フェルミのパラドックス
カスタマーサポートからの回答
平素は弊社サービスをご利用いただき、誠にありがとうございます。お問い合わせいただきました、共用サーバーにおけるSSLの導入について回答申し上げます。
誠に恐縮ながら、現在の仕様ではSSLをご利用いただく際、サーバーに対して「固定IPアドレス」を割り当てる必要がございます。弊社共用サーバーサービスにおきましては、複数のユーザー様でIPアドレスを共有する仕組みをとっておりますため、技術的にSSLを導入することが困難な状況にございます。
本件につきましては、弊社Webサイトの「よくあるご質問(FAQ)」にも記載させていただいております通り、現在サービスとしての提供は行っておりません。何卒ご了承いただけますようお願い申し上げます。
なお、独自SSLの運用をご希望の場合は、お客様専用の環境をご用意する「専用サーバーサービス」への移行をご案内しております。
専用サーバーへの移転に関するお手続きや、費用面などの詳細につきましては、個別のご要望に合わせて別途ご相談を承っております。ご興味がございましたら、本メールへの返信にてお気軽にお問い合わせください。今後ともよろしくお願い申し上げます。
----------------------------------------
社長が無表情なまま、予想通りの回答でしたと報告した。
「クレジットカード決済を代行するサービスはいくつか見つけた。だけどすべてSSLが前提条件。これは詰んだかもしれない。自社サイトは当面はこれまで通りの運用でやっていくことになりそうだ。それでは次に真子ちゃんの報告を」
手元の PowerBook 1400cs を見ながら報告を始めた。
「はい。まず専門誌の記事によりますと一般的な家庭用でのパソコン・モニターは15インチ SVGA(800×600) が主流です。それからこだわり派や仕事で使う人は17インチで XGA(1024×768) です。ノートパソコンなど14インチ以下の環境もおりまして、これは解像度はいろいろです。frameタグで左右に分けるレイアウトは便利ではないと考えました」
山下さんと裕太さんがうなずいている。社長は何も言わない。
「続きましてブラウザ戦争の戦況報告です。Netscape Communicator 4.0 と Internet Explorer 4.0 の割合は 6対4 です。Windows 98 がリリースされたら拮抗または逆転する可能性があると専門誌に書いてあります」
美香さんがため息を飲み込んだ気配がした。戦争は悲しいよね。
「最後に KANT-WEB で配布されていた scart.cgi の件です。ショッピングカートは問題なく動作しています。しかしお客様が使ってくれません。設置後の半月で 18件中14件が mailto: リンクからのご注文でした」
社長が思わず口を挟んできた。
「なぜ。レイアウトの問題なのか。カートは便利なのに」
「わかりませんが、工場の今川さんと鈴木君はまだ世間がカートに慣れてないんじゃないかと推定しています」
「しかたない。それならメールでもフォームでもかまわない。でも勉強は続けよう」
「レイアウトについてはアイデアを出し合っている段階です。面白そうなのが、コンパクトな商品一覧とメールフォームを表示しておいて、JavaScriptで画像や説明文を出させるようにする案です」
「それは却下します。JavaScriptはオフにしてる人が多い。まあ、ここは正攻法で行こう。メーカーの本分は信頼と誠実だ。気をてらうのは良くない」
そして出来上がったのはこんなレイアウト案。
フレームはやめて一枚のページにする。まずはヘッダー部分にロゴと会社名と会社案内へのリンク。トップページではカテゴリーを大きめに表示。それ以外のページではパンくずリストを配置する。それから table を組んで、商品名と画像を1〜3個並べる。テーブルの下段に商品説明。
次がメールフォーム。見やすさと使いやすさが両立するよう、商売の神が宿るくらい細部を作り込んだ。フォームの下には、メールでのご注文も受け付けております <CLICK> と書いた。さらにその下にはまたテーブルが来る。つまり商品テーブル、フォーム、商品テーブル、フォーム、商品テーブルの順番になる。スクロールして見えなくなるなら、もうひとつフォームを置いたらいいじゃないかという、ユーザビリティにはちょっと詳しいと自称する鈴木君のアイデア。最後のフッターにはお買い物方法とお支払い方法。会社の所在地も書くことにした。
この際、編集可能なテキストレイヤーが便利だと考えたため、Photoshop 3.0J を 5.0J にアップグレードすることにした。これはバナーやボタンを作るのに重宝した。
「まあ使いやすいんじゃないか」
社長チェックの結果はGOだ。これが私たちの新ウェブサイト。できることを正攻法で。だけど社長はこうも言っていた。お客さんが来てくれないならこちらから会いに行こうか。




