プランC 1/2
工場の生産データには問題があった。担当者当番制の弊害で全角英数字で商品番号や生産数を書き込んでしまう人がいる。それもわかっていての、ついうっかりだ。CSVで FileMaker Pro 3.0J にデータを渡しても確認なしで読み込ませることは怖くてできない。事務所ではすんなり運用できたのに。どこかにバリデーションを入れるのが正解か。Excel 95 で厳密な入力規制は無理なのか。頭を悩ませる。
工場へのFileMaker導入を前倒しする。事務所のFileMakerとは無関係の孤立運用になる。入力のためだけの装置。それもひとつの方法だ。いずれはちゃんとした形で使用するつもりなので、まったく無駄というわけではない。だが工場への導入は決定事項ではない。きわめて有力な将来計画にすぎない。それを決定してしまっていいのだろうか。こんなことで。全体の計画がおかしくなるのではないか。とにかくこれをプランAとする。
このままというのも考えられる。過渡期を人力で乗り越えるというのは工場だけの話ではない。いつものことではないか。ただ自分以外の誰かにまかせたい。誰でもいいわけではない。たとえば工場長に送信前のチェックをお願いするとする。それは当番制を押し付けた自分の方針に反する。では事務所の者は。こんな雑用は誰の職域にも当てはまらない。だから自分でやっている。あ、雑用係がいたか。でもあれを頼りにして大丈夫かなあ。とにかく人力でどうにかする。これがプランBだ。
そしてプランCが採用された。
「そういうわけでテンプレートを作りましたので、当分のあいだはこれを使って生産データの作成をお願いします」
社長が工場の PC-9821V166/S7 を操作して事務所の自分のパソコンから取り寄せたのは、工場で使っている生産データ入力用のExcelファイルと同じに見えるもの。
「すこしだけ修正しまして、書式を作ったんです」
記入用のシートはフォントが「MS ゴシック」でサイズもやや大きめに設定されていた。
「これに記入してデータを作ってください。このフォントは全角の見た目がぜんぜん違うのでわかります。誰にチェックしてもらうか考えてみたんですけど、自分で気付けばいいじゃないかと思ったんです。これならミスが減りますよ」
ミスが減るなら受け入れないわけにはいかない。作業量が増えるわけでもないのだから。




