表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
流星マスター  作者: TSUJIMO


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
43/84

インクの小瓶

「このアシスタント、美香さんに似てますよね」

「何について調べますか」

「似てる」

「職場でこんな派手な服は着たくないよ」


斉藤さんと美香さんが雑談しているところに社長が戻ってきた。


「ただいま。ふたりだけですか」

「おかえりなさい」

「これからお昼ですか」

「モスはずいぶん混んでたよ。景気がいいのか悪いのかわかんないね。これあげる」

「ありがとうございます」


左手のコンビニ袋からプリンを取り出して渡すと斉藤さんはスプーンを取りに行った。美香さんは招き猫の横にお供えしている。社長は自席できんぴらライスバーガーを取り出した。


「家庭用プリンターで使える便箋とカードがウェブサイトで売れてますよ」

「特集ページに効果あったんだ」


小さな写真が4枚とストーリー。Wordで手紙を書く。インクジェットプリンターで便箋に印刷する。切手を貼って投函する。受け取った人が喜ぶ。


「あれ工場長が出てきてびっくりしました」

「山下さんがご自宅まで撮影に行ったらしいですよ」

「ワープロ専用機もそうだったけど、プリンターとパソコンは新しい文房具なんだろう」

「とくに Word 97 は書き方まで教えてくれます。新緑の候、ますますご清祥のこととお喜び申し上げます」

「初めは無駄な機能に思えたけど、でもあれで手紙を書き始める人がいるんだから。過ごしやすい時季とはいえ、ご無理をなさいませんようご自愛ください」


社長はモスチキンとオニポテに交互に取りかかった。


「業界全体を見ましてもペーパーレス化が進んでいるのはビジネス用途だけのようです。家庭需要の増加が補っています」

「どうかな。ずっと安泰な会社なんてないよ。半導体や自動車だってどうなるかわからないくらいだ」

「社長は悲観的なんですか」

「そんなんじゃないよ。襟を正しただけ」



しばらく黙って食事を続けたあと、食後のコーヒーを飲み始めた社長は何かを取り出した。


「これ、かわのインクさんの。工場を見に行ったら最後だからってくれた。記念品だって」

「インクじゃないですか」

「うん。最終ロットのおすそわけ」

「残念でしたね。ファンも多かったのに」

「しょうがないよ。万年筆用のインクだけじゃ続けられない。最近は円安だから輸出に望みをかけてたけど、まあ力尽きたみたいだ」

「どこかに飾っておきますか」

「誰かが使うのがいちばんいい。誰かいないかな」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ