午後の顔文字
そして午後。受注時の商品の種類や金額の合計の説明を簡単にやり直したあと。
「受注管理画面です」
「やっぱりExcelっぽいですね」
「苦労しました。機能は意外と早くできたんですが真子ちゃんの違和感チェックをなかなか通らなくて」
「機能もExcelと変わらないみたいです」
「そんなことない。前は日付を指定したら受注日が一致するレコードが出てくるだけでした。今回は日付は範囲指定になりました。その日に最初に使用する際には当日の日付が入っています。日付は変更して検索することができます。チェックボックスで未発送、未収金、仮受注、取消済を表示できます。組み合わせることも可能です。選択して管理ボタンを押すと注文管理画面に遷移します。注文した商品を変更したり、取り消したりすれば金額は再計算されます。検索条件はFileMakerを終了するまで覚えていますので、戻った時にも次に受注管理画面を使う際にも勝手に検索されます。それで注文そのものの取り消しは受注管理画面からしかできないんです」
表示項目がすこし違うものの、基本的にはExcelでの仕事と変わらないように見えた。
「では注文の取消の操作をしてみてください」
本当に注文取消しますか (T_T)
「これは」
「島田君にお願いしました。顔文字は聞いてないんだけど、このままでいいですか」
「大丈夫です。表示が変わりましたね」
「はい。左上の表示は受注中、仮受注中、取消済で変わります。キャンセル後の復活は前と違ってできなくなりました。消したら経緯がわからなくなりそうだったので。復活でなく新規の受注として再入力してもらいますが、お客さんには復活と言ってもかまいません」
真子ちゃんが島田君を視線で批判していた。あとでちゃんと謝っておけよと社長は苦笑した。美香さんも困り顔だ。
「印刷ボタンが変わってますね。帳票書出になってます」
「はい。ええと、これは帳票印刷のテスト中に問題が起きまして、砂時計のまま操作できなくなりました。海外の専門家によれば、メモリをもっと増やしたら安定するみたいです。けれど確実ではないということです。64MBも積んでいて足りないというのは不思議なので原因は別かもしれません。帳票印刷は今まで通りにExcelでやってもらいます。左端にチェックを付けたものだけをCSVで書き出してExcelに渡すんです」
「応答しなくなったら Ctrl+Alt+Delete ですね。大丈夫だったんですか」
「大丈夫でした。でも何回も起こったので怖くなりました。そのうち壊れる気がしました。ここはExcelのほうがいいです。それからミシン目のA4用紙で納品書、受領書、出庫票を出す方式からA5での個別印刷に変更します。一度に注文できる商品の種類が無制限になったためです。1枚に10種類まで入ります」
「それより多かったらどうなりますか」
「あふれたら消えます。でもそれはまずいので Excel 95 側でページ分割を作ってるところです。なかなか難しいです」
その後、営業部の3人が書いたダミー伝票を入力して納品書を印刷するところまでをやってみた。ダミー伝票は入力後に箱に入れる。受領書が戻ってきたらホチキスする。美智子さんが受注番号順に並べ替えて輪ゴムで止めて保管する。
営業から工場に伝票を送ることはなくなった。すべてが受注管理部を通る。プリンターから納品書と受領書を印刷したのを箱で送り、出庫票の代わりに出荷指示書のCSVをフロッピーで渡す。運用が安定したらフロッピーから共有フォルダに変えたい、それとももっと良い方法がないかと社長と島田君が話し合っている。
ふだんは受注入力の業務をしない人たちも今日は順番に練習した。夕方になって社長が自分のパソコンを操作しながら言った。
「工場にもプリンターを置いたら箱がなくなります。そういうことも考えたんですけど、あんまりいっぺんに変えたら大変だからね。今はここまでです。不完全でも未完成でも前より不便にはなってないと思うんです。では朝の状態に戻します。明日からよろしく」
もうかなり変わってますよ、自信ありませんと以前の美香さんは言った。今はまわりが助けてくれるから大丈夫。心配はない。
PC-9821V200/M7と入れ替えになったPC-9821V10は事務所の共用機になった。使うのはほとんど山下さんと裕太。ふたりの外回り用端末 IBM ThinkPad 345C でFileMakerは無理なのだがここで見られればいい。空いてなければ美智子さんや斉藤さんに見せてもらうことも難しくない。
工場には 98MATE VALUESTAR (PC-9821V166/S7) が設置されて壁紙がミケコに設定された。PC-9821V10は無地の壁紙に戻されて真横にスライド。2台になった。
ゲームをインストールしたらいけないけど、初めから入っているものまでは文句を言われない。工場長もマインスイーパーで遊んでると今川君から聞いた。
年度が変わり、消費税率が3%から5%になった。税率マスターの数字を書き換えて完了。単一税率で本当に良かったと社長が笑いながら言った。将来、複数税率になったらどうするんですかと聞いたら、そんなバカなことはあり得ないとまた笑った。
それからしばらくは問題なく日々が過ぎた。金山君が交通事故を起こしかけたり、林さんがインフルエンザで死にかけたりしたけれど、業務には大きな問題はなかった。




