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勇者がいないファンタジー世界で俺は……  作者: アルねこ
第2章 魔神覚醒編
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第四十三話 魔神ノーヴィス=レムリアンシード

 全身が炎で焼かれていた、体の内側も燃やしているのか、息すらできない。しかし命は絶えることなく、生き地獄が続く。記憶の何処かにある地獄だった。かつてこの地獄の中に身を投じていた。


 思い出した。


 俺がかつてあの道路の上で、復讐心を宿しながら、身を燃やした時である。あの時と同じ感じであった。体を焦がす激痛に身を捩っても、逃れることはできない。終わることのない痛み。


 もしかしたら、今までのことは全部夢であり、今あの炎獄から再開されたのかもしれない。


 俺は一刻も早く炎獄から抜けたい。手に持っている筈の拳銃で逃れようとしたが、持っていた筈の銃は無い。無くした銃を探すように、手を振り回しガムシャラに探すが見つからない。手には炎獄が纏わりつくのみ。


 無限に続く地獄に絶望する。恐怖する。怖い怖い怖いともがき苦しむ。


「誰か殺してくれ」


 助けを請う。一刻も早くこの無限炎獄から逃れる為、矛盾する言葉を投げる。助けて欲しい、駄目だということは俺が一番よく理解している。だからこそ止めを刺して欲しいと懇願する。救いを求める。楽になりたいと願う。


 炎獄に苦しみ暴れる手を強く強く握りしめる感触が走る。この生き地獄の中、誰かが俺を掴んだ。俺を掴んだその人は俺を苦しみから少しでも和らげる為、強く強く抱きしめてくれる。


 無限に続くと思われたその恐怖の中で、一つだけ消えた感情があった。


「淋しくない」


 誰かが俺から一人である不安を取り除いてくれる。暖かく強く抱きしめてくれる力が、俺に少しだけ力を貸してくれる。







 気付けば不思議と炎獄の苦しみを感じなくなっていた。


「どうなってるんだ?」

「まだ地獄は終ってないよ」


 俺の声で誰かが喋りかける。正直気持ち悪い


「気持ち悪いって失礼だな」

「俺、助かったの?」

「全然、今は休憩中てところ」

「なんでこうなったの?」

「君が最後の選択肢に立たされたから。君風に言うと境界線かな」

「どどどどどーいうことでしょうか?」

「まず君が望むのであれば、そうだな、あの日本に帰ることができるよ。秘術の影響だけど、死ぬ前の状態で日本で蘇ることもできるよ」

「おおおおおお」


「でもね、もう一つの選択肢も聞いて欲しい」

「もう一つ?」

「そそ。君はレティから輪廻転生の話聞いた?」

「聞いたよ。難しくて話半分だけど」

「君は日本で間違いなく死んだ」

「やっぱりそうなんですか」

「そそ、そこで蘇らしてくれたのはレティだね」

「やっぱりあの小さい魔王様なんだ」


「まず聞いて欲しいのはここ。凄く重要なんだ。君はゲームとか漫画が好きな人だったよね?」

「お恥ずかしながら」

「君に分かり易く例えよう。通常魔法で出来る蘇生て、所謂ザオ◯クとかザオ◯ルレベルなの」

「その◯ピーに入るの、リとラだよね!」


「そこはどうでもいいの。それでレティが君を蘇生した秘術はね、セーブデータを復元したんだ」

「えええ??」

「君はね日本で一度死んだ時にセーブデータが壊れてしまって、もう使えなくなったんだ」

「あ、はい」


「本来であれば、暫くほったらかしにて、飽きた頃に新しいセーブデータ作って、それで遊べばいいやーてなるんだけど、そこに君の名前で主人公は作れない。存在できないんだ分かる?」

「わかります。新しいセーブデータは俺じゃないんだよね?」

「OKOKその通り。だけどレティは概念レベル、さっき言ったとおりセーブデータを復元しちゃったんだ」


「レティてもしかして、無茶苦茶凄いの?」

「超凄いよ。本人は自覚してないけど、ゲーム風にいえば、反則存在(チートキャラ)だね」

「おおおおお」

「それでレティが凄いのはこれだけじゃないんだ。セーブデータを復元しました、じゃあ君はどうする?」

「続きで遊ぶ?」

「そそ本来はそれだよ。それ。やりかけのゲームだからちゃんと終わらせたいよね。だけどレティだって、ある目的があってセーブデータ復元したんだ」

「うん」


「今までは君が遊んでいたゲームはね、勇者でモンスターポコポコ倒して、レベル上げて魔王倒す。こういったファンタジーなゲームだったんだよ」

「本来ゲームてそうだよね?」

「そうだね、君の常識(・・)では。だけどレティは魔王なんだよ」

「うん…………」


「レティはね、そんな運命を壊したかったんだ。魔王だって生きてるんだから。生き延びたい。だからセーブデータを復元して、ゲームを捻じ曲げる。勇者ではなく別の役割を演じて欲しいとお願いした」

「うん……」

モンスター(魔族)になって、今度は主人公(勇者)を倒して欲しいとお願いしたんだ。だけどみんなレベル上げるし、勇者を倒すのは難しいよね?」

「そうだね」


「だからファンタジーゲームにはたま~にいる、裏ボスみたいな人を演じてくれるようお願いしたんだ」

「それがもしかして…………」

「そう『魔神』。本来は勇者として遊ぶゲームを買ってきたのに、いきなり魔神になって遊ぶゲームでした。おまけに勇者は糞弱く、つまらないRPGゲームだとしたら、君はどうした?」


「即売るかもしれない……糞ゲーてやつ?」

「いいねクソゲーて呼び方。レティはね、心配だったんだ。君にこのゲームをやって欲しいと渡したんだけど、実はクソゲーを無理やりプレイさせてしまうんじゃないかと。凄く心配してたんだ。ここまでOK?」

「OKよ」


「だからレティは選択肢を用意した。もしこれがクソゲーだったら、売るなり、捨てるなり自由にしていいよという選択肢をあげたんだ。加えてレティが凄いのは更にここから。もしゲームがつまらなかったら、元のゲーム(・・・・・)で遊んでいいよという選択肢も作ったんだ」


「…………」


「今までのは体験版みたいな感じだよ。このゲームで遊ぶには痛いこと、辛いこと、悲しいこと沢山あるから。よく考えて遊んでみてね? みたいなそういった意味があったんだ。だから君は『魔人』と認識していた。人と魔族の中間的存在にいたんだ」


「レティは生誕の秘術にアレンジを加えただけ、みたいな感覚でいるけど全然レベルが違う。秘術中の秘術。奇跡を発動させた。君がもし帰りたいなら、帰れるようにと選択肢を用意したんだ」


「ボクというセーフティーゾーンを用意したんだよ」


「君がいきなり魔神で復活しても耐えられなくて、直ぐに壊れてしまう可能性があったから、まずは少しずつ慣れてもらうようにと、君という魂に、魔神属性(ボク)がすこ~しずつ混ざるようにしてくれたんだ」


「君がもうダメだーとか。もう痛いから帰りたーいて思ったら、帰れるシステムだったんだよ」


「レティてマジで凄かったんだな」


「そうだねレティは唯一無二の最強の天才だよ。でもね天才でも運命に抗えなかったから、お願いしたんだ。神様に。どうか私達を助けて下さいて、お願いしたんだ」


「レティは凄く優しい子だから、勝手に神様呼ぶだけじゃなくて。流石に無理そうなら帰ってもいいですよ、て前もってちゃんと帰りの車も用意してたんだ」


「知ってるよ。レティが優しいことぐらい、痛いぐらい知ってるよ」


「だからね、これが本当に最後の選択肢。どっちに帰るかだよ。今なら日本に帰る車もある」


「だけど、もしさっきまでいた出鱈目設定(ファンタジー)の世界なら、君は歩いて帰らないといけない。地面が真っ赤に焼け、茨の道、毒だろうと、歩いて帰らないといけない。凄く大変な道程だよ」



「どうする?」



「俺はレティや優しくしてくれた皆を助けてあげたい」


「君ならそう決めてくれると信じていたよ。後から言うと申し訳ないんだけど、ボクからもお願いしたいんだけどいいかな?」


「OKOK。最近までの俺はちょっと器小さかったけど、大きい器の男になるから。今なら何でも聞くよ」


「ハハ、その調子だよ。僕達の最初に友達になってくれた、ウー、フィー、ナーという妖精達がいるんだけど、その子達のお願いを聞いてあげて欲しいんだ」

「そうなんだ、俺達の最初の友達なら助けてあげないとな」


「ありがと。あとついでに」

「え、まだあるの?」

「なんだよ~さっき大きい器の男になるて言ったじゃん」

「OKOKなんでも聞いちゃうよ」


「そうそう、そうこなくっちゃ。僕達に最初に名前をくれたテレサのことを助けてあげてほしい」

「俺達の名前てテレサがくれたの?」

「そうだよ。実はレティの秘術て最初失敗していたんだけど、そのときにテレサが助けてくれたんだよ」

「おれ初耳だけど」


「まぁ、今言ったしね。テレサにとって名前を付けるということは、本当にすごーく大変なことなんだ」

「うん」

「なんかあまり信じてないな……、そうだなファーストキスくれたとか、処女をくれたとかなら分かる?」

「マジデ?」

「マジダヨ」


「じゃあ何あのお嬢さん。正真正銘、俺のことを最初に好きになってくれた人だったの?」

「そそ。日本にいた君は一夫多妻とか言語道断かもしれないけど、もう君の常識は壊れてるよね?」

「まっ、まぁ……」


「だからテレサのこともちゃんと考えてあげて」

「俺どうしよう、結構酷い扱いというか、酷いこと言ってた気がするわ」

「テレサも優しい子だから大丈夫……だと思うよ?」

「なんでそこだけ自信なさげなんだよ!?」


「テレサついでの話なんだけど、今テレサは凄い命懸けで僕達守ってくれてるの」

「は?────え?もしかしてさっき誰かが俺を抱いてくれたのて、もしかしてテレサだったりするの?」

「そうだよ。彼女凄い一途だからね。君が散々苦しーとか、痛いーとか、泣いてた【黒き力】を僕達と一緒に受けてくれてるんだ」


「すぐ助けに行かないと…………思ったけど、こんなヤバイ力どうするのさ?」

「そうだね。外の人達が頑張ってくれて、なんとかあの黒い短剣は抜いてくれたみたい」

「あーアレねマジでやばかったわ。というか、もしかして散々俺に注意してたのて、お前だったりするの?」

「そうだよ」


「そうだったんだ。で、この【黒き力】だっけ、どうしたらいい?」

「とりあえず浄化するしかないだろうね」

「浄化?」

「そそ。この【黒き力】というのは普通の人には処分できないの。勿論妖精族も無理。できるとしたらテレサ達の夢魔族だけだね」


「おおう。じゃあテレサ頼み?」

「君、男の癖に、か弱い女の人に頼るの?」

「わっ、悪い? だって俺、力も魔法も何も無いんだよ?」

「君はこれからボクと一つになるから、魔力が使えるようになるよ」

「マジでー!!??、なんか出来そうな気がしてきたわ」


「そうそうその調子、一応僕ら魔神だから。この精神世界(アストラルワールド)じゃほぼ最強存在だよ」


「覚醒キター」


「じゃあ俺の魔力をテレサに連結するという方向でいいのかな?」

「発想はイイネ。でもテレサ達に直接魔力はあげたら駄目なんだ。下手すると殺しちゃう」

「うそーん」


「だけどね、実は僕達一つ秘術が使えるようになっているんだ」

「教えて下さい」


「テレサが名前をくれた時にね、魂の欠片もくれたんだよ。で、そのテレサと同じ系統の秘術が使えるてわけ」

「じゃあ浄化が使えるの?」

「ん~一応正解。だけどね実は問題あるの」

「聞きましょう」


「以前この規模のヤバ~イトラブルがあって、浄化を使う夢魔族が頑張ってくれたのだけど、結局全部浄化できなかったの」

「その時どうしたの?」


「龍神が喰った」

「詳しく教えて」


「ごめんね。ボクも実は詳しくは知らないんだ。テレサの魂の記憶からちょっと読み取っただけなんだ」

「それはしょうが無いな。どちらにしても喰うとか俺には無理そう」

「だよねー。だからその浄化をそのまま使うのはNGなの、ここまでOK?」

「OKよ。となるとどうする?」


「実はね、浄化の力は【魂の洗濯】という別の秘術化してるの。変えたのはテレサ」

「ほう。テレサも凄いのね。ただのえっちなお姉さんと思ってた」

「テレサ達も凄い苦労してたの。サキュバスはデマと先入観のせいで、男共に腰振る尻軽みたいなイメージを持たれてるの」

「スミマセン…………」


「だから今後はもっと優しくしてあげてね。話は戻るんだけど、秘術なんてぶっちゃけ変えることができるのさ」

「どうやって?」


「イメージしろ」


「おう。急に厨二病っぽくなってきたな…………某アニメみたいだ」


「普通の魔法と違って、秘術なんてオリジナル魔法だからねぇ。要は概念とか理屈とかすっ飛ばして、強烈で明確なイメージを叩き込むの」


「おう、なんか出来そうな気がするわ。そーいうの得意よ」

「そうそう創造力が重要なの。実は君が選ばれた一つの要素だったりするのよ」


「そうか。でもどうしようねこの【黒き力】てやつ。俺も散々浴びてたけどヤバイよ」

「そうだね。今回が最後のアドバイスになるけど、今いるのは精神世界(アストラルワールド)なの。時間が勿体無いから、帰った時に聞いてね」

「おーけー」


精神世界(アストラルワールド)ではとにかくイメージする力が影響力になるの」

「うんうん」

「だから相手のことを超つえーと思えば、敵の攻撃が凄く痛く、敵に攻撃が全然効かなくなるの」

「ふむふむ」


「だから、【黒き力】を カ とでも思っちゃえばいいんだよ」

「力?」

「力じゃないよ。【か】、んーと漢字だとこう【蚊】」

「おおおううううう」

「この黒き力は君で言うと【蚊】が丁度いいの。君の血を吸って、成長して、子を増やしていくの」

「うん。でも【蚊】だと全然弱いよ?」

「例えば【蚊】でも、ものすご~く大量に増えたり、変異種が現れたらどう思う?」

「あぁああ。なんか凄いヤバイイメージ持てるわ。アナフィラキシーショックとかヤバイ病気とか、なんかわかるわー。お前の説明マジ凄いわ」


「まぁ、散々君の魂見て、外殻から勉強したからね。もし今後、困ったらヴィヴィアンに尋ねるといいよ」

「妖精族のお姉さん?」

「そそ、あのお姉さんも凄く苦労してるから、助けてあげてね」

「OKOK全部任せていいよ。今の話聞いたら、もう何でも来いよて感じ」


「もし【蚊】に刺されても、痒いけど我慢して。下手に掻いちゃうと、そこから痒みが広がっちゃうんだ」

「あー確かにあれはそうだわ。マジ凄いわ、そのイメージ変換力。俺もどんどん変換していくわ」


「うんうん。そろそろ時間だから行こうか」

「ごめんちょっと待って、最後に言いたいことある」

「なんだい?改まって」

「今までずっと勇気くれてサンキュー」

「うん。でもお互い様だよ。ボクも君に【希望の光】を貰ったからね。本当いうと生誕(ダンジョン)での出来事は全く予想外だった。本当は魔族を屈服させるとか、そんな勝ち方しかボクはイメージが持てなかった」


「俺もそんな感じじゃね?」


「全然違うよ。最後はちゃんと和解してた。君が最後に垣根を取り払ったんだ。アレはね魔神の力でも何でもない。紛れも無く君の力だよ。だからボクは君に全てを頼めると確信した」

「そっか」

「うん。だから自信持って頑張って」


「ありがとう。一つになると、お前の意識て消えちゃうの?」

「消えるわけじゃないよ。一つになるの。アレだよイイ例がある。◯メック星人の融合」

「あー、うん。最後の最後で、わかりやすい例え方ありがとう。お前◯イルさん役か」

「ハハハハそうそう。ごめん言い忘れてた。結構魔力がギリギリだから、気絶するぐらい全力でぶっ放してね」

「おう。まじかよ」

「大丈夫大丈夫。君なら余裕だよ…………」




 こうして俺達は一つになる。【黒き力】を払う為、俺達を守ってくれているテレサを助ける為。


 先程の【黒き力】の中心に顕現する。魔神の魂と一つになったことにより、テレサから貰った名前を思い出す。




「我が名は魔神ノーヴィス=レムリアンシード!!」




 通称ノヴィだよ?

次回はちと魔神無双になるかも……。一応魔神さんがつおいのは、まだ精神世界だけなんであしからず。



軽く見たら文章量がいつもの1.5倍~2倍ぐらいありました。長文になりすみませんでした

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