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流星マスター  作者: TSUJIMO


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ロールバック

美香さん担当の受注管理部主機 PC-9821V200/M7 は安定性のためメモリを64MBから128MBに差し替えられた。OSは Windows NT 4.0 で FileMaker Server 3.0J と FileMaker Pro 4.0J がインストールされている。美智子さん担当のネット通販受注機として新規に購入された PC98-NX VALUESTAR VS26D (Windows NT 4.0, FileMaker Pro 4.0J) で64MB分のメモリを再利用して96MB化。


斉藤さんの経理機も 98MATE VALUESTAR (PC-9821V200/S7, 96MB, Windows NT 4.0, FileMaker Pro 4.0J) を追加購入。HITACHI FLORA-DS1 のNT化は困難と専門家の判定を受けたことによる措置だ。FLORA は予備機として斉藤さんが管理することになった。


さらにレーザープリンターが置き換えられた。サポート切れが近い EPSON LP-1500 が退役。代わりに LP-8300 とインクジェットの PM-770C が来た。この2台は美智子さんが使用していたPC-9821V13がプリントサーバーになる。


土日に社長と島田君と業者さんとで作業をしていた。島田君ははじめ拒否しようとしたが交換条件により同意した。Gateway 2000 P5-100 に自分の好きなパーツやソフトを入れてかまわない。ただし会社に返すときに現状回復すること。



「いっぺんに変わりましたね。大丈夫なんですか」

「専門家にも来てもらって、しっかり時間をかけて入れ替えたので大丈夫です」


「受注管理部の2台はどちらもこの会社の中心になります。美香機には FileMaker Server 3.0J を入れました。これで今までのように慎重に扱わなくても大丈夫になります。それから仕事をすこし整理しました。ログインパスワードをふたつ用意して、それによってアクセス権を変えることにします。この3人は上位の権限でマスター群まで更新可能です。営業部のマスター管理者も同じパスワードを使ってもらいます。私も同じですね。他の社員とそれから今後入ってくるだろうアルバイトにはマスターに触れない下位のパスワードで利用してもらうつもりです。ところで斉藤さん」

「はい」

「斉藤さんの端末からもFileMakerを見られるようになりました。受注入力やマスター更新も可能ですが、それは頼まれたら手を貸すくらいに思っててください。それと最近は売上の分析とかもされてますよね。本当は経理の仕事とは言えない。でも会社にとっては有用なことなので、またこれについては話しましょう」

「はい。わかりました」


「NTにするのはこれだけで、他のパソコンのいくつかにもFileMakerを入れるつもりです。私の 98NOTE LaVie にもFileMakerを入れます。できることは端末でなくパスワードで決まる。そうなると運用する各担当者の責任が可視化されるでしょう。私の責任も可視化されますね。もっともそれが経営責任であることは言うまでもありません。見えてるボトルネックは怖くない。怖いのは見えないこと。だから可視化が重要なんです。だって見えてたら助け合えるからね。今回の変更点はこんなところですが完成したわけではありません。システムとは完成しないものなのです。さて他にも考えることがあります。夏には Windows 98 がリリースされます。それから無停電電源装置(UPS) や 100BASE-TX の機器が安くなってきてます。バックアップもフロッピーでなくMOにしたいです。それぞれ導入について話し合っていきましょう」


裕太の端末は IBM ThinkPad 560X になった。そして山下さんは SONY PCG-707 を購入。機種の違いは趣味だ。IBM ThinkPad 345C は2台ともそのまま予備機として事務所内に置かれることに決まった。ふたりはそれぞれ顧客マスターと商品マスターの担当者だ。どちらの端末にもFileMakerがインストールされていて、LANに接続して上位のパスワードでログインすればすぐに使用することができる。



営業部のあとふたりもおそろいで、IBM ThinkPad 560E にさせられた。最近は受注情報はメールで送るようになっていて、まだしばらくはそれでやる。山根さんも金山君もどうでも良さそうだったのに、新機種に触れてみたら興味が出てきたようだ。IBM ThinkPad 500 と IBM ThinkPad 230CS はお蔵入りになった。工場の上の片隅で次の出番を待つのだろう。


近いうちに営業部専用の受注入力画面を用意すると社長が言った。なんでもそこで入力した受注情報は未確定の受注という状態になる。それを受注管理部が確認して確定するという流れだ。在庫引き当ては確定時に行われるので、複数の端末でどんどん入力をしても問題が起きにくい。仕事が楽になるねとみんなで笑った。



真子ちゃんは PowerBook 1400cs というノート型のMacを与えられた。ウェブマスターと呼ばれたり、カタログ屋と呼ばれたり、人によって呼び名が変わる。そんな彼女の名刺に印刷されているのはクリエイティブ担当だ。Macintosh Performa 588 の横にPowerBookを置いて使い分けている。どちらも Mac OS 8.1 を搭載。Adobe PageMaker 6.5J を覚えたいと最近言っている。それはまだインストールされていない。

写真やテキストなどの素材もデータベースにしたらという話を社長と真子ちゃんでしていた。どうも写真は難しいみたいで、それならこのままで良いとなった。ふたりして将来はデータベースからウェブページを書き出せたらいいねと言っていた。



さて工場である。メモリを強化されたPC-9821V166/S7にもFileMakerが導入された。壁紙だけが変わらずに赤い首輪のミケコである。


生産データ入力画面。以前の Excel 95 のテンプレートでは商品番号、生産数、計数値になっていた。ここでは右端が予測在庫になっている。内容はかなり変わった。まずこの画面では全角の英数字は半角に自動変換される。商品番号はアルファベットと数字、生産数と計数値は数字のみを通す。事務所で使った関数の再利用だ。


左側に商品番号を入れると商品名が下段に表示される。わかりやすいほうがミスをせずにすむと鈴木君が提案したから。そして右側に予測在庫も出てくる。予測在庫とはこれだけの現物があるはずだという計算上の在庫のこと。理論在庫に受注残を加えて計算される。


中央の列が生産数。その日に工場で作った商品の数を入力する項目になっている。今まで社長に提出されてきたデータがこれ。ここから入力できるようになったら、あとは日報メールを送るだけでいいよと言われていた。生産数が入るとそれが予測在庫に加算されて数字が変化する。工場では定期的に現物を数える。もし予測在庫と実在庫に差異があるなら、ここを書き換えることができる。


画面のいちばん下には「更新」というボタンがある。これを押すと予測在庫から逆算した理論在庫がFileMakerに戻される仕組みだ。


----------------------------------------

商品番号を入力: 予測在庫T = 理論在庫L + 受注残J

生産数を入力: 予測在庫T = 予測在庫T + 生産数P

計数値で補正: 予測在庫T ← 計数値C

[更新]

更新結果: 理論在庫L = 予測在庫T - 受注残J

----------------------------------------


もし更新ボタンを押さなかったら、その時はこの画面に何を入力していようと、FileMaker の中のデータは影響を受けない。


「裏技として生産数をゼロにすれば在庫修正だけができます。工場長と相談しながら使用してください。それとこれは先の話になるのですが、ハンディターミナルでJANを読んでCSVを作ることを考えています。うまく行ったらこの画面はその取り込みにも使えるはずです。棚卸しが楽になりますよ」


工場の予備機であるPC-9821V10と印刷システムとして余生を送るPC-9821Aeはそのままだ。休息するドットインパクト・プリンターは楽器のようだ。



忘年会にて。


「野球チームのように、ミスが起きた時は能動的に役割や配置が調整される。そういう連携プレーがうちの強みなんだ。私は技術者でなく社長だからね、どうしても至らない部分はあると思う。みんなにも助けてもらいたいし、外部の専門家たちともつながりを作っていきたい」

「社長、楽々市場の件はどうするおつもりですか。営業さんはやれるって太鼓判ですよ」

「専門家がそう言うならやってみたいな。面白いことがたくさんありそうだ」


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