グーパンチで散々殴られたけど、それで許して貰えたということらしいです。
実はお茶していた時のテレサの言葉。浮気してるだの他所の女と言っていたことだが、俺が取り込まれつつあると気づいていたらしい。
俺はそんな訳ないよーとか誤魔化しておいた。……スミマセン、完全に取り込まれてましたと、心の中でテレサにイメージ土下座。
教訓。妖精族の幻惑舐めすぎてたわ。今度からもう少し妖精族を敬うことにする。
補足
精神世界に来たときから、ヴィヴィアンの優しい姿が夢幻だったよ!という流れです。書き方が悪いので、少々分かり辛いかもしれませんので、補足いたしました。
稚拙で分かり辛い部分があるかもしれませんが、これからも宜しくお願いします。
次話は7/17予定




