電気街の喫茶店
工場で実験的に動いていたExcelによる在庫管理、すなわち竹山式在庫ノートは実用可能な段階に達したと判断した。
作業日報にはその日に生産した製品の数量以外に工場のExcelで計算された在庫数が書かれるようになっている。実在庫とどれくらい一致しているか、どのように補正するのが効率的かを話し合って確かめてきた。この数字を生産計画に適用する方法。年末棚卸しの結果との比較。いずれも及第点を与えられる。
竹山式在庫ノートは生産頻度の低い製品や資材在庫も管理している。運用次第でいろいろ使えるはずだ。
生産した文房具は工場にある間は製品と呼ばれる。それが出庫されたり、営業の在庫問い合わせに答えたりで外部に接したときに商品となる。作ったその日のうちに商品にするべきだ。これから作業日報を数字とそれ以外に分解する。数字は生産データとして提出させる。それ以外の課題、要望、気づきを生産日報と呼称して、メールでの提出を義務づける。それらの提出をもって商品そして在庫とする。
事務では受注・納品・集金を一括管理できている。
営業部の方針は売れ筋を集中させて効率を高めることだ。
商品企画部の意図は売れにくい商品を捨てずに需要と供給の裾野を広げること。
電話とFAXの注文にくわえて、ネットという販路が見えてきた。
これらが噛み合った仕組みはどんなに美しいだろうか。剣と鎧を装備したひとつの軍団だ。
営業日報もメール化しないとな。裕太に書式を考えさせてみよう。
事務経理部は受注管理部に改組する。備品管理や清掃を職域外にしよう。でも手が空いてたらやってもらうけど。
考えることが多い。
しかし最優先にすべきは在庫管理を含んだ新システムへの移行。それがこれからやることだ。
後日。寄り道したがる島田と斉藤姉妹を引き連れてソフマップのパソコンソフト売り場を視察した。大企業じゃないから買えるものでやってみるしかない。
カフェ・ベローチェでアイスコーヒーを飲みながら話し合った。
「ソフマップにあってリレーショナルという条件なら、候補は FileMaker Pro 3.0J、Microsoft Access 97、桐 ver.6 でしょうか」
「それほど複雑な使い方を考えてるわけじゃないから機能的にはどれでもいけると思う」
「店員のおすすめはAccessでしたね」
「専門家の意見は聞くべきだ。でも正直自信がないんだよ。ExcelのVBAではそれほど複雑なことはやってない。島田君はやれるの」
「ぼくもVBAはあまり」
「桐もよくわからないなあ。人気があるならその理由はあるんだろうけど」
「じゃあFileMakerになるでしょう。あれって Performa 588 に入ってるClarisWorksの仲間ですか」
「ClarisWorksとは機能がぜんぜん違いますよ。あれも使い方次第ですけど」
「よし。今夜考えてみる。それでこの中から選ぶ」
まず美智子さんの IBM ThinkPad 230CS が営業の金山君に譲渡された。金山君はPHSで十分ですよと固辞しようとしたけど強制された。営業日報をメールで送るように。金山君がさぼったら裕太に責任を取ってもらう。これは業務命令です。
美智子さんには社長のPC-9821V13が渡された。社長は 98NOTE LaVie (PC-9821Nr150/X14F) を購入した。MOからファイルを書き戻そうとして、しまった、SCSI がないと焦っていた。それから NEC のカタログを前に島田君とあれこれと相談をしていた。
翌週にタワー型パソコンの 98MATE VALUESTAR (PC-9821V200/M7) が届いた。いつもお願いしている業者さんが届けてくれて青札ですと言っていた。まずはメモリを64MBに交換。それから社長と島田君が何日も作業をしていた。斉藤さんや真子ちゃんや山根さんや工場の人が新型機の前にときどき呼ばれて話をしていた。
パソコンの入れ替え以上の何かが起ころうとしているのだ。




