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勇者がいないファンタジー世界で俺は……  作者: アルねこ
第1章 生誕編
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第十二話 食用油・酢・卵を主材料とした半固体状のドレッシング

 そう異世界ファンタジーで最も効率良くお金が稼げ、かつ中毒性が高い調味料。


 その名は『マヨネーズ』。


 そして今現在、卵の撹拌作業(かくはんさぎょう)(いそ)しんでいた。適宜油を加えつつ、黙々と撹拌作業を行う。



 ~少し前~



 店主の名はスプライド。本人曰く元傭兵の店主兼料理担当。かなりガチムチの短髪な人である。現役軍人が趣味で料理やっている、と言われたほうがまだ納得出来る体つきだ。


 奥さんの名はタリサ。この店の看板……娘をやっているらしい。ツッコミを入れるのは野暮というものであろう。スプライドさんと一緒に冒険者をやっていた当時はスマートであり、かなりの美人であったとか。スプライドさんの飯がうまくて気づいたら……随分とぽっちゃりしたようである。


「ノヴィは何が出来るんだ?」

「何が出来るんでしょ?」


 ガチムチ店主と二人きりだ。正直俺にできることがあるのか、逆に聞きたい。作れそうなら、なんでもいいから一品作れと言われたのである。この世界で食事を作ることは全く考えていなかった為、手探りで開始することになる。


 店で料理を出す一つとして、味付けが濃く印象深い料理が良いと判断した。そこで異世界ファンタジーのフードハザード代表である、『マヨネーズ』を思いつく。ファンタジー漫画等ではマヨネーズで異世界食生活を改善しているものが多く、製造工程が自然と頭に残っていた。これを使い鶏肉のマヨネーズ焼きを作ろうと試みた。


 結果は今も続いているマヨネーズ製造が思っていた以上に大変であり、撹拌作業に追われているのである。


 ようやくマヨネーズが完成し、鶏……肉と思われるものにマヨネーズを格子状に添える。紙の切れ端を先端が尖るよう丸め、簡単な絞り紙袋を利用。細かくしたトマト等と一緒にかまどで焼き上げて完成だ。まさか生前の一人暮らしで培った男料理が、この様な形で活かされるとは思いもしなかった。


 出来上がった品に、香草を炙り粉々にした物をパラパラとふりかけて完成させた。


「ん。思ったよりまともに出来るじゃねーか」

「あら、意外と美味しそうにできたわね」


 見た目は二人とも好評化を頂けたようである。味の方はというと……


「私はちょっと脂っこい気がするわねぇ」

「俺は割といい線行ってると思う。マヨネィズを一緒に焼き上げるという発想が好きだ。てっきりそのまま使う調味料とばかり思ってた」

「確かにマヨネィズの焼き上がる臭いは、いい匂いがしていたわ」


 この話ぶりからして直ぐに気づいた。『マヨネィズ』と言われていることである。俺は一言もマヨネーズとは言っていないが、二人共当たり前のように『マヨネィズ』と連呼している。若干イントネーションが違うが、この世界に元々存在していたのか……?


 マヨネーズの撹拌作業でパンパンになった腕をモミモミマッサージを続ける。


「それにしてもノヴィ、お前よくマヨネィズの作り方なんて知ってたな。まぁあんな面倒臭そうな作業見た後じゃ、作る気にもならんがな。買ってきたほうが早い」


(売ってるのかよ! マヨネーズ!)


 一番苦労した作業がよりにもよって、購入できる調味料とは知らなかった。


「でもマヨネィズは高いし、作り方がわかっただけでも、十分じゃないかしら」


 どうやらこの世界は、マヨネーズの撹拌作業が効率化していないせいもあり、高級な調味料らしい。それにレシピが分からないとか。流通商人から買うと1瓶で銀貨1枚ぐらいとか。そりゃ気軽に焼いたりとか、ぽんぽん試し辛いな。


 しかも買う人が絶たない為、結果として売値が銀貨で落ち着いてしまったようである。おまけに保存が効かない為、買い置きが難しく、客に出すメニューとしては並べていないとのことだ。


「それじゃあ、ノヴィはマヨネィズ料理担当ね」


 うん。さらっと嫌な作業を任せられたよ。あの撹拌作業という名の過酷なトレーニングは、この店の俺の隣にいる筋肉の塊な方(あんたの旦那)に任せて頂きたい。立場が立場なだけに嫌とは言えず……


「辛いので、出来れば3日……できれば4日に1回程度で勘弁して下さい」


 俺の涙声に二人が笑う。


 その晩、余ったマヨネーズを使い、マヨネーズ焼きが常連限定で振る舞われたようである。この店の客にも好評化であり、毎日出してもいいぞと言われる始末。お前等マヨネーズ持参して来いよ!と内心で思いつつ、営業スマイルで切り抜けた。


 結局その日はマヨネーズ焼きの臭いを嗅ぎつけた他の客にもせがまれ、二度目の撹拌作業やる羽目になったのは、不幸としか言いようがなかった。奥さんのタリサさんからは売上が良いと喜ばれていた為、恩返しと腕の痛み分けということで決着をつけた。


 マヨネーズをひたすら作る作業をすれば、金を稼げると当初考えていたが、閉店後その考えは跡形もなく消えた。永久封印だ。金を稼ぐ前に、俺の腕が壊れる方が早いと確信した。マヨネーズを手っ取り早く作れる道具でもあれば良さそうだが、本末転倒になりそうな予感がする為、その案もサッサと忘れることにする。

7/5 オーブンと書いてあったところがあった為、かまどに直しておきました。漢字は読み潰れて読み難い為、平仮名になっています。

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