↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
99/112

10ー5 伝説級の装備、作りたくありません?

ノア視点になります。

 深夜。王都魔法生物研究所。

 若き天才ノア・コーエンは、山積みになった研究資料に埋もれていた。


 泊まりこみでの仕事はいつものことだが、最近はとくにひどい。

 忙殺されている原因は、迷宮の変動によって出現した魔物をレポートにまとめる作業である。

 エルカザードの上層部は新たな図鑑の作成を早急に求めている。

 その前段階として乱雑に集められた報告書を整理し、ひとつひとつ真偽を確認したうえで、可能であれば遭遇した際の注意事項を添えて――ああああっ! やっていられるか!


 とにかく数が多すぎる! 

 今までは未知の魔物との遭遇なんて、年に一件あるかないかだったのに。

 半年以上経っても落ち着くどころか、毎日のように送られてくるのだ。


 そのうえ最近は迷宮とは関係のない魔物まで、活発化してきている。

 先週も近隣に等級SSの【ランバージャック】が現れ、騎士団が合同で討伐に乗りだしたことがあった。極めつけは同じ日に王宮の地下書庫で一つ目の亡霊が出現し、あわやカシオ殿下が殺されかけたことである。


 やばい魔物の報告書が届くたび、ノアの残業時間は増えてく。

 連日帰宅していないし、おかげで髪はべとべとだし、白衣からは野良犬みたいな臭いが漂ってきている。

 せめてベッドで寝かせてくれ。ソファだと疲れが取れないのだ。


「こんばんは。ちょっとお時間よろしいです?」

「……また今度にしてくれないかな。ご覧の通り忙しくてね」

「ひどい! 我と仕事、どっちが大事なの!」


 死んだ魚のような目で、研究室の入り口に立っている幼女を睨みつける。

 神出鬼没すぎるお嬢さんの登場に、もはや驚くことすらなくなってしまった。

 リコッタ・パンケーキ嬢。

 ジークが世話をしている、得体の知れない『化け物』だ。


「いつも思うんだけど、どこから入ってきているんだい」

「普通に、窓からなのです」

「それは普通じゃないし、そもそも王都でも屈指の警備体制なんだけどここ」

「インテリジェンス・ウェポンを作りたいのですが、なんかよさげな素材ありませんかね?」

「ガチの禁呪じゃん。バレたら絶対やばいやつじゃん」

「ジークもそう言っていましたけど、我がやると言ったらやるのです。地下の書庫からパクってきた古文書はキッチンの収納棚に封印されてしまいましたが、内容はばっちり頭の中に入っていますので」


 聞いていて頭が痛くなってきた。

 あいつは毎日こいつの面倒を見ているのか。

 そのうちストレスで胃に穴が空いて死ぬんじゃないの?


 リコッタ嬢は具体的な内容について説明しはじめる。

 強く言えば拒否することもできたはずなのだが、なんだかんだで最後まで聞いてしまったのは、研究者ゆえの悲しいサガである。


「魔道具のような小型かつ複雑な媒介に封じこめるとなると、ゴーレムやリビングアーマーほど簡単にはいかなそうだなあ。ちなみに聞いておくけど、僕やジークの魂を使うとかじゃないよね」

「立候補したいのです? サリナちゃん可愛いし、たぶん大事にしてくれますよ」

「問答無用でやってきそうで怖いから予防線を張っているんだよ。ていうかその子って君のなんなの? お友だち? それとも実験動物かなにか?」

「親友なのです。めっちゃ大事にしているし、なるべく危険がないようにしたい」

「驚いた。君が、普通の人間みたいなことを言うとは」

「否定はしません。サリナちゃんはいわば、我を人間たらしめているひとりです」


 ……じゃあその子がいなくなったら、君はどうなってしまうんだい?

 内心でそうたずねるものの、答えを知りたいとは思わなかった。


 情報を整理しよう。

 このお嬢さんはたぶん王都を数分で滅ぼすことができるほどの『化け物』で、なぜそうしないかと言えば『人間さんが好きなのです』という平凡で単純な理由からである。

 しかし彼女が抱いている好意は犬や猫に向けるような愛玩精神にすぎず、なにかの拍子に機嫌を損ねれば、王都の民が駆除対象になってしまうことだってありうるのだ。


 ゆえにリコッタ嬢のお気に入りは、国の存亡にかかわる重要人物として扱うべきだろう。

 同じような扱いのジークは滅多なことでは命を落とさないはずだが、サリナちゃんという子のほうはわからない。そういえば前に、あいつの天賦で蘇生させた子がいると聞いた覚えがあるな……。

 ノアはため息を吐いたあと、研究資料の山をテーブルの端っこに押しのける。


「設計図を作ろう。喋る武器ってのは、少年の夢だし」

「話が早くて助かりますなあ。ちなみにこういう感じにする予定なのです」

「うわあ……なるほど。実現すれば、とんでもない代物になるね」

「せっかくなら伝説級の装備、作りたくありません?」


 そういう気持ちがないと言えば嘘になるが、今のところ懸念のほうが強い。

 インテリジェンス・ウェポンか。禁呪とされるのも納得である。


 この設計図にあるような武器が量産されたなら――。

 リコッタ嬢が手をくだすまでもなく、この国は焦土と化してしまうだろう。

前話、誤字報告を頂きましたので反映しました。現在は修正されております。

ご指摘ありがとうございました! 助かります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。