↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
10/113

ロールアウト

美香さんが出社すると、事務用の壁際の机の上にPC-9821Aeが移動されていた。机の背中側にどこからか持ってきたベージュのカラーボックスが置かれていて、書類や筆記具はそちらに移動していた。ボックスの上に小さな紺色の座布団と招き猫。伝票箱が机から落ちそうになっていた。


「社長、おはようございます。これはどうしたんですか」

「おはよう。カラーボックスはうちにあったやつです。猫はボックスの上にあったのをいっしょに持ってきただけ。気にしなくていいです」


猫じゃなくてパソコンのことを聞いたつもりだったんだけどな。それに気にしなくていいと言われても困る。招き猫がこちらを見ているようだったので向きを変えておいた。これで安心。


「FAXの注文は来ていなかったんですか。きれいになっていますが」

「そうなんだよ。使おうと思ったのに今朝はひとつも来てなかった。仕方がないからダミーのデータを入れておいた」


不思議なことを言う社長を放っておいて時計を見る。朝礼の5分前。



経理の斉藤さんの隣にはもうひとりの斉藤さんが笑顔で立っている。よく似た妹さんだ。斉藤さんは真面目なジャケット、妹さんはチノパンとセーター。色違いのバレッタ。どこかで事務員をしていると聞いたことがある。


朝礼が始まり社長が小さく頭を下げて話し始めた。


「まずは勤務体制と人事についてお話があります。経理の斉藤さんは本日より週5勤務となります。また事務員として斉藤さんの妹で斉藤美智子さんが入社することになりました。おふたりとも斉藤さんになるので名前が衝突していますね。どう解決したらいいでしょうか」

「じゃあ私は今まで通りの苗字読み、妹は名前で」

「それでは斉藤さんと美智子さん。美智子さんも週5勤務です。そして4月より週休二日制に移行することとしました。法定労働時間の短縮に対応するためです。4月以降はここにいる全員が同じ勤務条件になります」


労働基準法が改正されて労働時間の上限が週40時間に短縮される。移行期間があるのですぐに変更しなくても大丈夫らしいが、うちは法律に合わせることにしたようだ。他の会社ではすでに土日休みを導入しているところもあった。


「それから昨年入社の山下さん。営業部に配属されて4ヶ月です。メーカーの仕事には慣れましたか」

「はい。先輩のご指導をいただき、お得意様や売り場を回っております」

「すでに通達のとおり、山下さんは4月より商品企画部に異動になります。営業は腰掛けと思わず学べるだけ学び取る姿勢で、責任感を持ってお願いします」

「はい、しっかり努めます」

「新卒採用について。予定ではふたりが入社します。ひとりは工場。ひとりは営業部。営業部はふたり体制のままです。裕太君は引き続き新人指導になります。そこで入れ替わりと同時に主任に昇格させます」


だいたいみんな知っていたので驚きはない。ただ裕太だけが真面目な顔をしている。しばらく前にごみ箱にマイルドセブンが箱ごと捨てられていた。本当のことはわからないけど、社長に何か言われたのかもね。


「人事についてはこれで終わります。次に業務について、ちょっと長くなるかもしれません。工場や営業にも見て欲しいのですが、予定があるならそちらを優先してください。可能な人だけ残って見てくれればいいです。今朝は掃除はなしです」


工場の今川君と林君は工場長の顔をちょっと見て頭を下げてから出ていった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。