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フーガの技法

商品マスターは剣。顧客マスターは鎧。これらは生き抜くために必要な武装だ。なぜ今まで手ぶらで平気だったのだろうか。


道具は Microsoft Excel 4.0 と秀丸エディタを用いる。考えながら手を動かすには文房具的なExcelが似合うと感じた。秀丸エディタは雑誌の付録FDに入っていたものだ。



商品マスターの材料は事務所の棚のフロッピーだけではなかった。これはただのカタログ原稿だ。カタログに掲載されていない定番もある。定番でない商品や廃番商品もある。廃番商品は倉庫から現物が出てきたり、過去の記録を参照することがあるから登録しておかないと困るかも知れない。ここ数年、定廃番は変動していないはずなので以前のリストが欲しい。

工場で探し出した10年前のカタログは現在のものと同じ写真を使っていた。掲載商品の差異もすこしだけある。入社後の数年間は工場で勤務していた。あの頃のものだ。


次に清書して帳面にした棚卸表を棚から取り出す。斉藤さんの字は読みやすくて助かる。最新のものはすべてテキスト化しよう。それから保存されている過去の分にも目を通す。10年分を見るのは大変だが差異は多くないはずだ。


倉庫を探索中にやってきた工場長と情報交換をする。するとやはり工場にも商品一覧という帳面が存在することが判明した。営業のものと同じにも見えるし、違うようにも見える。これは略称が混じっているのかな。どっちにしろ調べるしかない。

特注品の仕様書の束もあった。持っていかれると困るそうなので工場で書き写すことにした。持ち運べるパソコンがあれば便利に違いない。


他社のカタログ。他社の商品でもうちで売ってるものは登録する。現物が手元になくても、まだ売ったことがなくても必要だ。これは自社商品と同じくらいに膨大だった。だがかまわない。


空き時間も夜も休日も資料をテキスト化するのに費やした。社員たちはどう思っただろうか。ここで何をしているか気が付いた者はいるだろうか。こつこつ続けて素材を完成させたときには肌寒く感じる季節になっていた。



SKU (Stock Keeping Unit) をどう考えるか。一般的には流通単位あるいは在庫単位とされている。だがこれは商品マスターなのだから、商品を表現する単位と考えるべきなのだ。商品はすべて登録する。商品でないものは登録しない。


素材を理性の炎で熱し、叩いて伸ばしてまた熱する。


結合したデータを並び替えしながら項目を揃える。項目を変えてソートし直してまた揃える。何度も繰り返してだいたい揃ってきたところで、いちばん左に列を挿入。この列にオートフィルで一気に番号を入れる。これが仮の商品IDだ。

すでに付いていた番号はルールがまるでわからない。これはもう使えない。旧番号として別項目にしておこう。


半角スペース、全角スペース、連続スペース、タブ文字。これらは目で見たらただの空白だ。ファイルを秀丸エディタで開きなおし、正規表現をオンオフしながら半角スペースにする。

半角カナや全角英数字、機種依存文字は検索性を損なう。丸付き数字はカッコに入れた数字に変更。ローマ数字は半角英文字に変換して、省略文字は展開する。

カンマや句読点。商品には含まれにくい文字。うちの商品には使われていなかったはずだが、ルール化はされていたっけ。もしなかったらそう決めよう。特にカンマはCSVを扱うなら大敵。Comma-Separated Values の名前の通り、CSVでカンマは機能を持つ。間違いどころかデータを壊してしまいかねない。


同じ商品を違う書き方で別々に扱ってしまう。「ノートA」と「Aノート」が同じものであることは項目を見れば瞭然だ。だから統一することによって揺れが重複に変換される。重複はひとつを残して正とする。命名規則をもっと明確にしないといけない。



現行の自社の商品は100アイテムもない。しかし色違いが一緒になっているものが多く、すべてを整理すると200SKUにはなるだろう。さらに特定の相手にしか売らない仕様品があまりにも多い。特色や特殊仕様を完全に分離したら300SKUに届く。これらは通常の誰にでも売る商品と区別しなければならない。

派生品、セット売り、スポットの管理も難しい。属性や派生として扱うか、別テーブルに分けてしまうとか。Excelでそんなことができるのか。いやまとめて特注品という状態として扱えばいい。全体を定番、特注、廃番に分類するのが簡単だ。

特注の契約書にもマスターが必要だろうか。そして契約番号を商品マスターに記載する。それはたしかに必要だ。しかしすぐには無理だ。今後の課題がどんどん増えていく。


次に色を別項目に分割する。仕様または属性はひとつでいいのか。商品名が同一でも属性が異なれば別SKU。赤くて大きいのとか。それならどう分割したらいい。単純に属性1と属性2を作る。属性テーブルを別に用意する。属性という項目にまとめて入れる。どれなら使いこなせる。

方針が決まった。ノートを商品名とし、属性はスペース区切りの文字列にしよう。"ノート", "A4 細罫 白" だ。表示する際に結合するのはそれほど重くならないだろう。もし重かったら結合したのを別項目で持たせたらいい。これなら便利に使えるのではないか。それにしても今まで自分もA4ノートと呼んでいたのに大丈夫だろうか。これが正しいと決めた以上は慣れるしかない。



仕上げに正式な商品番号を付ける。番号に意味は不要という考えもある。番号は変わらないが意味は変わるからだ。有意コードは組織や分類の変化に耐えられず、だんだんと意味を失う。一方で利点も明白だ。今まで伝票に商品名を書いていた社員たちは、目で見て理解できる番号でないと受け入れられないだろうな。それなら組み合わせでやろう。これは必要な妥協だ。

まずはカテゴリー。ノートはNT、メモ帳はMM、スケッチブックはSB。これに5桁の数字を合わせる。NT00001 ノート A4 細罫 白。



原価は製造原価、単価は卸売の単価、売価は希望小売価格。重量と入数。製造原価はいつの数字だろう。見直すルールは決まっているのか。これは要確認。商品を売る人間とも話すべきだ。だが営業部は若いのがひとりしかいない。


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