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ライトスタッフ 1/3

新入社員の田中君は入社初日から研修を受けることになった。まずは組織全体の説明。それからウェブサイトを見たりカタログを読んだり。電話番とFAX注文の入力。着慣れないスーツを気にしながらも、あわただしい日々だった。会社の人は聞けばなんでも教えてくれた。


「次にこの伝票の輪ゴムを外して、日付と名前の順番が揃ってるかをさっと確かめて。どうせ保管するだけだから厳密でなくていいよ」


段ボール箱の中には薄い伝票の束が20くらいある。それからB5の紙の束も同じくらい。田中君はまじめに話を聞いている。


「これって入力済みの伝票でしょう。捨てたらダメなんですか」

「法律で保存義務があるの。えーと、法人税の申告から7年だったかな。商法の重要書類だと10年。面倒だから一律で10年保存って前にいた山本さんが決めた。それでこの伝票の穴に紐を通して蝶結び。これを全部やるの」

「わかりました」


美香さんは手伝わずに黙って見ていた。


「次はこっちの紙のほう」

「これも伝票みたいですね」

「こっちはメールで来たご注文の記録。ネットは受注時には紙は使わないの。でも税務署がメールだけだと証拠として認めてくれないから印刷して保存してる」

「はあ、なんか無駄な気もしますけど」

「私もそう思う。でもお上には従わないといけないでしょ。これは穴がないから二穴パンチで開けるとこから。それから紐で閉じる」

「はい」


ばちんと穴を開ける音、紐で閉じる音、段ボールに片付ける音が続いていた。箱の側面には書類の種類と今日の日付がマジックですでに書かれている。


「終わったらガムテープで閉じて。それから工場の上の倉庫に保管してきて。場所がわからなかったら誰かに聞いて」

「はい、わかりました」


田中君は箱を抱えて工場に向かった。



階段の上の縞鋼板の床は頑丈そうに見えた。2階の高さがあるのに面積は半分以下。中途半端な倉庫空間だった。窓はなく蛍光灯の数は少ない。


右手には木製パレットが8枚並べられ、軽そうな品物が雑多に置いてある。きちんと組んであるので管理はされているのだろう。折りたたんだ小さな台車が壁に立てかけてある。

奥に進むと事務机がふたつとパイプ椅子。机の上の段ボールには中身が雑に記載されている。熱転写プリンターPC-PR101TL、PC-9821Ae本体、EPSON PC-486SE 本体、PC-9801BA本体、キーボード、バスマウス、説明書、ソフトウェア、LANケーブル、インクリボン。


「もっと奥だよ」


案内してくれた修君が指差したのは倉庫の右奥の角。ブルーシートの上にいくつもの段ボールが腰の高さまで積まれている。


「ここが伝票置き場。手前のほうが新しいって聞いてる。そこに置いてくれたらいいから」

「ありがとうございます」

「事務所の仕事はどう。だいぶん慣れた」

「パソコンの操作は難しくなかったです。でも電話番は商品がよくわからないのでヒヤヒヤです」

「そう。でも慣れた頃にはこっちの研修だから。バイト君といっしょに作業に入ってもらう。やってみたらわかるけど単純労働だよ」

「はい。でも体を動かすのは苦ではないです。がんばります」


修君は下から呼ばれて、階段を音を立てずに降りていった。しなやかな柔道家みたいな印象を受けた。


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