第四十四話 魔法科学の力(笑)
【蚊】の真っ只中に現れた俺は、魔法の使い方について、全くレクチャーを受けていないことに気づいた。
「そもそも詠唱いるのかな?」
大切なのはイメージと言ってた。いらないよね。これだけ【蚊】が湧いちゃってると、◯ラでは駄目っぽい。いきなり◯ラゾーマで根こそぎ焼き払ったほうが良さそうだ。ということで物凄い炎をイメージ、手から勢い良く放出する
「浄火」
◯ラゾーマなんてカッコ良いことは言ったけど、手から噴出されるのは火炎放射。まぁ強烈な炎のイメージて言ったらこれになっちゃうわな。とりあえず浄化を浄火にアレンジしてみたが、上手くいってよかった。
「ハハハハッハハハハ、燃えろ燃えろ【蚊】ども」
テンションが上がってきたところで、ちょっと魔力を入れて、威力を上げることを試してみる。試みは成功し、拡散火炎放射の完成である。浄火による効果は思っていた以上に抜群で、根こそぎ払っている感はある。
しかし…………
「こいつら、ちょっと多すぎだろ」
俺が藻掻いてた時に、相当増やしてしまったのかもしれない。一向に終わる気配が無いのである。こうしている間にも浄火をまき散らすが、魔力が結構な勢いで減っているのがわかる。
「アイツが気絶するぐらいて、言った理由がわかった」
どれだけ【蚊】が弱くても、流石にこれだけの量となると根気比べみたいになってしまうのである。時間が掛かれば掛かるほど、俺の魔力は消耗されていくわけで、発想を転換したほうがいいかもしれないと考える。
相手は【蚊】。【蚊】といったら蚊取り線香。ただ蚊取り線香でもコイツら寄せ付けないだけで、蚊取り線香だけで全部倒せるとは思えない。いっそのこと◯ルサンでも炊いてみるかね。折角こうしてなんでも出せるのである。
手始めに浄火に水魔法をぶつける。すると辺り一面に湯気が立ち込め、水蒸気がどんどん拡散し始めた。【蚊】の動きは鈍っているもの、死滅させるにはイマイチな威力のようだ。
まずはとにかくこの水蒸気を手当たり次第に、できるだけ広範囲に広げ続ける。頃合いと判断すると、今度は風を巻き起こす。風を巻き起こす方向は回転運動を意識してかき混ぜる。大丈夫かき混ぜるイメージは俺の中で最も明確に表現することが出来る。なんせ、あの地獄のトレーニングである撹拌作業を何度もやってきたのだ。アレに比べればチョロいぜ。
そしてかき混ぜるついでに水蒸気を分子レベルまでこまか~くするイメージを持つ。これを更に高速回転でかき混ぜるかき混ぜる。かき混ぜるかき混ぜる。かき混ぜるかき混ぜる。
暫くすると周囲の所々で、徐々に【蚊】がポツポツと蒸発を始める。最初は不規則に起きていた蒸発が、暫くすると辺り一面そこらじゅうで蒸発が巻き起こる。
「ハハハハッハハハハ、みよ【蚊】ども。これが科学の力だ」
分子を高速移動させることにより熱量を作る。予想以上の効果でかなりの広範囲で浄火効果がうまれる。
「浄火爆発!!(電子レンジ)」
なんか正確には電子レンジの仕組みじゃないけど、電子レンジの仕組みから思いついたのでなんでもよい。あれよ、大事なのはイメージだ。イメージしろて言ってたしな。しかも電子レンジと違って、俺とテレサには被害がない、JISマーク付き。
【蚊】の蒸発する音やら、高速で分子が動く音が騒音となり始める。
「…………ノヴィ?」
「おはよう、テレサ」
俺がずっと抱えていたテレサが、騒音に目を覚ましたようである。
「え? あ、おはよう。 え? 本当にノヴィなの」
「そうそうノヴィよ。テレサが名前を付けてくれた『ノーヴィス=レムリアンシード』だよ」
「どうして…………その名前を?」
「さっきね俺、魔神覚醒しちゃったのよー。で、今【蚊】退治してるから、痛いと思うけど、もうちょっと頑張ってね。直ぐ終わらせるから」
「【蚊】? もしかして【黒き力】のことを言ってるの?」
「そそ。俺にとっちゃ【蚊】みたいなものだから任せてよ」
魔法科学実験の続きである。先程からぶん回してるこの浄火爆発(電子レンジ)であるが、実は副次効果を持っている。それがボチボチ効果を表す頃である。
高速回転の渦が気流の流れを生み、周りの【蚊】どもを吸い込み始めた。
「ハハハハッハハハハ、おまえらは逃さぬぞ。このセイクリッドル◯バ壱号からは逃げられないぞ」
大事なのはイメージよ。イメージ。このル◯バ君壱号何が優秀なのかって? 完全自動で吸い込むのは勿論のこと、回転力が弱くなってきたら、俺の側に戻ってくるのである。
回転力が足りなくなったら、三倍回す。おまけでもう三倍回しておこう。これで九倍吸い込む。これは偉大なる先生が考えた超理論。◯ォーズマン理論だ。回せば回すだけ力を増すトンデモ魔法兵器なのである。
そうして俺のセイクリッドル◯バ壱号が、【蚊】どもを一方的に蹂躙する。
「テレサ、俺謝らないといけないことがあるんだ」
「ノヴィ! アレ放っておいていいの!?」
「いいのいいの。アレ自動運転だから」
「じ、じどう、うんてん?」
「そうそう、勝手に黒い奴等吸い込んでくれる、便利な奴OK?」
「とりあえず分かったわ……」
テレサの姿をよく見てみると。綺麗だったあの銀髪が黒色でくすみ、肌も傷や火傷のあとで一杯であった。あの時に着ていた服もすっかりボロボロで、見るに耐えない姿。
なんかコイツらちょっとムカついてきたな。面倒だから十倍ぐらいでぶん回しておく。
~ウォオオオオオオンンンンンンンゥゥゥウゥゥ~
「ごめん。さっきの話だけど、俺テレサに謝らないといけないことがあるんだ」
「──ィ。聞こえなっ──」
いけない、ル◯バが頑張りすぎて、想像以上に五月蠅い。吸い込む力と静音の両立は難しな。◯イソン凄いよ、◯イソン。
もう直球で短く言おう
「テレサ好きだ」
「──ィ。聞こえなっ──」
「だから、すーきーだあああ」
「──ィ。聞こえなっ──」
何このB級映画以下の告白。もう俺諦めようかな。
テレサの耳元に口を寄せる。
「今までーごーめーん、俺もーテレサの事好きだあ」
今度は全部聞こえたのか、テレサも同じように俺の耳元に口を寄せる。
「ごめんね。本当は全部聞こえてたよ。嬉しくて何度も聞いたの」
もう自分の赤面する顔が手に取るようにわかる。頭を抱えてゴロゴロ転がりたいわ。
それから荒れ狂う中で色々な事を話した。人間の記憶があったこと、人族を殺せと言われ、怖くなって逃げ出したこと。街に行ってからのことも全部話した。ファンレのことも話した。あの黒い中に助けに来てくれたことに感謝をした。最後にテレサのことが好きだと言いたかったこと。全部全部白状した。
テレサもそれでも俺のことは好きだと告げる。一安心。何せファンレのことは完全に俺の落ち度だからな。公認の二股とか最悪だと思うけど、正直に言ったら、『しょうが無いよ』と笑われた。
俺なんかよりも、テレサの方が大きい器持ってるよ絶対。
そして俺達が話し終わる頃、【蚊】こと【黒き力】は力を失う。最後の一滴が完全消滅する。
静けさを取り戻した辺り一面には、綺麗な幻想的光景が広がる。目の前には森。遠目にはなんか昔のヨーロッパっぽい風情の通り。
そして俺の後ろには何故か知らんが、俺の実家が建っている。わけわかんねぇ。ウケルわ本当。
「アハッハッハハッハハハハハ」
あの時と同じだった。初めて生誕を抜けたとき、凄い達成感を感じたあの感覚だ。生きている実感。
「ここ変なところだな。ウケルわー」
「お疲れ様でした、魔神様。お帰りなさいテレサ」
「ただいま、ヴィヴィアン」
終った、なんか凄い疲れた。取り敢えず一眠りしたいよマジで。
「そういえば、ノヴィ言いたいことがあるんだけど」
「何かな?」
なんだろ、改めて愛の告白かね? 妖精族の人もいるのに。
「私は第一夫人、正妻だよね?」
ニコニコ顔のテレサがいた。すげぇ笑ってるけど、笑えねーよ。
次話は7/14~7/15予定




