銀河鉄道 3/3
「オオミヤからの要請は、JANコードだけではなかったのです」
「そうなんですか」
芝居がかった口調の社長に素で応える裕太君。
「かねてからの要請に従い、化粧品・日用品の業界VANに加入しました。P-NETという情報流通サービスです。基本的にメーカーと問屋しか入れないのです」
きょとんとした顔が朝の事務所に並んでいた。山下さんもだ。
「誰も驚いてないね。オオミヤさんのところには小売店からの注文がFAXやPOS通信で集まります。それをオフコンに入力して、束ねた注文データが夜間バッチでP-NETに自動送信されます。それで完結したいのに、うちにはまたわざわざFAXで送らねばならない。それが面倒なのです。まあ加入手続きはしばらく前からしていて、ようやく認められたところです」
「それで何が変わるんですか」
「オオミヤではなくP-NETからFAXが来るようになります。つまりここでは何も変わりません。数年前にFAXサービスが始まるまではパソコン通信だったので助かります」
社長は EPSON PC-486SE の14インチモニターを猫の頭のようになでながら、しばらく黙っていた。
「P-NETはただの通信網。通常の注文以外の内容ならオオミヤからも電話やFAXが来ます」
社長は見積書やカタログのようなものを486SEの前に並べて、指差ししながら説明した。
「これがSEIKOの同期モデムで価格は20万円。この機種はキャプテンシステムでも使えるタイプです。こっちがこのモデムを使うための拡張カードで10万円。JCA手順対応のEDIソフトが10万円。本来はこれらが必要でした。もっとも機材を導入すれば他社の商品を見られるので、その価値はあるのかもしれません」
「では費用はかからないのですね」
「加盟料だけで10万円。FAXサービス利用料はオオミヤさんが負担することになってます。でも何か理由を付けて1万円くらい取られることになると思います。それから商品登録にもお金がかかります。P-NETの商品マスターに登録してもらわないと注文が流れないのです。これは山下さんにお願いします」
JANコード、商品名、希望小売価格、ケース入数、単品重量、ケースのサイズを決められた書式で記入した商品登録申請書を用意する。商品名は半角カナとスペースで20字。あとは数字が隙間なく並ぶ、可読性をまったく考慮していないデータだ。もちろんエラーが出たら登録は失敗する。銀行振込で1SKUで1,000円の登録料を支払い、テキストファイルをフロッピーで郵送する。
この申請書だってしばらく前までは紙に手書きだったのだ。世の中は進歩している。
P-NET登録名称を商品マスターにも追加するのが正しい。JANの隣だ。だが半角カナをExcelに乗せるのは気が進まないから全角で入れておこう。単品重量や入数も重要だ。どうせならP-NET用のデータをExcelから出せるようにしたらどうだろうか。
「あと大事なことがひとつ。P-NETに商品を登録するとオオミヤ以外の問屋からも見られます。注文を流すには相互承認が必要なので、いきなり注文が来ることはありません。だけど資料請求や問い合わせの可能性はあります。その場合の窓口は営業部です。裕太君と山根さんはうまく応対してください。地方出張もあり得ますよ」




