第三十五話 妖精族最大の秘密
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ふんわりとした甘い風が通り、俺の前にはお姫様て感じの御方が降臨なされていた。
「こうしてお会いするのは初めてですね、レアゥリティ=ロードナイト。湖の姫、ヴィヴィアンと申します。妖精族の管理者を務めています」
「良い、ある程度はテレサから聞いておる。何やら妾と直接話したいことがあり、妙に周りクドイ謀をしたそうじゃな。そこの馬鹿な妖精が随分とやらかしてくれたそうじゃないか」
「そこまでご存知でらっしゃるのですね。その件についてはテレサにも申しましたが、こちらの不徳の致すところでございます」
おうなんだ、セレクティア。こいつ魔王様達に喧嘩売ったのか。見かけによらず、豪気なやつかもしれない。
それはそうと、泉の姫ヴィヴィアン……はて、何処かで聞いた名前な気がする。しかしハッキリと思い出すことができない。頭の何処かにその名前が残っているのだが、関連情報が上手く見つからないのである。
「まず魔王ロードナイト。貴方は何処までダンジョンの運営について知っていますか?」
「ダンジョンは人を狩る場所に決まっておろうが。何を訳の分からんことを言うておる」
運営てなんだ。ゲームじゃあるまいし……。傍から聞いている限りでは、魔王様の台詞の方に肩入れしてしまう。
「テレサとの約束もある為、私が知りうる物語から語りましょう。私達妖精族がこの世界に呼ばれた最大の理由は、魔王が住むダンジョンができたからなのです」
「なんじゃと?」
「当初、我々はこの世界とは別次元の世界に住んでおりました。我々がまだ来る前、魔王達と勇者は熾烈な争いをしており、勇者はそんな魔王達の未来を憂いていたようです」
おいいい。やっぱりいるじゃねーか勇者。ココに来て結構重要な単語が出てきたよ。
「当時の勇者は魔王達に対し、絶大な力を誇っていたようです。ですが勇者は魔王を滅ぼすこと無く、あることを提案したそうです。それがダンジョン運営」
「…………」
魔王ことレティは話を挟むことなく、ジッとその話を聞いている。
「勇者は魔族、人族、獣族等の他種族同士の争いを無くす為、各種族の分断を決意なされたようです。まず勇者は一番有利に立てる魔族を交渉のテーブルにつかせ、ダンジョン運営を任せたようです。結果、魔族は他の種族との争いを避け、ダンジョンと呼ばれる新たな住処に移りました」
「しかし、ダンジョンはその構造、性質上魔力を必要としております。おそらくこれについては、魔族のほうがよくご存知であるかと。ダンジョンの魔力供給問題。これを解決する為、当時の勇者が私達妖精族に相談を持ち掛け、別次元からこちらの世界に呼ばれたことが歴史の始まり」
「ダンジョンに魔力を供給するにはどうすれば。単純に魔力を持った者、種族を誘い込む。この魔力を持つ者達が後々『冒険者』と呼ばれるようになります。勇者は我々妖精族に冒険者ギルド運営を託し、我々妖精族は、糧となる魔力持ちの選定を始めることが一番最初の仕事となります」
魔力が必要な最大の理由て、まるで蜂と蜜みたいなものじゃないか……。
「そして冒険者にはその魔力を介して、我々の妖精を扱えるように致しました。現在案内妖精と呼ばれているものがそうです。案内妖精は魔力持ちをダンジョンに導くため用意致しました」
「そしてダンジョンに導かれた冒険者達は死なないように戦闘を、魔力を消耗させます。魔力が無くなれば、ダンジョン内では活動できない為、冒険者が逃げる。『魔族やダンジョンは逃げ出す冒険者を追わない』これがルールであり、ダンジョンの理」
なんとなくダンジョンの構造が、逃げやすいなぁと思えたのは間違いじゃなかったのか。しかもその理由がこんな秘密を抱えていたなんて。
「他のダンジョンではこのルールを基本的に守って頂いております。勿論過激な冒険者や御するには厳しい場合もある為、生殺は厳しく問うことはありませんでした」
「しかしこの生誕のある事件をキッカケに、生誕内で大虐殺が日頃から行われるようになりました。当時その異常な事態を解決をするべく、ファルファシオンを含めた近隣のギルドより、上位冒険者が大多数集まり、これの収拾に尽力致しました。これはレアゥリティ=ロードナイトもご存知の通りかと」
「妾も当時その戦争には参加しておった。寝る間もなく人族、獣族が攻めて来ておったからな。妾も何人殺したか覚えておらんわ。ダンジョン内で行われる戦争はそれは酷いもんであったわ。ダンジョンの何処に行っても血肉が腐る臭いがしておった」
「はい。あの当時の異常事態を収拾することが難しいと判断した妖精族はある決断を致しました。それが生誕ダンジョンへの侵入禁止令。案内妖精には生誕ダンジョンへ向かわせないように、各ギルド長が調整致しました」
「そうか……、お前が冒険者共を塞き止めておったか」
レティの怒りに混じった声が静かに響く。
「この前の冒険者共は手土産か何か?」
「いえ、あの件についてはこちらの失態で起きた問題です。このダンジョンから最も近いファルファシオンの冒険者ギルドに問題が発生、最終的にそのギルドから人族が流れてしまったという顛末です」
「まぁ良い。久々の供物で皆喜んでおったわ」
「魔王レアゥリティ=ロードナイト貴方に相談事がございます」
「妾に交渉事とは随分と偉そうじゃの」
レティが結構キレてる気がする。レティは普段無邪気な話し方をしており、相手を本格的に威圧する話し方は見たことが無い。となれば、かなり怒っていると見ていいかもしれない。
「以前と同じようにダンジョンを動かして頂けないでしょうか? 私共はこれまでの生殺については是非を問いません。ただ逃げる冒険者を見逃して頂ければ、私達妖精族も生誕に冒険者を誘導するよう致します」
「それで妾を脅しているつもりか?」
これは政治的取引だ。俺には胸糞悪い交渉にしか見えない。魔族の怒りを買って当たり前だ。仮にも魔族は一番最初戦争を止める為に、地下へ住むことを決意してくれた種族なのである。それをまた餌をやるから、ダンジョンに篭っていろと言っているのである。
妖精族はそこまで頭が悪いようには見えないが、自分達が魔族よりも数段優れている種族とでも思っているのだろうか。
「聞いて呆れるわ。お前達冒険者共が犯したあの日の出来事を、妾が許すとでも思っておるのか?」
レティの怒りが周りにどんどん伝染している。普段温厚なルーカスもかなり怒っているようだ。
「それに妾が気づいておらぬとでも思っておったか。我ら魔族や魔物は魔素の無い場所でしか生きられない、そんなデマを信じているとでも思っておったか? のう噂好きの妖精族よ」
おい、どーいうことですか? 魔族は知らんが、魔物は魔素がない場所でしか活動できないとか、先日レクチャーを受けたばかりなのですが。
「お主、ロードナイト一族を舐めすぎておるな。我々魔族、魔物が外で歩けることぐらい、とうの昔に気づいておるわ。妾達の温情で、魔物をダンジョン内に閉じ込めておることを知らぬとは言わさぬぞ」
まじかよ……アレ、もしかして、かつて勇者がいた時代の戦争が再開されるとかそんなフラグじゃね?んん?
なんか考えれば考える程、今聞いた事実が相当マズイ状況であると危険信号を照らす。もし今魔族が暴れだしたら、それを止めていたかつての勇者がいないのである。魔族と人族の戦争が始まると、獣族がまた戦闘に駆り出されるわけであって……。
なんか半獣のファンレにとって、凄くマズイ状況な気がしてきた。俺はどうでもいいや的な甘い考えでいたが、思っている以上に影響しそうな問題であることに気づいてしまったのである。
凄く大事な問題なのに、なんでこの妖精のお姫さんは脅すような交渉してるんだ。馬鹿なの?アホなの?レティはすげぇ考える頭の良い魔王様なんだから、真摯に対応すべきなのである。
チラッとSランクのリリアンを見ると、明らかに初耳のようである。結構青ざめている顔を見る限り、相当マズイ状況なのであろう。あんだけ自信満々に魔物は普通の場所に沸かないて言ってたからな。多分この世界の常識なんだろう。仮にもし普通のフィールドで魔物が沸けば、直ぐに街にも被害が出るであろうと簡単に予想がつく。
んーどうしようこれ。ファンレの為になんとかしてあげたいけど、俺になんとかできる範疇を越えてるよ絶対。どうしよう本気でこの険悪なムードをどうにかしたいけど、切り出しや糸口が見つからないでいた。
引き続き7/12にアップ予定。頑張って日曜の間に仕上げたいと思います。
ヴィヴィアンが喋り箇所がどうしても多くなってしまった為、適宜改行を入れたつもりです。気になるようであればご指摘下さい。




