第十三話 オーバーテクノロジー-前編-
7/4に十一、十二、十三話とUPしているためご注意下さい。
異世界フードハザードの代表である『マヨネーズ』作戦が失敗となると、料理方面で効率良く稼ぐことは難しい可能性が高い。急に異世界へとばされてしまったよ!的な物語展開であれば、ボールペンを売ったり、ポリエステル製の服を売るなり有効手段がありそうだが、生憎と俺には初期装備すらなかった。
因みにこちらの世界では『マヨネィズ』が正しいとされるイントネーションらしい。名前が似ていることから、同じ地球出身の人がいそうである。まあこんなものは作ったもの勝ちみたいなものである。当然、俺に文句言われる筋合いはないだろう。ただ同郷のよしみで少しばかりの借金と、アドバイスを頂きたいと考えた。
マヨネィズの出処を探ってみると、大分離れた町で流行っている調味料とかなんとか。俺が認識している地図の範囲外である。馬車で1~2日と思いきや相当遠いらしい。間に大きな都市があり、そこで作っているマヨネィズを商人達が流通させているようだ。
早い所なんとか仕事を見つけたいが、落ちてるわけでも無い為、ただの散歩になってしまっている。救いであるのは最低限の衣食住が確保できていること。これは本当に大きい。あの酒場の夫婦には感謝しても感謝しきれない。お陰様で昼間からこうしてウロウロできる。
新しい店を見ては物価を頭にメモしていく。紙とペンを買う金が無い俺にはこの手段しか取れない為、苦肉の策ではあるが……。歩いてみてわかったが、この街の商人達は結構目利きの力があるようだ。微妙に物価の差はあるもの、おそらく物の良し悪しで微妙に調整していると思われる。サイズの違う果実等で微妙に値段が違っていた。日本で売っているような形が整えられた野菜や果物のほうが異端なんだろうが、異世界のギャップに驚いてしまうことが未だある。
適当に歩き続きけていると、朦々と熱気が漂う建物に気づく。近づいてみると中からは金属を打ち付けるような音が延々と聞こえてくる。
俺は知っている。大体この手の鍛冶屋っぽい所の親父は、作業中に入られることを酷く不快に思うのである。機嫌を損ねて話す機会を失いたくない、じっくり待つことを選ぶのが最良の選択肢。ボロボロになった樽には端材と思われるものや、金属片が適当に入っていた。
この樽に入っているもので何か作れないか考えてみる。実は街を散策した際、娯楽製品が全然無いことに気づいた。洋風ファンタジーなんだしチェスやカードぐらいはありそうだったが、ここに来るまで一品も見かけなかったのである。となればドラ◯エみたいなカジノも無いだろう。そもそもカジノで散財できるような金も無いが。
ここは開き直って和風にするのもありかもしれない。売れるかは一切不明であるが、竹とんぼやベーゴマなんかはそこそこ売れそうなイメージがある。ベーゴマは製造にもコストが掛かりそうであるが、一度生産ラインに乗せてしまえば、竹とんぼよりも遥かに量産が簡単そうだ。
ベーゴマを作る環境ができれば、鋳物関係に発展できそうである。やばいな夢が広がってきた。
トランプ?カードゲームは完成すれば、爆売れする予感がしてならない。問題はその製造方法である……。結構シンプルな割に、昔はどういった素材を利用していたか一切知らなかった。足りない頭でアレコレ考えてみるが、薄い木の板に絵を書く、掘るなどしか浮かばない。直ぐに頓挫してしまいそうな予感があり一旦保留とした。
手持ちの素材と技術で娯楽製品を作ることが、いかに難しいか理解する。娯楽製品とはそもそも技術があって初めて成り立つものであると考えると、昔の地球人はやはり偉大であると感じた。
「お前、俺の工房前でさっきから何しとるんだ?」
そんな未来予想図をアレコレ妄想していると、後ろから声が掛かる。どうやら工房主が俺に気づいたようである。
俺は最近街に流れてきた者であるとか、簡単な事情を掻い摘んで説明する。
「別に構わんが邪魔だけはしないでくれよ」
端材を使わせてもらえることをあっさり許可を頂く。さてココにある中で手っ取り早く直ぐ作れそうなもの……分からん。できるだけ古く最古のゲームを思い浮かべてみる。サイコロを使ったゲームがぱっと浮かんだ。サイコロを使ったゲームとなると、『丁半』『チンチロ』が浮かぶが、俺にはあれの中毒性がイマイチわからない。サイコロを使った古いゲームとなるとバックギャモンになるだろうか。
『バックギャモン』とは24本あるマスに1人あたり15個のコマ配置。2人で競い、先に15個のコマを全部ゴールさせるゲームである。最古のボードゲームと言われる癖に、小難しいルールがあった気がする。面倒なルールは娯楽に親しみのない人には、面倒そのものである。結局、近未来用に改良されたルールしか知らない為、取り敢えずそれも封印することとした。
ルールがもっと簡単であるものを考え、『チェッカー』が浮かぶ。マス目上にコマを斜めに動かすゲームである。昔チェス盤を購入した際に付属していたゲームであり、なんとなく記憶の端に残っていたのである。チェッカーは今まで思いついた中でもいちばん現実的であり、盤面も代用することを考慮すれば直ぐに用意できそうであった。
ボチボチ日が落ちる時間となり、鍛冶屋のおっちゃんに挨拶をすると、酒場へと帰って行く。
翌日、時間が出来ると真っ先に鍛冶屋の工房へと向かう。
「なんか出来そうか?」
「今のところ設計図だけですね。ただそんな大掛かりなのは必要無いので、道具と材料さえあれば、直ぐに出来そうですよ」
おっちゃんに道具を貸してもらうと、早速準備へと掛かる。樽の中には駄目になったであろう剣が何本かあり、持ち手が丸棒になっている柄を集める。丸棒を輪切りにしていき、500円玉サイズの丸い木片の量産が始まる。木片の数が揃うと綺麗に削りだし、一部を赤く塗り潰す。
更に翌日、おっちゃんに協力してもらい、『チェッカー』を理解できるか試した。結果、おっちゃんは普通にハマってくれているようではあるが、いかんせんルールを説明するまでの時間が長く、ゲームとして浸透するには、シンプル性が足りないことを理解した。
結局工房に来る度、おっちゃんに相手をせがまれ、数日は黙々とチェッカーをする日々が続いた。
「これ売りに出さねーのか?」
「うーん……どうでしょうね。おっちゃんは頭が良いから直ぐ理解してくれたけど、もっと頭の悪いやつにも理解できるようなシンプルな形にしたいと思っていて……」
なんかその手の謳い文句で売り出していた古いゲームがあった気がするが、なんであったか思い出せない。喉の奥まででか掛かっているが、ハッキリ思い出せないのだ。
暫くおっちゃんに付き合いチェッカーで暇を潰す。おっちゃんがコマの裏表ひっくり返している様子で思い出した。
『オセロ』である。日本の商標扱いになっているものが『オセロ』であり。世界で浸透しているものが『リバーシ』だ。記憶が正しければ、オセロが日本で売りだされた際、『ルールは1分、極めるには一生』みたいな大げさな謳い文句を聞いた記憶がある。
おっちゃんにオセロの話をすると、結局おっちゃんを巻き込む形で『チェッカー』から『オセロ』へ改造する計画が早々に始まる。応用力の高い日本人のことである。オセロのマス目の数を8×8に固定していること等、理由は判らないが日本のオセロ仕様で作ることになった。
結局おっちゃんが板を用意してくれて、8×8マスのしっかりとした盤面も新たに出来上がる。チェッカーの慣れがあったせいかもしれないが、ルールはシンプルであった為、連日おっちゃんとオセロ勝負する羽目になったのは言うまでもない。
「ということで、あと2つほど量産しようかと思います」
「こいつは売れるだろうし、もっと作ってもいいんじゃないか?」
「俺も売れるとは思っていますけど、勝手に新しいものを売りだしてもいいものかなと思いまして。作りはすごい簡単だから、先に商人ギルドに売り込んでみようかなと思ったんですよ」
「一つは商会用として、もう一つは?」
「酒場に持って行こうかなと。世話になっている酒場があるんですが、客入りが微妙らしくて相談されていたんですよ」
おっちゃんと俺のゲームプランが始まる。
後編は早ければ7/5の0時頃上げれると思います。




