天文対話 1/2
今日は招き猫が右を向いている。昨日は左だった。美香さんの気分によって変わるものと考えられるが法則がまったく不明だ。
「美香さん」
美香さんが持っていた住所録と呼ばれるノート。内容は同業者や運送屋を集めたものと説明されていた。顧客情報を書き留めた新規ノートとは対になるもので、手書きしたり名刺を貼り付けたりしている点はまったく同じだった。
「つまり筆まめ住所録と手書きの新規ノートが顧客情報で、それ以外がこっちの住所録ノート。それで間違いないですか。両方に載っている人はいませんね」
「お客さんでないのは全部そっちに入れてますので重複はないです。でも業者さんの情報はそれだけではないですよ。工場でも発注用の電話帳を作ってるはずですし、経理でも台帳を持ってます」
発注用の電話帳、それを確認する必要はあるだろうか。経理の斉藤さんが持っている情報にすべて入っていると思う。発注すれば必ず支払いが発生するのだから。
「わかりました。斉藤さんにも確認してみます。このノートは預かっててかまいませんね」
斉藤さんが書類棚から取り出したのは金銭出納帳セットと彼女が呼ぶバインダー。背ラベルがないので本人しかわからないのは問題だ。赤は請求書や領収書の控え。手元には3ヶ月分を置いておいて、それより古いのは倉庫の保管場所に移動されている。青が探していた仕入先台帳だ。内容は社名、住所、電話番号、振込先口座 (銀行名・支店名・口座番号・名義)、支払条件の契約書ベースの記載。新しく取引があるたびに手で書き写されている。
「前の経理の山本さんがやっていたのを引き継いでいます。でも振込の発生しない業者さんはここにはありません。先月来てもらった水道屋さんには美香さんが現金で払ってましたよね。そういう業者さんは美香さんのノートにしか載ってません。領収書を探せば出てきますが」
そうか。小口現金用の名簿は別なのか。
「経理か事務のどちらかでお金を支払う。これは確実ですね。それなら顧客マスターと同様に業者マスターも整備しよう」
「社長がされるんですか」
「そのために EPSON PC-486SE を買ったんです。だけど問題がありますよね」
「なんでしょう」
「美香さんは顧客と業者の重複はないって言ってたけど、そんなはずないんだよ。印刷屋さんから特注の注文を受けたことがあるもの」
「重複があったら良くないですか」
「すぐには困らない。ただ把握しておかないと、支払いの相殺や郵便物の二重発送があるかもしれない」
「それならあとから調べたらどうでしょう。Excel 5.0 なら電話番号の一致で探せると思います」
素材をExcel化するのは手作業。空いた時間や夜間に作業をしたが10日以上かかってしまった。電話番号がハイフンあり、郵便番号がハイフンなし、住所は3分割。これは顧客マスターの形式だが、元は筆まめ住所録のデータ形式だった。今後もこれを踏襲することになるのだろうか。
当初は統合してひとつの取引先マスターにすることを考えていた。古い顧客は00001からの連番。新しい顧客は10001から始めた。そして業者は90001からにする。しかし共通項のほとんどない顧客と業者を結合したら複雑になりすぎることに気が付いた。できるだけ長くExcelでやるつもりなので分割にするのがシンプルで正しいと思う。番号だけは重ならないようにしよう。
もし重複が存在したらどのようにデータを持たせるか。顧客マスターに業者番号を持たせるべきか、業者マスターに顧客番号を持たせるべきか。相互に番号を持たせるのは循環参照になってしまう。顧客マスターをあまりいじりたくない。なら新しい業者マスターに顧客番号を載せるしかない。
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=IF(COUNTIF(顧客マスター!D1:D16384,D2)>0, INDEX(顧客マスター!A1:A16384, MATCH(D2, 顧客マスター!D1:D16384, 0)), "")
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電話番号の一致を探して、もし存在するなら右端のJ列に顧客番号を入れる。砂時計とともにHDDが騒ぎ出し、やがて結果が表示された。目視で確認すると重複は数件程度。思ったほどではなかった。J列をコピーして文字列として貼り付ける。これで完成。




