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勇者がいないファンタジー世界で俺は……  作者: アルねこ
第1章 生誕編
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第九話 ダンジョン脱出-後編-

 緊張状態が続く中、なんとか3階層、2階層を脱出。緊張で体内時計が狂いっぽなしであり、開始から何時間経過しているか不明。意識が朦朧とし始めていた。疲労困憊(ひろうこんぱい)の中、最後の1階層を進もうとしたところで、踏み抜く足元に違和感が走る。


(罠だ!!)


 失態に気づくと同時に姿勢を低く、できるだけ距離を稼ぐように必至で体を転がす。姿勢を低くした場所には罠の影響が無く、1階層で命を落とすといった事態はなんとか回避。


 しかし、立ち上がろうとした途端、足首に鈍い痛みを感じた。どう考えても先程の下手くそな回避行動が及ぼした結果であろう。過去の経験から捻挫と考えるが、確認する手段も治療する手段も無い。足を引きずりながら1階層を歩くこととなる。


 熱を帯び始めた足が、煩わしさ苛立ちを誘引(ゆういん)、冷静さを頭から追い出す。今直ぐにでも冷やしたい足の熱さを懸命に堪えながら、1階層を突き進む。


 額から滝のように流れ落ちていく汗が、胸を伝い、股座(またぐら)まで伝っていく。蛞蝓(なめくじ)が這うような悪寒を覚えながら歩く。ふと頬に生温くも心地良い生きた風を覚え、風に(すが)るように無様な姿で出入口を目指す。


 ようやく出れたその先は、森の中であり、木々が切り開かれたその場所には出入り口と強い陽射しが突き刺さっていた。


「で、でれた……出れた、出れた出れた出れたっ!」


 これまでの達成感に、可笑(おか)しげな高揚感を覚える。その場で尻を付けて、何十日ぶりかの日光に自分の生命力的な何かを不思議と強く感じる。歩き通しであった足の裏は真っ黒になり、手足の所々に擦り傷と血が薄っすら(にじ)んでいた。


 興奮と共に変な感情が湧いてきたのか少し涙目になる。涙目を両手でゴシゴシこすり、気合を入れ再び立ち上がる。



 気合を入れ直し後真っ先にやるべきことがあった。この世界の方角に当たりをつけることである。ダンジョン中でこの辺一体の地図をみたことがある。ここが森中であるため、地図情報は間違いないと思われる。


 そして一張羅(いっちょうら)であるマントを首から(ほど)くと、背中辺りに面した場所には、模写した地図が描かれていた。ダンジョン内の地図は直ぐ確認できるようマントの裾近く。脱出後の地図は首から背中に掛けて描き下ろしたのである。傍から見れば阿呆同然の姿ではあるがこちらも必至であった為、そのような羞恥心は忘れることにした。


 この世界にも地図が存在している以上、何かしらの共通する方角が存在しているとみた。陽の位置、包囲磁石によるものから推測できると思われるが、現時点の知識ではこれをカバーできない。消去法という形ではあるが……。


 -1時間後-


 手当たり次第に地図情報と周辺情報と照らし合わせるという強引な手段を取る。幸いダンジョン近辺には川らしきものが存在しているようであり、この川を探すことを第一目標とした。そして現在この川で足を冷やしながら今後の方針を考えていた。


 数少ない持ち物であった黒パンは、既に腹の中に入っている状態。この状況が続くようであれば文字通り飢える。水と食料の2点から川に来てみたもの、都合良く魚を得ることができないでいた。


 それに心配する点はまだ残っていた。既にダンジョンから姿を消して数時間が経過している。今頃俺が捜索対象となっている可能性が十分に考えられる。であれば、このダンジョン近辺からサッサと離れてしまうべきである。


 十分とは言えないが休息を終えると、体に鞭を入れ立ち上がる。川沿いに歩き、ここから一番近いと思われる集落を目指す。


 近くに水辺があり体力的にも精神的にも随分と楽になる。ダンジョン中では水を持ち歩けなかった為、これが随分と体を苦しめたようである。水筒らしきものは事前に探してみたが見つけることが出来ず、やむを得なく断念することとなった。あと武器であるが出来れば持ってくることが理想的であることは分かっていたが、体力がない状態で無駄な荷物を持って進めるか不安要素だった。とすれば俺は持っていかない方に賭けた。持っていることによるリスクが多く、そもそも扱える自信が無い。


 暫く歩いた後、森が浅いと思われる場所を抜けていく。道中不思議とモンスターと思われる化物や、動物らしきものを見かけ無いのが不思議であった。モンスターに関しては即死に繋がる可能性を秘めていた為、注意をしながら歩いていたが拍子抜けである。


 数十分程森を歩き、人が通ったと思われるような道に出れた。周辺の情報などから照らしてみると、予想よりも大分ずれた場所に出たと思われるが、結果的には街道に出れたことで自分の中で問題無しとする。


 更にそれから北に向かって歩き続ける。地図上では上に当たる為、俺の中で北(仮)になった。磁石と針があれば、方位磁石を作れる気がするが、そもそも俺には足りないものが多すぎる。主にパンツとかシャツとか荷物入れとかパンツとかパンツ。うん、パンツは重要よ。俺の中で一番足りないアイテムよ。


 休息を挟んだこと、日光に当たりながら歩く状況が俺の心を前向きにさせてくれる。


 歩いて休憩。歩いて休憩を繰り返し、2時間程経った頃遂に……


(第一村人発見!)


 笑ってコラ◯てのナレーションを脳内再生し、喜びを上げながら急ぎ足になる。

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