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勇者がいないファンタジー世界で俺は……  作者: アルねこ
第1章 生誕編
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第二十八話 ノヴィのピンチ?

 リリアンがファルファシオンに到着すると、真っ先に冒険者ギルドへと向う。ギルドに向かっている途中、ノヴィという男を知らないかと二回も聞かれた。仕事熱心なのは構わないが、連携がまともに取れていないのである。


「ここの冒険者は馬鹿なのかしら?」

「ファルファシオンなんて辺境、あまり大したクエストも回って無さそうだしね」


 呆れるリリアンがギルドの戸口を開け中に入る。中に入ると荒くれの男共が一斉にこっちを見る。リリアンがギルド内にいる冒険者を一瞥(いちべつ)するも、Bランクすら居ないと直ぐに分かる。勿論出払っている可能性があるが、緊急事態と思われる状況に上位ランクが冒険者ギルドに不在ということは、根底的に質が悪いということに繋がる。


(こんな感じだとここの質が知れるわね。それにしても思っていたより、人が少ないわね)


「ギルド長はいるかしら?」

「ギルド長は取込み中です。失礼ですがどちら様でしょうか?」


 薄い外套(がいとう)を被ったまま、受付の若い女に確認する。


「湖の姫の遣いが参ったと伝えて下さい」

「少々お待ちを」

「面倒ね。さっさと案内しなさい!」


 S級妖精であるセレクティアが外套中より飛び出し。受付嬢を叱りつける


「え、Sランク妖精!?」


 受付嬢はそのまま脅されるようにギルド長室まで問答無用で案内させられ、ギルド室長の扉を叩く。


「……はぃ、どうぞ」


 覇気の無い声が扉の向こうより聞こえる。


「フラン様、お客様で御座います。私はこれで──」


 受付嬢は案内を終えると直ぐにその場を立ち去る。これから何が起きるかを、見たく、聞きたくないのである。


「初めまして、Sランクのリリアン=バレットベクトールと申します。ヴィヴィアン様の命にて参りました」

「私はセレクティアよ!」

「ヴィヴぃヴぃヴぃヴぃヴぃヴィアン様のつかひっ!?」


 もう終わりだーという様子でフランから生気が抜けていく。仮にもギルド長を務めている妖精族とは思えないやつれ方である。


「ノヴィという男は見つかってないのですか?」

「リリ、この女何か隠してるよ。ヴィヴィアン様に何か顔向け出来ないことしてるー」

「まずは状況から話して見て下さい」

「…………実は」


 聞けば聞くほど頭が痛い状況である。目的の人物があろうことか、ここに一度やって来ているにも関わらず、そのまま追い出しているらしい。おまけにギルド運営にトラブルが発生しており、生誕ダンジョンに飲み込まれてしまった冒険者が大多数発生しているとか。無能としか言いようがない体たらくである。


「ティアどうする? ヴィヴィアン様に報告したほうがいい気がするけど」

「ひぃいい~」

「ちょっと抱きつかないでよー。ヴィヴィアン様への報告は後にしましょう。先に目的の人物探してみないと、報告が二度手間になって機嫌損ねてしまうから」

「りょーかい。ギルド長さん、まずはノヴィという男の資料を集めて。それから街中で手当たり次第に放っている冒険者を戻しなさい。冒険者ギルドとして幾ら何でも見苦しいです」

「は゛ぃ゛」


 ギルド長が涙目になりながら、これまでの資料を手渡す。


 冒険者ギルドを出たリリアンは、ノヴィが働いていたと言われる酒場へ向う。


「すみませーん」

「なんだい? まだ店開けるには早い時間だよ」


 恰幅の良い中年女性が現れるが、その雰囲気とは反対にスキが少ない女性である。それこそ街中やギルド内にいる低ランク冒険者よりも実力が上かもしれない。気を引き締めたリリアンは早速ノヴィの件について尋ねる。やはり内容は個々暫くずっと帰ってきていないこと。もしかしたら街を出て行ったのじゃないかと言われた。


「ありがとう」


 一言礼を告げ。さっさと酒場の外へ出る。酒場から少々離れた場所で、胸元からセレクティアが現れる。


「どうだった?」

「あの女、嘘付いていたわー」

「じゃあまだ街中にいるてことかな?」

「次の場所にいこー」


 リリアンとセレクティアは、街中でノヴィが潜伏していると判断し捜索を続行する。


 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

「帰ったか?」

「そうだね…………」

「どうした?」

「ちとノヴィはマズいかもしんないね」


 タリサはカウンターに腰を掛けて、下ごしらえをしているスプライドに難しい表情を投げる


「どーいうことだ?」

「さっき来た女冒険者、私が現役の頃より上だわ」

「となるとAか?」

「もしかしたらSかもしんないね。妖精の雰囲気があったけど、妖精の姿が見えなかったんだよ。勿論鈍って無ければ、だけどね」

「ノヴィに連絡しても大丈夫か?」

「今はやめておいたほうがいいね。下手にやると足跡になるかもしんないわ」


 酒場に居る夫妻はノヴィの無事を祈る。

 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


「んー、どうしようかしらね」


 先程からノヴィの痕跡になりそうな知人関係を探っているが、どれも決め手とならないでいた。何人かの人物は酒場の夫妻と同じように嘘を付いていた。


「街の人がノヴィを匿ってるみたいだねー」

「確かにそんな感じだったわ」


 キーとなる人物を、一人も捕まえることが出来ないのが一番の痛手であった。調べではノヴィの交友関係は狭い。町外れ鍛冶屋のエポックス。商人ギルド相談役シヴ=リューケン。そして半獣の女の子ファンレ。ノヴィと同じく足取りが辿れない状況であった。


 そして懸念すべき点は『シヴ=リューケン』の存在である。ここから離れた大都市にリューケン家と呼ばれる貴族がいる。たまたま同じ性のリューケンとは考え難い。何かしらの関係者であることは間違いないと思われる。


 先程リューケン家の屋敷と思われる場所に赴いたが、主人である『シヴ=リューケン』が不在であると言われたのである。当然これも嘘と直ぐにわかるが、下手に屋敷へ強行する訳にもいかない為、地団駄を踏むことになってしまった。


「もう、面倒だから強引に行こうかな」

「私はいつでも大丈夫だよー」



 一目につかない場所まで行くと。詠唱までに若干時間を要する。


「「幻透過(ハインディング)」」


 リリアンとセレクティアが揃い初めて発動できる秘術である。Sランク妖精には個性が与えられていることから、冒険者の魔力を媒体とした、妖精魔法や妖精秘術が行使できる。Sランク冒険者が憧憬の眼差しで見られる最大の理由でもある。


 Sランク妖精には妖精秘術が一つ二つ使えるように備わっている。Sランク妖精同士には効果が薄い等の制限があるが、冒険者としては破格の秘術であった。


『幻透過』は妖精の幻惑による、認識阻害の秘術である。実際に透過しているわけではないが、術者を視認した相手の認識を術者の後ろへ流す。居ないものと認識させる幻の効果を持つ。


 リリアンとセレクティアは難無くシヴ=リューケンの屋敷の塀を乗り越える。音を立てずに屋敷へと潜り込むと、声がする部屋を覗く。


(何かしらあれ?)

(何かで遊んでいると思うよー)


 どこからどう見ても、遊んでいるようにしか見えない。ただ見たこともない、変なもので遊んでいるのである。


(セレクティアはアレが何かわかる?)

(んー。ちょっとわからないー)


 その場にはエポックス、シヴ=リューケン、半獣のファンレいずれも揃っていた。消去法で残った人物がノヴィと思われる。


(なんというか……すごく普通の男ね)

(あれなら私の幻惑でよゆーだとおもうよー)

(じゃあ、夜寝静まった頃にまた来ればいいかな)

(だねー)


 そうして一旦、彼女達は屋敷を去る。このあと罠が待っているとも知らずに……。

次回も7/10に更新予定。

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