第四十三話 魔神ノーヴィス=レムリアンシード
全身が炎で焼かれていた、体の内側も燃やしているのか、息すらできない。しかし命は絶えることなく、生き地獄が続く。記憶の何処かにある地獄だった。かつてこの地獄の中に身を投じていた。
思い出した。
俺がかつてあの道路の上で、復讐心を宿しながら、身を燃やした時である。あの時と同じ感じであった。体を焦がす激痛に身を捩っても、逃れることはできない。終わることのない痛み。
もしかしたら、今までのことは全部夢であり、今あの炎獄から再開されたのかもしれない。
俺は一刻も早く炎獄から抜けたい。手に持っている筈の拳銃で逃れようとしたが、持っていた筈の銃は無い。無くした銃を探すように、手を振り回しガムシャラに探すが見つからない。手には炎獄が纏わりつくのみ。
無限に続く地獄に絶望する。恐怖する。怖い怖い怖いともがき苦しむ。
「誰か殺してくれ」
助けを請う。一刻も早くこの無限炎獄から逃れる為、矛盾する言葉を投げる。助けて欲しい、駄目だということは俺が一番よく理解している。だからこそ止めを刺して欲しいと懇願する。救いを求める。楽になりたいと願う。
炎獄に苦しみ暴れる手を強く強く握りしめる感触が走る。この生き地獄の中、誰かが俺を掴んだ。俺を掴んだその人は俺を苦しみから少しでも和らげる為、強く強く抱きしめてくれる。
無限に続くと思われたその恐怖の中で、一つだけ消えた感情があった。
「淋しくない」
誰かが俺から一人である不安を取り除いてくれる。暖かく強く抱きしめてくれる力が、俺に少しだけ力を貸してくれる。
気付けば不思議と炎獄の苦しみを感じなくなっていた。
「どうなってるんだ?」
「まだ地獄は終ってないよ」
俺の声で誰かが喋りかける。正直気持ち悪い
「気持ち悪いって失礼だな」
「俺、助かったの?」
「全然、今は休憩中てところ」
「なんでこうなったの?」
「君が最後の選択肢に立たされたから。君風に言うと境界線かな」
「どどどどどーいうことでしょうか?」
「まず君が望むのであれば、そうだな、あの日本に帰ることができるよ。秘術の影響だけど、死ぬ前の状態で日本で蘇ることもできるよ」
「おおおおおお」
「でもね、もう一つの選択肢も聞いて欲しい」
「もう一つ?」
「そそ。君はレティから輪廻転生の話聞いた?」
「聞いたよ。難しくて話半分だけど」
「君は日本で間違いなく死んだ」
「やっぱりそうなんですか」
「そそ、そこで蘇らしてくれたのはレティだね」
「やっぱりあの小さい魔王様なんだ」
「まず聞いて欲しいのはここ。凄く重要なんだ。君はゲームとか漫画が好きな人だったよね?」
「お恥ずかしながら」
「君に分かり易く例えよう。通常魔法で出来る蘇生て、所謂ザオ◯クとかザオ◯ルレベルなの」
「その◯ピーに入るの、リとラだよね!」
「そこはどうでもいいの。それでレティが君を蘇生した秘術はね、セーブデータを復元したんだ」
「えええ??」
「君はね日本で一度死んだ時にセーブデータが壊れてしまって、もう使えなくなったんだ」
「あ、はい」
「本来であれば、暫くほったらかしにて、飽きた頃に新しいセーブデータ作って、それで遊べばいいやーてなるんだけど、そこに君の名前で主人公は作れない。存在できないんだ分かる?」
「わかります。新しいセーブデータは俺じゃないんだよね?」
「OKOKその通り。だけどレティは概念レベル、さっき言ったとおりセーブデータを復元しちゃったんだ」
「レティてもしかして、無茶苦茶凄いの?」
「超凄いよ。本人は自覚してないけど、ゲーム風にいえば、反則存在だね」
「おおおおお」
「それでレティが凄いのはこれだけじゃないんだ。セーブデータを復元しました、じゃあ君はどうする?」
「続きで遊ぶ?」
「そそ本来はそれだよ。それ。やりかけのゲームだからちゃんと終わらせたいよね。だけどレティだって、ある目的があってセーブデータ復元したんだ」
「うん」
「今までは君が遊んでいたゲームはね、勇者でモンスターポコポコ倒して、レベル上げて魔王倒す。こういったファンタジーなゲームだったんだよ」
「本来ゲームてそうだよね?」
「そうだね、君の常識では。だけどレティは魔王なんだよ」
「うん…………」
「レティはね、そんな運命を壊したかったんだ。魔王だって生きてるんだから。生き延びたい。だからセーブデータを復元して、ゲームを捻じ曲げる。勇者ではなく別の役割を演じて欲しいとお願いした」
「うん……」
「モンスターになって、今度は主人公を倒して欲しいとお願いしたんだ。だけどみんなレベル上げるし、勇者を倒すのは難しいよね?」
「そうだね」
「だからファンタジーゲームにはたま~にいる、裏ボスみたいな人を演じてくれるようお願いしたんだ」
「それがもしかして…………」
「そう『魔神』。本来は勇者として遊ぶゲームを買ってきたのに、いきなり魔神になって遊ぶゲームでした。おまけに勇者は糞弱く、つまらないRPGゲームだとしたら、君はどうした?」
「即売るかもしれない……糞ゲーてやつ?」
「いいねクソゲーて呼び方。レティはね、心配だったんだ。君にこのゲームをやって欲しいと渡したんだけど、実はクソゲーを無理やりプレイさせてしまうんじゃないかと。凄く心配してたんだ。ここまでOK?」
「OKよ」
「だからレティは選択肢を用意した。もしこれがクソゲーだったら、売るなり、捨てるなり自由にしていいよという選択肢をあげたんだ。加えてレティが凄いのは更にここから。もしゲームがつまらなかったら、元のゲームで遊んでいいよという選択肢も作ったんだ」
「…………」
「今までのは体験版みたいな感じだよ。このゲームで遊ぶには痛いこと、辛いこと、悲しいこと沢山あるから。よく考えて遊んでみてね? みたいなそういった意味があったんだ。だから君は『魔人』と認識していた。人と魔族の中間的存在にいたんだ」
「レティは生誕の秘術にアレンジを加えただけ、みたいな感覚でいるけど全然レベルが違う。秘術中の秘術。奇跡を発動させた。君がもし帰りたいなら、帰れるようにと選択肢を用意したんだ」
「ボクというセーフティーゾーンを用意したんだよ」
「君がいきなり魔神で復活しても耐えられなくて、直ぐに壊れてしまう可能性があったから、まずは少しずつ慣れてもらうようにと、君という魂に、魔神属性がすこ~しずつ混ざるようにしてくれたんだ」
「君がもうダメだーとか。もう痛いから帰りたーいて思ったら、帰れるシステムだったんだよ」
「レティてマジで凄かったんだな」
「そうだねレティは唯一無二の最強の天才だよ。でもね天才でも運命に抗えなかったから、お願いしたんだ。神様に。どうか私達を助けて下さいて、お願いしたんだ」
「レティは凄く優しい子だから、勝手に神様呼ぶだけじゃなくて。流石に無理そうなら帰ってもいいですよ、て前もってちゃんと帰りの車も用意してたんだ」
「知ってるよ。レティが優しいことぐらい、痛いぐらい知ってるよ」
「だからね、これが本当に最後の選択肢。どっちに帰るかだよ。今なら日本に帰る車もある」
「だけど、もしさっきまでいた出鱈目設定の世界なら、君は歩いて帰らないといけない。地面が真っ赤に焼け、茨の道、毒だろうと、歩いて帰らないといけない。凄く大変な道程だよ」
「どうする?」
「俺はレティや優しくしてくれた皆を助けてあげたい」
「君ならそう決めてくれると信じていたよ。後から言うと申し訳ないんだけど、ボクからもお願いしたいんだけどいいかな?」
「OKOK。最近までの俺はちょっと器小さかったけど、大きい器の男になるから。今なら何でも聞くよ」
「ハハ、その調子だよ。僕達の最初に友達になってくれた、ウー、フィー、ナーという妖精達がいるんだけど、その子達のお願いを聞いてあげて欲しいんだ」
「そうなんだ、俺達の最初の友達なら助けてあげないとな」
「ありがと。あとついでに」
「え、まだあるの?」
「なんだよ~さっき大きい器の男になるて言ったじゃん」
「OKOKなんでも聞いちゃうよ」
「そうそう、そうこなくっちゃ。僕達に最初に名前をくれたテレサのことを助けてあげてほしい」
「俺達の名前てテレサがくれたの?」
「そうだよ。実はレティの秘術て最初失敗していたんだけど、そのときにテレサが助けてくれたんだよ」
「おれ初耳だけど」
「まぁ、今言ったしね。テレサにとって名前を付けるということは、本当にすごーく大変なことなんだ」
「うん」
「なんかあまり信じてないな……、そうだなファーストキスくれたとか、処女をくれたとかなら分かる?」
「マジデ?」
「マジダヨ」
「じゃあ何あのお嬢さん。正真正銘、俺のことを最初に好きになってくれた人だったの?」
「そそ。日本にいた君は一夫多妻とか言語道断かもしれないけど、もう君の常識は壊れてるよね?」
「まっ、まぁ……」
「だからテレサのこともちゃんと考えてあげて」
「俺どうしよう、結構酷い扱いというか、酷いこと言ってた気がするわ」
「テレサも優しい子だから大丈夫……だと思うよ?」
「なんでそこだけ自信なさげなんだよ!?」
「テレサついでの話なんだけど、今テレサは凄い命懸けで僕達守ってくれてるの」
「は?────え?もしかしてさっき誰かが俺を抱いてくれたのて、もしかしてテレサだったりするの?」
「そうだよ。彼女凄い一途だからね。君が散々苦しーとか、痛いーとか、泣いてた【黒き力】を僕達と一緒に受けてくれてるんだ」
「すぐ助けに行かないと…………思ったけど、こんなヤバイ力どうするのさ?」
「そうだね。外の人達が頑張ってくれて、なんとかあの黒い短剣は抜いてくれたみたい」
「あーアレねマジでやばかったわ。というか、もしかして散々俺に注意してたのて、お前だったりするの?」
「そうだよ」
「そうだったんだ。で、この【黒き力】だっけ、どうしたらいい?」
「とりあえず浄化するしかないだろうね」
「浄化?」
「そそ。この【黒き力】というのは普通の人には処分できないの。勿論妖精族も無理。できるとしたらテレサ達の夢魔族だけだね」
「おおう。じゃあテレサ頼み?」
「君、男の癖に、か弱い女の人に頼るの?」
「わっ、悪い? だって俺、力も魔法も何も無いんだよ?」
「君はこれからボクと一つになるから、魔力が使えるようになるよ」
「マジでー!!??、なんか出来そうな気がしてきたわ」
「そうそうその調子、一応僕ら魔神だから。この精神世界じゃほぼ最強存在だよ」
「覚醒キター」
「じゃあ俺の魔力をテレサに連結するという方向でいいのかな?」
「発想はイイネ。でもテレサ達に直接魔力はあげたら駄目なんだ。下手すると殺しちゃう」
「うそーん」
「だけどね、実は僕達一つ秘術が使えるようになっているんだ」
「教えて下さい」
「テレサが名前をくれた時にね、魂の欠片もくれたんだよ。で、そのテレサと同じ系統の秘術が使えるてわけ」
「じゃあ浄化が使えるの?」
「ん~一応正解。だけどね実は問題あるの」
「聞きましょう」
「以前この規模のヤバ~イトラブルがあって、浄化を使う夢魔族が頑張ってくれたのだけど、結局全部浄化できなかったの」
「その時どうしたの?」
「龍神が喰った」
「詳しく教えて」
「ごめんね。ボクも実は詳しくは知らないんだ。テレサの魂の記憶からちょっと読み取っただけなんだ」
「それはしょうが無いな。どちらにしても喰うとか俺には無理そう」
「だよねー。だからその浄化をそのまま使うのはNGなの、ここまでOK?」
「OKよ。となるとどうする?」
「実はね、浄化の力は【魂の洗濯】という別の秘術化してるの。変えたのはテレサ」
「ほう。テレサも凄いのね。ただのえっちなお姉さんと思ってた」
「テレサ達も凄い苦労してたの。サキュバスはデマと先入観のせいで、男共に腰振る尻軽みたいなイメージを持たれてるの」
「スミマセン…………」
「だから今後はもっと優しくしてあげてね。話は戻るんだけど、秘術なんてぶっちゃけ変えることができるのさ」
「どうやって?」
「イメージしろ」
「おう。急に厨二病っぽくなってきたな…………某アニメみたいだ」
「普通の魔法と違って、秘術なんてオリジナル魔法だからねぇ。要は概念とか理屈とかすっ飛ばして、強烈で明確なイメージを叩き込むの」
「おう、なんか出来そうな気がするわ。そーいうの得意よ」
「そうそう創造力が重要なの。実は君が選ばれた一つの要素だったりするのよ」
「そうか。でもどうしようねこの【黒き力】てやつ。俺も散々浴びてたけどヤバイよ」
「そうだね。今回が最後のアドバイスになるけど、今いるのは精神世界なの。時間が勿体無いから、帰った時に聞いてね」
「おーけー」
「精神世界ではとにかくイメージする力が影響力になるの」
「うんうん」
「だから相手のことを超つえーと思えば、敵の攻撃が凄く痛く、敵に攻撃が全然効かなくなるの」
「ふむふむ」
「だから、【黒き力】を カ とでも思っちゃえばいいんだよ」
「力?」
「力じゃないよ。【か】、んーと漢字だとこう【蚊】」
「おおおううううう」
「この黒き力は君で言うと【蚊】が丁度いいの。君の血を吸って、成長して、子を増やしていくの」
「うん。でも【蚊】だと全然弱いよ?」
「例えば【蚊】でも、ものすご~く大量に増えたり、変異種が現れたらどう思う?」
「あぁああ。なんか凄いヤバイイメージ持てるわ。アナフィラキシーショックとかヤバイ病気とか、なんかわかるわー。お前の説明マジ凄いわ」
「まぁ、散々君の魂見て、外殻から勉強したからね。もし今後、困ったらヴィヴィアンに尋ねるといいよ」
「妖精族のお姉さん?」
「そそ、あのお姉さんも凄く苦労してるから、助けてあげてね」
「OKOK全部任せていいよ。今の話聞いたら、もう何でも来いよて感じ」
「もし【蚊】に刺されても、痒いけど我慢して。下手に掻いちゃうと、そこから痒みが広がっちゃうんだ」
「あー確かにあれはそうだわ。マジ凄いわ、そのイメージ変換力。俺もどんどん変換していくわ」
「うんうん。そろそろ時間だから行こうか」
「ごめんちょっと待って、最後に言いたいことある」
「なんだい?改まって」
「今までずっと勇気くれてサンキュー」
「うん。でもお互い様だよ。ボクも君に【希望の光】を貰ったからね。本当いうと生誕での出来事は全く予想外だった。本当は魔族を屈服させるとか、そんな勝ち方しかボクはイメージが持てなかった」
「俺もそんな感じじゃね?」
「全然違うよ。最後はちゃんと和解してた。君が最後に垣根を取り払ったんだ。アレはね魔神の力でも何でもない。紛れも無く君の力だよ。だからボクは君に全てを頼めると確信した」
「そっか」
「うん。だから自信持って頑張って」
「ありがとう。一つになると、お前の意識て消えちゃうの?」
「消えるわけじゃないよ。一つになるの。アレだよイイ例がある。◯メック星人の融合」
「あー、うん。最後の最後で、わかりやすい例え方ありがとう。お前◯イルさん役か」
「ハハハハそうそう。ごめん言い忘れてた。結構魔力がギリギリだから、気絶するぐらい全力でぶっ放してね」
「おう。まじかよ」
「大丈夫大丈夫。君なら余裕だよ…………」
こうして俺達は一つになる。【黒き力】を払う為、俺達を守ってくれているテレサを助ける為。
先程の【黒き力】の中心に顕現する。魔神の魂と一つになったことにより、テレサから貰った名前を思い出す。
「我が名は魔神ノーヴィス=レムリアンシード!!」
通称ノヴィだよ?
次回はちと魔神無双になるかも……。一応魔神さんがつおいのは、まだ精神世界だけなんであしからず。
軽く見たら文章量がいつもの1.5倍~2倍ぐらいありました。長文になりすみませんでした




