第二十話 忍び寄る計略
7/7 第十九話を先行でアップしています。注意下さい
7/8 主人公の言葉遣いを若干修正。
というわけで二人でやって来ました商人ギルド。
「よくいらしゃいましたノヴィ殿、昨日の件ですかな?」
「実はちょっと相談がありまして」
シヴさんに金の管理方法について聞いてみる。
「そうですな。大抵は所属しているギルドに管理して貰っている形が多いですな。ただ冒険者ギルドと違い証明し難いところもある為、商人ギルドはある程度まとまった大金でないと預からないことが多いです」
「傭兵ギルドの人達はどうしてるのですか?」
「あそこの者達は大抵自前で管理しておりますな。仮にも腕っ節に自身のある者達ですし」
「商人ギルドで預かってもらう場合、最低でもどれ位必要なんでしょうか?」
「一口金貨10枚から預かっております」
文字通りまとまった大金である。確かにこれぐらいの金額から持ち歩くには怖くなる。他にも貴族は貴族で管理しているとか色々分かった。
「ノヴィ殿、昨日の件お返事を頂いても?」
「実は昨日のお返事も兼ねてのご相談なのですが……」
まず商人ギルドには所属をしない旨伝える。ただこれからのことも考えると世話になる可能性もある為、ちょこちょこ顔を出させて頂く。アドバイザー的なことを提案。
「ノヴィどのぉおお、本当に来ませぬか?」
泣いてるよ大の爺さんが。多分商人ギルドに来るとばかり思ってたんだろうな。
「実は昨日やるべきことが一つ見つかりまして、その件を考えると、商人ギルドに所属するのはまずいかなと」
「ほほぅ。してその企てとは?」
「荒唐無稽な内容ですので今は控えておきます。ぶっちゃけ結構危ない気もするので」
「左様ですか。もし困り事が御座いましたら、私どもに相談下さい。勿論こちらの方も」
爺さんが親指と人差し指で輪っかを作る。たくましいね本当。
「早速さっきのお金の件なのですが……」
お金を預かってくれないかと相談したところ、あっさり了承してくれた。何やらお得意様達には都合してくれているとかなんとか。それを抜きにしても妖精の欠片等の件もある為、何かしらの形で縁を残しておきたいのだろうと思う。
手持ちの金貨10枚を取り出し、預かってもらうことに。サインを入れ青銅っぽい指輪を一つもらう。書面できちんと管理しているが、万が一何かあった際は青銅の指輪が代わりの証拠になるようである。
「そういえば妖精の欠片についての話なのですが」
商人ギルド以外への売りはまだ始めないようにお願いする。シヴさんも俺が何を考えているか物凄く聞きたそうにしていたが、今は内緒ということで渋々納得頂いた。
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「ノヴィあのお金は一体どうしたの?」
商人ギルドを出た矢先のことであった。
「酒場に『オセロ』の盤見なかった? 黒と白の駒が並んでたもの」
「お客さんが集まって、突いてた木の板かな?」
「それそれ。アレ俺が作ったんだよ。で商人の人が聞きつけて、作ったり、売る利権が欲しいて相談があったから売ったんだ」
凄いキラキラした眼差しで、凄いとか尊敬の言葉を送られる。作ったというよりは、正確にはパクっただけに、少々騙している感が否めない。
次にやって来たのはエポックスの工房。時間が掛かりそうな作業があった為、元々今日訪問の予定だった場所。
「たくっ、誰だよ。ノヴィか久しぶりだな」
「久しぶりも何も、数日だけですよ」
「前はあれだけ通い詰めだかったからだよ。あの金貨で獣人でも買ったのか?」
どうやらファンレを俺の奴隷的扱いで見ていたらしい。そういえばシヴさんは何も言わなかったけど、あの人も、もしかしたら奴隷として見ていたのかもしれない。
「違うよおっちゃん。俺の仕事仲間」
「ふーん、エポックスだ」
「ファンレです。よろしくお願いします」
ファンレが借りてきた猫のようにしおらしくなる。人見知りではなく……例の問題の影響かな。彼女には悪いけど、俺だけに心を開いてくれているというのは酷いけどやっぱり嬉しい。
わざわざおっちゃんの工房に来たことにはそれなりに理由がある。目の前にある『チェッカー』用に作られた盤が目的である。
まずこの盤を利用した試作品を作りたいことを話すと、おっちゃんがノリノリに。エポックスは剣なんか打ってるより、玩具作ってる方が凄い生き生きするのである。この人との関係は大切にしていきたい。
まず試作品のルールを伝えた上、完成イメージをなんとなくで理解してもらう。今回肝となるポイントは、彫り物が上手い細工師が必要になることである。
「そうだな。俺にはちと満足するものは出来そうに無いな」
想定の範囲内である。おっちゃんには試作品を作れそうな人を探して貰えるよう頼む。腕の良い、センスに長けた細工師を注文。幸い一人心辺りがあるらしく、直ぐにでも相談してもらえそうだ。幸先の良いスタートである。
「報酬はどうする?」
「んー、あくまで試作品だしなぁ。相場は幾らぐらいなんだろう?」
「そうだな。銀貨10枚もあれば引き受けてくれるとは思うぜ。ただ注文する数が細かいから、そこんところは要相談だと思う」
本人のやる気を引き出したいから、報酬をもう少し上げておくことも考えたがもっといい方法は無いかな。おっちゃんと話しつつ良案を探る。
「最低報酬を銀貨3枚にしよう。まずはおっちゃんの判断で実力が伴う数人に声を掛けてみて。サンプルを数体作ってもらい、俺と他数名で一番と判断した細工師に報酬銀貨50枚。仕事は別払いの報酬で。この内容で伝えて貰えるかな?」
「おういいぜ。そんなに奮発しちゃっていいのか?」
「少し宣伝を兼ねてるからね。実はこの前……」
昨日、妖精の欠片を作ることを予定していた旨説明する。
「この前、木の板に石を付けていたのはそれか。なんか次から次へとポンポン良く思い付くな」
「おっちゃんに頼んで買い占めた石は使わないようにね。その内宝石より需要出ると思うから」
「おっ、おう……」
付き合いが一番長いエポックスも流石に少々疑っているようである。
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エポックスの工房を後にすると、口を噤んでいたファンレがようやく話しかけてくる。
「もしかしてファンレ、俺以外の人と話すの怖い?」
最初は気まずそうに誤魔化していたが当たりのようである。
「シヴさんもおっちゃんも、半獣だからて別に嫌悪しないと思うけどな」
「それはノヴィが変な人だから……」
変な人が増えれば、あっという間に解決するのだろうけど、いきなり皆の意識改革は難しいな。それこそ宗教を広げるようなもの。
宗教とは同じ神を崇める組織。であれば、変人な俺が奇妙だけど便利な生活を構築し、その生活の輪に引き込んでしまう。最終的には崇めていた神の信仰心を忘れて生活を楽しむ……みたいな大分大雑把な目論見でいる。
人族の獣族、半獣を排他的に扱う体制は、教会が中心となっているらしいからな。まずはその教会を削いでいかないといけない。どういった神を崇めているかまではよく知らないが。
「気になったんだけど、ファンレみたいな半獣の人達て大勢いるのかな?」
「私は他に見たこと無いかな。子供が出来ても直ぐ殺されるみたいだから、それに獣族と人族の仲が悪いし」
「でも、ファンレのお父さんとお母さんは、仲良かったんだろ?」
「私のお母さんは獣族。人族の男がお母さんを犯して産まれたのが私なの……」
(とんでもない地雷を踏み込んでしまった。両親は仲が良いと先入観を持っていたが、出生も最悪だ)
「ごめん。知らないとはいえ、本当にごめん」
その場で歩みを止めて直ぐに謝る。知らないとはいえ、本人も相当嫌な事実であろう。
「いいのノヴィ。ノヴィはその人達と違うと知っているから。いつかは話したいと思っていたの。だから聞いてくれてありがと」
人族の偉い人と獣族の偉い人が婚姻を結べば、解決の一歩になるかなと考えたこともあるが、俺が考えているよりもずっと難しい様子。
そうして俺とファンレは少しだけまた打ち解け、酒場へ帰って行く。
今更だけどこれデートっぽいよね。




