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クロスロード 1/2

大きな倉庫が向かい合っていて、その間を軽トラやバンが走っている。その突き当りのプレハブが湊商事の事務所だ。


「ようこそ、神戸へお越しくださいました。社長の村上です」

「比野文具営業部の山根です。御社を担当させていただきます」

「商品企画の山下と申します。本日は上条先生の件で同行いたしました」


えびす顔の村上社長はまだ若い人だった。事務所での挨拶と名刺交換。プレハブなのに大きくて新しい。水場まである。


「倉庫は壁のヒビだけやったから補修してすんだんやけど、社屋が傾いてもうてね。ずっとこの仮社屋なんですわ」

「街の復興が進んでいるようで何よりです」


山根がお茶を勧められながらたずねる。


「ご商売のほうはいかがでしょう」

「廃業したお店もありました。でも、もう大丈夫です。みんな立ち直っていますわ」


社長は言葉を区切って、こちらを交互にうかがった。


「それから比野文具さん。御社名をP-NETのメーカーリストで拝見したとき、すぐにはピンと来へんかったんです。けど商品登録を見てハッとしましてね。あの時は助けていただいてありがとうございました」

「お役に立てて何よりです。あのノートをご覧になられたんですね」

「ええ、うちは問屋ですけど元々は小売でしてね。今でも直接お届けするお客様は、特に学校関係が多うございます」


問屋担当の山根が契約内容の最終確認を行う。


通常の注文はP-NETを通じて行う。

ただしカタログに掲載されていても、JANコードが付いていない商品についてはシステムを通せないため、電話とFAXでの注文も受け付ける。

価格は通常の卸価格であり特別な問屋向け価格ではない。その代わりに注文金額に比例した協賛金を支払う。何に協賛するのか悩んだが、ただのリベートのことだ。会社によって名称が違うのがおかしい。

路線便混載やJR貨物を使用した倉庫間輸送を基本として送料は折半。ただし一定金額以上のご注文で比野側が全額負担する。逆に緊急で少量を輸送する場合は赤帽代を湊商事側が負担する。

最後に、トラブルの際はいきなり訴訟にしないで誠意を持って話し合いましょう。


「この内容で契約書をご用意してまいりました。修正がございましたら、山下の権限でこの場で訂正いたします」

「これでようございます」

「それでは代表者記名と社判をこちらにお願いいたします。一通は持ち帰らせていただきます」


にこやかに握手。ひとつ目のミッションは成功だ。山根は書類をしまいながら、追加の質問をしてみることにした。


「ところで社長、御社の取り扱い商品や倉庫を拝見して思ったのですが、弊社の商品は御社の従来の商品ラインナップとは違っているようです。今さらですが、どうしてお声をかけてくださったんでしょう」

「そう思われますか。たしかに弊社の荒物はお買い求めいただきやすい価格帯の実用品ばかり。そして御社の文房具はひとつ上のランク。疑問に思われるのは当然ですわ」


社長は言葉を選んでいるように、小さく区切りながら話した。顔は笑顔のままだった。


「元に戻すばかりが復興ではないです。前よりもっと良くしていかないといかんのです。そやから、うちも商売の幅を広げたいと思うたんです」


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