↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者がいないファンタジー世界で俺は……  作者: アルねこ
第1章 生誕編
18/92

第十七話 ケモナースレスレ

先行で第十六話もアップされています。

 帰り道、シヴさんから商人ギルドに誘われた件に頭を悩ませていた。実績を認められて、誘われたことは凄く嬉しい。が、正直なところ地球技術を単に流用しているだけの為、ズルしている罪悪感が今一歩踏み切れない要因となっていた。今日は少し返事を待たせて頂くという形にて退散。


(どうしようかねぇ……)


 もし、地球の技術案が打ち止めになったら、凄くガッカリされそうだし、そのガッカリされる感じが怖いのである。それに……


(世話になっている酒場が、繁盛しちゃっているからなぁ)


 数日に一度のマヨネィズ料理があることから、連日通い続ける客が増える。加えてオセロの存在が、この街でも人気のある酒場に、様変わりさせてしまったようである。タリサの女将さんは人を増やす予定とは言っていたが、そんなに都合良く人が現れるわけでもなく、ここずっと俺が厨房と配膳を行ったり来たりで、かなり大変なのである。


 そんな事にウンウン頭を悩ませながら酒場に帰る。


「丁度いい所に帰ってきたねノヴィ。こっちに来て座りな」


 呼びつけるタリサさんの元へ寄ると、スプライドさん、そして見知らぬ人がもう一人座っていた。


「さっき言ってたノヴィだよ。挨拶しなノヴィ」

「ども、下っ端のノヴィです」

「はじまして、ファンレと言います」


 この酒場のヒエラルキーで間違いなく最下層である俺は偉ぶってはいけない。下っ端アピールを忘れること無く目の前の方に挨拶する。俺の礼にすかさず挨拶してくれる女の子。


 そして下げた頭が正面を向き、俺の目線と交差する。


(なっ、なんじゃこりゃあああああ!)


 俺の目の前に(まご)うこと無きスーパー美少女がいる。しかもなんだろう、頭に人間とは違うピョコンとした猫耳っぽいものが生えている。ダンジョン中で魔王様(レティ)夢魔族(テレサ)という美少女、美女を見てきたが、目の前にいらっしゃるこの娘様は完全に正統派美少女(極)でございます。より詳しく説明すると、洋ハーフっぽい顔立ちに、ふんわりとした髪の毛、確かボブカットという髪型に近い。そして程よくポニュんとされているお胸様。何処を見てもブラボーと言ってしまいそうだ。


 思わず目の前の超美少女に見惚(みと)れて饒舌(じょうぜつ)になってしまった。ここ最近女性と殆ど会話をしていなかったせいか、胸がドキドキしてきた。仮にも生前は40越えてた俺ではあるが、目の前の推定10代であろう超美少女に恋しちゃってる気がする。いかんまた心の声が饒舌になってきた。


「あんたは黙ってないで、なんか言ったらどうだい」

「あ、はい! この美少女はどちら様でしょうか?」

「さっき本人が言ったろ、ファンレだ。酒場の新しい働き手だよ」

「まじですか!? こんな掃き溜めみたいな酒場に、こんな娘が来ちゃっていいんすか!?」

「あ゛あ゛っ!?」


 タリサさんの猛獣のような声が俺を睨む。


「すみません。あまりの動揺に心の声が、漏れてしまいました」


 タリサさんの声には別の意味でドキドキしちゃったよ俺。どうやら俺が留守の間に、ファンレさんがこの酒場の働き手として面接に来ていたらしい。くそっ、こんなアイドル公演会なら商会行くのは後日にすればよかった。


「とりあえず、今日から暫くはあんたと同じ部屋だから」


(ん? 何か今とても耳を疑う言葉が届きましたよ)


Why?(ホワィ)

「あんたは何を言ってるんだ」

「すみません。あまりに耳を疑う言葉で思わず、慣れない祖国語が(全然祖国じゃないけど)」

この娘(ファンレ)も住むところが無いんだ。だからあんたと同じ部屋と言ったんだ。理解ったら返事をし」


 ちょっと深呼吸しようか。リアルに深呼吸をする俺。ふぅ……。


 ダンジョン脱出から糞イベントが続きすぎた反動なのであろうか。俺的にはお釣りを出していいぐらいの超イベントである。それとも生前の運までここに来て発動したのであろうか。


 しかしよく考えて落ち着け俺。こんな美少女と一緒の部屋で寝たら、寝不足どころの問題ではない。ドキドキを通り越して、翌日にはヒヤヒヤのイベントが待っているに間違いない。


 そうだこれは罠だ。俺を試すであろう罠に違いない。きっと俺の紳士っぷりを試しに来たのであろう。


「何をご冗談を。この私がこちらの美少女と寝床を一緒にするなんて恐れ多い」

「あ゛あ゛っ!?」


 あれ、また切れてるよこの奥さん。ちょっと更年期障害入ってるのかしら?


「あんたはこの娘(ファンレ)が半獣だからて、馬鹿にしてるのかい?」


 あれ結構ガチでキレている気がする。ちょっと心を落ち着けて、冷静に対処しよう。


「あの、すみません」

「なんだい!?」


 やっべぇ、なんか知らんがマジでキレてるわ。ちょっと調子乗りすぎた。


「まず何か致命的な事を言っているのでしたら、とにかく謝ります、すみません。ファンレさんもすみません」


 一旦きちんと頭を下げて謝る。


「正直に言って俺は何に怒られているのかが、イマイチわからなくて。ファンレさんが半獣て言われた件と何か関係あるのでしょうか?」

「タリサ、ノヴィはちゃんと謝ってる。半獣を見るのが初めてなんじゃないか?」

「そうなのかい?」


 スプライドさんが助け船を出してくれる。この人に何度救われたことか。


「多分ですが……半獣と呼ばれる種族と話したのは初めてかと。前に一度獣人っぽい人とは話したことはあります(ライオン丸のことだけど)」

「……ふぅ。すまなかったね。ノヴィが世間知らずとはわかっちゃいたが、まさかそこまで世間知らずとは思わなかったからさ。ついカッとなっちまったよ」


 どうやら詳しい話を聞いてみると、獣族と人族に間に生まれる子が半獣と呼ばれるらしい。半獣は穢れた子として扱われるらしく、人族の世界では非常に肩身の狭く、酷い扱い受けているらしい。生まれてきた半獣は直ぐに殺されたり、捨てられてしまうことが茶飯事。事情を聞けば聞くほどかなり酷い世界だ。


「すみませんでした。俺は今の話を初めて聞きましたが、少なくとも差別とかそういった気持は一切無いです」


 話すにはちょっと(はばか)る事情であった為、真摯に答えておく。


「あんたが真剣に答えてくれたのはわかった。で、部屋は同じでいいんだろ?」


 そこに話が戻るのか……、なんか論点がずれていた気がするな。


「話を蒸し返すようで申し訳ないんですが、ファンレさんは女の子ですよね?」

「どっからどう見ても女の子だよ。あんたの目は腐ってんのかい?」

「いやいやいや。俺の目からどう見ても女の子です。どこから見ても、凄く可愛くて、綺麗な女の子にしか見えないんですよ」

「何が不満なんだい?」


 これ以上は当の本人の前で言うには少々勇気がいる。仕事中避けられたら、俺の約束された充実ライフが壊れてしまうのである。そんな感じでモジモジしていると……


「いい加減に、ハッキリいいな!」

「えとつまりですね、俺は男で彼女は女の子なので……、いわゆるエッチな心を抱いて、子作りとか交尾と言われる行為を迫ってしまいそうなわけでして……」


 苛立っていたタリサさんが呆気にとられたような表情になる。すぐ隣にいるスプライドさんも同様。唯一、ファンレさんだけが顔を真っ赤にして(うつむ)いていた。当人の前で告白させられるとかどんな羞恥プレイだよ。


「あっ、はっははははははは!!」

「フッフフフフ」


 タリサさんの笑いに釣られるように、ムッツリへの字がデフォであったスプライドさんまで、珍しく笑い出したのである。


「あんたが押し倒したいなら、押し倒せばいいんじゃないかい? ファンレはいいんだろ? こんな奇特な男は他にいないだろうし。世間知らずだけど、まぁ悪い男じゃないよ」

「……////」


 ほら余計なこと言うから、ますます俯いちゃったよ。


「どっちにしたって、あんたら二人にそれぞれ部屋を与えるほど余っていないんだ」

「わっ、私がその飲み場やキッチンの隅で寝かせてもらいましゅ──ッ」


 噛んだよね今。見た目もそうだが、噛み噛みオプションまで付いてるとかもう無敵だよこの娘さん。


「言い出すタイミングが無かったので、今報告しますと、実は……」


『オセロ』の利権が売れて、ある程度金が入ったこと、別のアイディア関係で商会から別途金が入る予定であることを説明した。


「ノヴィあんた! なんでそんな大事なこと言わないんだい。オセロが他の酒場に入ったら、また客足が減るかもしれないじゃないか」


 え?そこは泣いて喜んでくれるところじゃないのかな。気持ちは分からんでもないが、俺の収入があったことを喜んでくれるとばかり思っていた。


「あんたはマヨネィズ料理を4日から3日に一度出すようにしな」


 さらっと天国から地獄に落とすような事を言われた。

次回もファンレの話がちょっと続きます。半獣が微妙な扱いを受ける理由も一応次回わかります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。