アイコンパレード
秋にまた中途採用があった。フロム・エーを見てアルバイトに応募してきた真子ちゃんだ。はじめは坂上さんと呼ばれていたが、なんとなく真子ちゃんになった。本人もそれでいいと言った。地方の高校の美術学科を出て上京したらしい。前職は聞いていない。
アルバイトの内容は事務、営業、商品企画部の手の足りないところを臨機応変に手伝うという変則的な仕事、つまりは雑用係だった。しかし常に忙しいというわけではなく、手持ち無沙汰にしているところに社長がいつものように唐突に声をかけた。
「カタログでも作ってもらおうかな」
カタログ制作は社内で最後まで作るのではなく、素材を集めてラフを作るところまでだ。そこから形にするのは印刷屋さんとその関連会社のデザイン屋さんだ。
裕太と山下さんが決めて社長が許可したカタログ掲載リストを元に、説明文を Excel にまとめた。説明文は昨年のカタログやダイレクトメール、その他の資料から集めて字数を揃えたり、読みやすくしたりした。何もないところから書き起こしたテキストもけっこうある。工場長の手帳からいただいたネタもたくさんあって、教えて欲しいことを壁の穴から工場に送ると、手帳から書き写した商品説明が戻ってくるのだ。社長からは、全部もらってしまえと言われた。
カメラマンさんから受け取った商品写真は、まず封筒に入れてラベルを貼って整理した。それから使うものをじっくり選んで、Excel ファイルに写真番号を書き加えた。最後に別シートにおおまかな配置図や注意事項をまとめた。
その仕事ぶりを確認しつつ、社長が満足そうに言った。
「次はホームページだ。カタログ素材を流用したらいい。うまく整理されてるからいけるぞ」
そして照れている真子ちゃんにこうも言った。
「もうこのまま社員になりませんか。クリエイティブ担当ときどきお手伝いみたいな感じでどうですか」
専用の制作環境がないといい仕事ができないねという話から、真子ちゃんが高校時代に教員室で見た Macintosh に憧れたという話題になり、使っていた先生は自分でLCにいろいろ付け加えてたんですよという話に脱線していった。
Macintosh Performa 588 と EPSON GT-5000 ART が届いた日、真子ちゃんは正式に社員になった。
キーボード上の起動ボタンを押すとジャーンと和音が鳴り響き、Performa 588 の画面に四角い笑顔が現れる。笑顔の下のプログレスバーが進行するのにあわせて、画面の下にイラスト付きのパズルピースが並ぶ。毎朝これを見ると楽しい一日の始まりという感じがした。事務主任の美香さんが私にも起動ボタンを押させてと近寄ってくることもあった。共感がある。
Performa 588 は AppleTalk + TCP/IP でLANに参加した。社長がおもしろがって設定を調べていた。共有フォルダも利用可能だ。
それでも写真はとてもサイズが大きいことがある。だから結局はMOで受け渡すほうが楽で安心だった。MOを使うのは今のところ、社長チェックと Performa 588 と保存だけ。
雑用の合間にホームページの準備をしている。HTMLの本を読み、クラリスワークスのドローでホームページのレイアウトを考えた。このクラリスワークスはホームページのボタンを作るにも良さそうだと思った。
商品写真のスキャンもちょっとずつやった。Photoshop 3.0J で彩度やトーンをちょっといじったり向きを調整したり。社長が言うには、できるだけ大きな画像を作って保存しておいて、ホームページ用の縮小画像とは別にしておいたほうがいいとのこと。言われた通りにする。
Photoshop はとても重くて使いにくかった。初めて使うときに買った Mac Fan の付録のCDに SoftwareFPU という無料で使えるソフトが入っていて、これを入れたらかなり快適になった。
比野文具株式会社の登場人物
比野真二 社長 PC-9821V10
山下 商品企画部係長 IBM ThinkPad 530CS CASIO QV-10A ホンダ・トゥデイ
裕太 営業部主任 IBM ThinkPad 530CS
山根 営業 IBM ThinkPad 700C
斉藤さん 経理 PC-9801BA
美香 事務主任 PC-9821V10
美智子さん(斉藤美智子) 事務 IBM ThinkPad 700C
竹山 工場長 Filofax Winchester PC-9821V10
今川 工場
林 工場
鈴木 工場
真子ちゃん(坂上真子) クリエイティブ担当ときどきお手伝い Macintosh Performa 588 EPSON GT-5000 ART
共用 EPSON LP-1500
お蔵入り PC-PR101/T101 PC-9821Ae




