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スイングバイ

また新入社員が入った。ひとりは営業部に金山君。中肉中背で健康そう。やや長髪。お得意様まわりを分担する。新規を開拓しても既存客を逃したら販路が広がらない。重要な仕事だ。山根さんがせっかくのノートパソコンを事務所に置きっぱなしで使う人なので、じゃあ金山君もそれをいっしょに使えばいいということでパソコンは増えなかった。パソコンを買うのが趣味だと周囲から思われている社長の判断にしては、ずいぶん普通だと思った。


山根さんの新規開拓は大きいところばかり狙おうとするので空振りが多かった。それでも取るときは取る。取引はすこしずつ増えた。素直であきらめの悪い性格は向いていると思った。


工場に配属の修君、竹山修君は生産が増大したことに伴う普通の増員だ。工場長と同じ苗字。名前の衝突をどう解決するかが見物だとおかしな期待をしていた社長は、すぐに修君と呼ばれるようになったのをつまらなそうに見ていた。


すこし手が空いた真子ちゃんは商品企画部の手伝いが多くなった。山下係長専用の特別なカタログ、それはたんに説明資料と呼ばれていたが、そういうものをいっしょに作らされている。


それからさらに。真子ちゃんが雑用係を事実上、卒業してしまったので、その代わりの雑用係で中途入社したのが島田君だ。

工業高校を卒業して半年ほど何もしていなかったという。ハローワークの求人票に雑用と書くわけにはいかないので「OAアシスタント」と書いたらやってきた。自宅では PC-9801NS/T を使っているとか。

各部署のパソコンで仕事している人を補佐する仕事ですよと説明して、それから彼専用のパソコンとして Gateway 2000 P5-100 を購入するので、それでいろいろ手伝って欲しいと言った。そうしたら簡単に入社が決まった。


FAX で注文していただいていたお客様数人がメールで注文するようになった。また FAX に戻るかもしれないけど、こっちも経験になるから歓迎すると社長は言っていた。


工場の人たちがお昼のインターネットのために事務所に来るのはなかなか難しい。だからみんな自宅でインターネットをするようになった。そのおかげで習熟が進んだのか、作業計画や仕入れ計画などをパソコンで作って、工場長に対して提案するようにもなっていた。工場長のほうも反論や指摘をするので、つまりは議論と話し合いのある職場になっていたのだ。


事務と経理でまとめた販売実績を元に、営業部と商品企画部で売り上げの見込みを作る。それを生産計画と仕入れ計画に反映させた。動きの少ない一部資材では発注点管理も工夫された。


パソコンの練習として始まった資材在庫の管理は、製品在庫の管理にも広がった。やがて日報に主要商品の日次在庫の数字が載るようになった。ときどき様子を見たり、倉庫で在庫を数え直したりしていた社長は、そろそろやれるかなとつぶやいた。


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