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流星マスター  作者: TSUJIMO


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三宮ホテル 1/2

続いて、交通情報です。本日午後すぎから東海地方を襲った激しい集中豪雨の影響で、東海道新幹線は午後4時頃から、静岡駅と浜松駅の間で運転を見合わせています。


「まさか、明日の朝の新幹線には影響しないでしょうね」

「影響したとしても不可抗力だろう。それに神戸の人なら災害には理解があるはず。商談が仕切り直しになるだけだ」

「それはどうでしょう。災害で仕事に影響が出たら、とても嫌な気持ちになるかもしれません」

「じゃあ今から行くのか。新幹線が止まってるのにどうやって」

「うーん、だったら飛行機で」


19:30 羽田発伊丹行最終便。羽田まで電車とモノレールで760円、当日の航空券が17,000円。宿泊費が5,500円。それをふたり分。安くないと思ったが、社長が認めたので気にしないことにした。羽田から三宮ホテルに電話で予約する際、シングル2部屋を別の階にしてくれるよう頼んだ。



湊商事は化粧品、日用雑貨、文房具を数多く扱う神戸のローカルな荒物問屋だ。P-NETで「ヒノブング」を見て、聞いたことのある名前だと思った。それは震災復興の折り、学校向けにB5ノートの在庫を放出してくれた東京のメーカーだった。顧客である地元の中学校でノートの現物も見た。やや高めですこし高級。扱いにくそうだ。だが印象は悪くない。


神戸から問い合わせの電話を受けたのは裕太だった。比野文具通信の注文や配信停止希望に一喜一憂していた彼は飛び上がって変なリアクションをしてしまった。それからカタログを郵送して電話のやり取りを行い、契約書を交わすところまで進んだ。それだけでなく特注品の顧客も紹介してくれるという。


新規の問屋は山根が担当で特注は山下さん。そういうわけで、ふたりで日帰りで仕事を決めてくる。だが二百十日のせいで前乗りすることになってしまった。



チェックイン後、新旧の建物が混在する夕方の街を歩いて、喫茶店で食事をすることにした。


「カナディアンセットとグラタンセット。それから食後にオリジナルブレンドコーヒーをふたつ」

「私はケーキも欲しいです」

「じゃあショートケーキもひとつ」


ウェイトレスが一礼をして去ると、山下さんはため息をついた。


「そんな服まで持ってきて。遊びに来たんじゃないぞ」


ベージュのニットにサングラス。観光客だ。


「食事の時間くらいいいじゃないですか。仕事の準備はできてますよ」

「どうせ ThinkPad 560E は会社に置いてきたんだろう」

「ちゃんと持ってきてますよ。山下さんこそPCG-707はどうしたんですか」

「ホテルの部屋にある。食事には必要ないからな」


有田焼のコーヒーカップとケーキが出てきた頃には外はもう暗くなっていた。窓の外の街灯が灯っている。山根が四角いショートケーキをつつきながら仕事の話をしだした。


「特注ってアルバムの名入れなんですよね」

「定番のアルバムに外注でホットスタンプするだけだから、本当は電話でもすんだんだ。社長が学校を見てこいっていうから」

「災害支援のときに葉書をくれた学校でしょう。ノートを気に入ってくれたんですね」

「生徒はとっくに卒業してる。災害とはまた違うんだろう。湊商事のほうも学校関連なんだよな」

「そうなんですよ。きっかけはP-NETですけど、その前に学校でノートの現物を見てるんです」

「なんだか複雑だ。あれはバーコードのない旧商品だから出せたのに」

「喜んでくれたんだからいいじゃないですか」


翌朝はロビーで早めに合流する。それだけを決めてそれぞれ部屋に戻った。あとは寝るだけだ。


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