10ー2 サリナちゃんパワーアップ計画(2)
「仕組みは単純なのです。魔道具を器として、知性ある魂を封じこめるだけ。武芸者の魂が宿った剣ならば構えるだけで勝手に防御したり反撃したりしてくれますし、魔法使いならば攻撃を仕掛けると同時に魔法を使ってサポートしたりしてくれます」
「そう説明されるとすげえ便利そうだけど、なんで禁呪扱いにされてんの?」
「人間を『道具』にする魔法ですよ。悪用しようと思えばいくらでもできます」
「リコに言われると、説得力があるなあ……」
放課後。
王都の通りを歩きながら、インテリジェンス・ウェポンの説明に耳を傾ける。
幼女の皮を被った悪魔は、サリナの言葉に「いえいえ」と謙遜したあと、こう続けた。
「建国初期の冒険者に比べたら、我が考える活用方法なんて可愛いものでしょう。当時は砂漠の民や獣人の魂を泥で作った人形の中に封じこめて、不眠不休で働く奴隷を量産していたらしいですからね。そりゃオアシスの連中もテロ計画くらい画策しますわなと、納得した次第であります」
「……テロ計画?」
「あ、こっちの話なのでお気になさらず。迷宮にいるリビングアーマー系の魔物とか呪物に分類される発掘品なんかもたぶん、こういった禁呪を用いて作られた存在なのでしょう。サリナちゃんが無尽蔵のパワーを求めてメタル化したいとおっしゃるのであればノリノリで魔改造しますけど」
「だから冗談に聞こえないんだっつの」
「となるとやはり武器を作るべきですね。バレても大丈夫そうな、合法スレスレの方法で」
リコッタ嬢はいつになく楽しそうだった。
早口で講釈を垂れて、自分のやりたいことだけを押しつけてくるような感じだ。こうなったら止まらないのは知っているし、だから満足するまで付きあうほかない。
会話の流れ的に王都の市場か職人街に向かうのかと思いきや、行き着いた先は黒騎士団の本部だった。
リコッタ嬢の飼い主もとい保護者である、筆頭騎士ジークの勤め先。
「サリナちゃんは銃による射撃で戦うスタイルですが、それ自体は変えずに修練を続けていけばいいと思います。長所は放っておいても伸びるので、今回は不安のある近接戦闘能力を補強するような感じで進めましょう」
「つまり、剣とかナイフで戦うってこと?」
「ですです。対等以上の実力者に稽古をつけてもらったあと、アドバイスを貰いながら具体的な武器のイメージを固めるのです。気分がアガりますよねえ、専用装備っ!」
本当に今日はテンション高いな、こいつ。
一方のサリナといえば、修練場で待っていた相手を見て顔をしかめる。
「誰、こいつ」
「黒騎士団の若手ホープ、タクヤ・サワダ様なのです」
「ど、どもっす。リコッタ様の呼びだしを受けて、本日は急きょ稽古をつけさせていただくことになりました。騎士としてはまだまだ未熟でございますんで、お手柔らかにお願いするっす」
睨みつけるサリナを前にして、へこへこと頭を下げる青年。
年齢的にはだいぶ歳上なのだろうが、見るからに弱そうで気分が萎えてくる。
こんなやつを『対等以上の実力者』だなんて、さてはあーしを舐めているのか、リコ。
「すっごく不機嫌そうなんすけど、おらなんかやらかしました?」
「ジークと稽古できると期待していたから拗ねているだけです。ああ見えて恋する乙女なので」
「聞こえてるっつの! 違うからな、そういうのじゃないからな!」
タクヤは苦笑いを浮かべながら稽古用の剣を渡してくる。
こいつもこいつでヘラヘラしやがって。
一発ぶちかまして、そのへっぴり腰を叩き折ってやる。




